この画像は色補正が施されています。 イソップ物語:「ヘラクレスと車を引く男」(Baby's Own Aesop/CC BY-SA 2.0 DEED)
~家族で楽しく学ぶイソップ寓話~

ヘラクレスの教訓【イソップ物語】努力する者に助けが訪れる

あるところに、農業をしている人が、大雨の後のぬかるんだ田舎道を荷馬車で進んでいました。馬たちはひどい泥沼の中で、やっとの思いで荷車を引いていましたが、ついに車輪が*「わだち」にはまり込んで荷馬車が完全に止まってしまいました。

 

彼は荷馬車から降りて、そのそばに立ち、ただ黙ってそれを見つめていました。*「わだち」から抜け出すために何の努力もしようとせず、彼がしたことといえば、自分の不運を呪い、大声でヘラクレスに助けを求めることだけでした。

「ヘラクレスと車を引く男」イラスト:ウォルター・クレイン、出典:リメリック集『Baby’s Own Aesop』(1887年)Baby’s Own Aesop/CC BY-SA 2.0 DEED

すると、ヘラクレスが落ち着いて、真剣に現れ、こう言いました:

 

「肩で車を押してみろ、それから馬をもっと励ませ。見て泣き言を言っているだけで車が動くとでも思っているのか? 自分で何もしない者を、ヘラクレスは助けないぞ!」

 

そこで農業をしている人が肩で車を押し、馬たちを励ますと、荷馬車はたやすく動き出し、まもなく彼は満足そうに再び道を進んでいきました。

そして、良い教訓をしっかりと学んだのでした。

 

このお話から、私たちが学べることは、

『自分でがんばる人には、必ず助けが訪れる』

自分で努力しないで、誰かに頼るだけでは、神様や仏様だって助けてくれないかもしれないよ。 

 

〜せつめい〜

*1 「わだち」とは、車や人が通ったあとにできる道の跡のことです。

 

 

この寓話は、1919年発行の『子どものためのイソップ寓話集(The Aesop for Children)』から再録されたものです。また、挿絵は、1887年のリメリック集『Baby’s Own Aesop』に収められた、ウォルター・クレインによる「ヘラクレスと車を引く男」の寓話からのものです。

 

 

イソップ(紀元前620年頃–紀元前564年頃)は、ギリシャの物語作家であり、「イソップ寓話」として知られる多くの寓話を残した人物です。彼の物語はその道徳的価値を通じて、長い間、私たちの文化や文明に影響を与えてきました。これらの話は、子どもたちの教育や道徳的な人格形成に貢献しただけでなく、普遍的な魅力を持ち、大人たちがその中にある美徳や警告に耳を傾けたりすることで、自己反省にも繋がっています。

 

関連記事
「アヒルの足」と呼ばれる扁平足。見た目の問題と思われがちですが、放置すると骨格や筋肉の発達に悪影響を及ぼし、慢性的な痛みや体力低下につながることもあります。特に成長期の子どもには早期対応が重要です。
なぜ童話は子どもの成長に欠かせないのか。善悪の理解、想像力、人生への備えまで。時代を越えて愛される理由をひも解きます。
子どもが学ぶのは技術ではなく、美徳。シェイクスピアや寓話を通し「どう生きるか」を自分に問い直す――現代の教育観を覆す古典教育運動が、若い世代に精神的な豊かさを取り戻しています。
赤ちゃんの泣き声を聞くと、なぜ大人の顔が赤くなる?最新研究が明らかにした、人の生理反応と「守りたい」という本能の不思議な関係。
AIが教育現場に急速に広がる一方で、子どもの思考力や心に悪影響を与えるとの警告も。専門家の警鐘を紹介します。