半導体世界大手TSMCの創設者張忠謀氏は24日、熊本県菊陽町にある子会社JASM工場の開幕式で講演する(Photo by STR/JIJI PRESS/AFP via Getty Images)

盛田昭夫氏との面会から半世紀…「日本ルネサンスの始まり」TSMC会長、熊本工場開幕で語る

世界の半導体大手、台湾積体電路製造(TSMC)子会社のJASM熊本工場が24日に開幕式を迎えた。創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏が出席し、「日本半導体のルネサンス(復興)の始まり」だと強調した。講演ではソニー創業者の盛田昭夫氏との半世紀前の面会を振り返り、日本工場の設立に「興奮を覚える」と感慨を口にした。

この日の開幕式には、張忠謀氏のほか、董事長の劉德音氏、総裁の魏哲家氏、齋藤健経済産業相、蒲島郁夫熊本県知事、そしてJASMの出資者でもあるソニーグループの吉田憲一郎代表執行役 会長CEO、デンソーの林新之助代表取締役社長も出席し祝辞を述べた。

今年92歳の張忠謀氏は開幕式を心待ちにしていたという。スピーチでは、1968年に米半導体企業テキサス・インスツルメンツの副社長として初来日し、ソニー創設者の盛田昭夫氏と面会した際の情景を振り返った。二人は合弁会社設立によって驚くべき成功を収めることができると語り合ったという。

張氏は1987年に台湾でTSMCを設立。受託生産大手として、5年前の2019年に日本から招待を受け、工場建設に踏み切ったと明かした。盛田氏との対話から半世紀あまり経った今、JASMの大いなる成果を期待していると述べた。

新分野の技術発展により、世界の半導体需要は高まる一方だ。張氏はむこう数年間で数百万枚の量産が必要になると述べ、建設場所に言及することなく「3つ、5つ、あるいは10つの工場が必要だ」と意欲を示した。

開幕式では、岸田文雄首相がビデオメッセージを寄せ、熊本における第2工場建設に向けて7320億円の支援を行うと発表した。デジタル化が進むなか、「産業のコメ」としての半導体はますます不可欠になっており、日本政府は前例のない大胆な支援を提供することで、国内製造業のインフラ発展を目指しているとした。

齋藤健経済産業相は、政府支援の補助条件として、第2工場は日本の供給業者を使うこと、また間接材料の調達においても、日本が50%以上を占めるとした。2つの工場で3400人の雇用を創出するとされる。

熊本第2工場は今年末に建設が始まり、2027年末に運営を開始する予定。情報筋によると、第1工場から車で約20分の距離にあるという。開所にあたり、テープカットにはトヨタ自動車の豊田章男代表取締役会長も参加。同社もJASMにおよそ2%出資している。

「チップ戦争」の著者であるクリス・ミラー氏はAFP通信の取材に対し、TSMCの熊本工場は、同社にとって過去数年間で最も重要な国際投資の一つであると指摘。台湾が中国の圧力に抵抗するための国際的な支援を求めるなか、熊本にある工場が日台の政治的関係を強化するものことに資すると指摘した。

熊本の第1工場では、12から28ナノメートルまでの製程技術を提供する。第2工場では、6、7、そして40ナノメートルの製程技術を提供することが予定されている。

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