フランス下院は安価なファストファッションがもたらす悪影響に対処する法案を可決した。資料写真。(Photo by RICHARD A. BROOKS/AFP via Getty Images)

フランス、ファストファッション規制で「衝動買い」広告禁止へ 中国系通販が念頭

仏下院は現地時間14日、ファストファッションの環境への悪影響を懸念し、過剰消費を抑えることを目的とする法案を可決した。中国の激安通販サイトを念頭に置いた。「衝動買い」を促す広告を禁止し、規制に従わないブランドには衣料品1点ずつに罰金を課する。

「ファストファッションは生態系を破壊するものだ。衣服は粗末に作られ、大量に購入され、ほとんど着られず、すぐに捨てられる」。クリストフ・ベシュ環境相は今月6日、アパレル業界関係者との懇談会の後にこう指摘した。

コロナ禍以降、「SHEIN(シーイン)」や「Temu(テム)」に代表される中国の廉価なアパレル通販が世界各国で展開し、購買意欲を掻き立てる広告と巧みなSNS戦略で若者中心に顧客を獲得した。

規制法案を提出したアンヌ=セシル・ヴィオラン議員は、SNS上のインフルエンサーなどを用いたファストファッション製品の広告を禁止することを条文に盛り込んだ。商品の環境に対する影響と炭素排出量に基づいてリサイクル可能性などを考慮し、基準に達しない商品に対して購入価格の50%に達する罰金を課する考えだ。

法案によると、ファストファッションに該当するかを判断する際、衣料品の生産量や新たなコレクションの回転速度などが基準となる。

安価なアパレル商品は自国の産業にも影響を与える。仏メディア「フランス24」によると、同国の衣料品市場では安価な輸入衣料が氾濫しており、いくつもの国産ブランドが破産を余儀なくされた。アンヌ=セシル・ヴィオラン氏はシーインを例にあげ、「1日あたり7200点の新しい衣料品」をリリースしていると語った。これは伝統的なアパレル産業の数百倍だ。

法案に賛成した議員らは「仏製品の敵はファストファッションだ。放置すれば、雇用と産業が危険にさらされる」と指摘した。いっぽう、法案を提出した与党の主な主張は環境問題で、国内産業への打撃についてほとんど言及しなかった。

クリストフ・ベシュ環境相はX(旧Twitter)への投稿で、同法案が「大きな前進」であり、「繊維部門の環境負荷を削減するための大きな一歩が踏み出された」と付け加えた。

安価な中国系通販への対策は他の国でも行われている。韓国政府は7日、中国系通販サイトが韓国の市場を蚕食しているとして、消費者や国内企業への影響を把握する省庁横断型のタスクフォースを結成した。

米国では、6人の州司法長官がCBSとその親会社のパラマウント・グローバルに対し、サッカーイベント「スーパーボウル」で、中国通販テムの広告を掲載しないよう求めた。

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