猫背は見た目だけの問題ではありません。筋肉が凝りやすくなったり、内臓に余計な負担をかけてしまう原因にもなります。ただし、いくつかのエクササイズを取り入れることで、猫背を予防したり改善したりすることができます。これにより、姿勢が良くなるだけでなく、心肺機能や呼吸が楽になり、消化の調子が整うといった効果も期待できます。
実は、60歳以上の人のうち約20~40%が「円背(背中が過度に丸くなる状態)」に悩んでいると言われています。この状態は年齢とともに進行しやすいのが特徴です。後から猫背になる主な原因としては、頭や首を前に突き出す姿勢を続けることが挙げられます。たとえば、仕事中にパソコンやスマートフォンの画面を覗き込む姿勢がこれに当たります。そのほかにも、高すぎる枕を使うことや、背中や腰の筋力が弱まること、さらに腰や背中の骨の圧迫骨折なども猫背を引き起こす要因となります。
猫背が引き起こす健康への影響
猫背は見た目の問題だけではなく、体のさまざまな部分に悪影響を及ぼします。特に、慢性的な痛みや心臓、肺、消化器系の不調につながることがあります。
慢性的な痛み
猫背になると、首や背中、腰の筋肉や靭帯が緊張しやすくなります。その結果、腰痛や首のコリ、さらには頭痛が起きやすくなります。ある研究では、猫背がひどい人は胴体の筋肉や背骨に負担がかかり、その影響で背骨の老化が進みやすいことが分かっています。
心臓や肺への影響
猫背になると、肋骨が内側に押し込まれて肺が十分に膨らまなくなるため、呼吸が浅くなりやすいです。その結果、動悸や胸の圧迫感、息切れを感じることがあります。フレーミングハム研究では、重度の猫背が肺機能の急激な低下に関連していることが確認されています。特に高齢の女性では、この影響が顕著です。このことから、高齢者にとって猫背を予防することがとても重要だと言えます。
消化器系への影響
猫背の姿勢が続くと、胃が圧迫されてしまい、膨満感や消化不良を引き起こすことがあります。日本の研究では、脊椎の変形手術を受けた患者のうち、半数以上(52%)が逆流性食道炎(GERD)の症状を頻繁に経験していたことが報告されています。この問題は特に、胸から腰にかけて背骨が大きく曲がっている人に多く見られます。
猫背を改善するための簡単なエクササイズ
エクササイズ1: 肩甲骨の引き寄せと下げ
手順
- 肩甲骨を背中で引き寄せながら下に下げます。
- 頭をゆっくりと後ろに引きます。
- 肩や首のストレッチ感とリラックスに集中します。
猫背の人は、肩を上げたり肩甲骨を前に押し出したり、首を前に突き出した硬い姿勢をとる習慣がつきやすい傾向があります。このエクササイズでは、肩甲骨を後ろに引き、下げる動作を繰り返し、同時に頭と首をやさしく後方に動かします。これにより、肩や首が軽くなり、リラックスした感覚を得られます。この感覚に慣れることで、正しい姿勢を自然に保ちやすくなります。
エクササイズ2: オーバーヘッドアームストレッチ
手順
- 両腕を前方に伸ばし、そのまま頭上に持ち上げます。このとき、手のひらを最初は向かい合わせにし、腕を上げるにつれて手のひらを外側に回転させます。頭を少し上向きに傾けてください。
- 腕を上げながら右足を前に一歩踏み出し、左足のかかとを上げてつま先だけが地面に触れる状態にします。
- 立ち姿勢に戻り、次に左足を前に踏み出して同じ動作を繰り返します。
- 足を左右交互に動かしながら、この動作を10回繰り返します。
ポイント:
腕は耳に近づけるように保ち、外側に広げすぎないようにしましょう。
このエクササイズは、背中の筋肉や関節を伸ばし、脇の下のリンパ循環を促進するとともに、酸素の摂取量を増やす効果があります。時間があるときに、1日に何度でも行うことができます。
エクササイズ3: サイドスウェイを加えたオーバーヘッドストレッチ
手順
- 立った状態、または椅子に座った状態から始めます。両手を頭上に挙げ、手のひらを天井に向け、指先を内側に向けるようにしながら手首は外側に向けます。
- 頭をやさしく後ろに傾け、猫背に伴う前傾した頭の姿勢を矯正します。
- 上半身をしっかりと上方向に伸ばしつつ、体を左右に軽く揺らします。これにより、胸椎(背中の上部)の筋肉や関節がほぐれます。その後、腕を下ろしてリラックスします。
ポイント:
このエクササイズは回数に制限がなく、背中を伸ばしたりリラックスしたいときにいつでも行うことができます。
姿勢改善のためのおすすめの睡眠姿勢
仰向けで寝る場合、高すぎる枕を使うと首が過度に上に傾き、猫背の原因になることがあります。枕を膝の下に置いて脚を少し曲げると、体の支えが増し、快適さが向上します。この工夫により腰への負担が軽減され、自然な背骨のアライメントが保たれ、平らに寝る姿勢が楽になります。
上記のエクササイズを継続的に行うことで、猫背の改善に効果を期待できます。また、猫背に関連する健康リスクを軽減するために、他の姿勢矯正テクニックを取り入れることも検討してみてください。
この記事で述べられている意見は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの意見を反映するものではありません。エポックヘルスは、専門的な議論や友好的な討論を歓迎します。
(翻訳編集 華山律)
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