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だるい朝、一曲の旋律で目覚めと気分を整える

梅雨入りすると、空気がまるで湿気に浸されたかのように重く感じられます。朝起きても、外は明るい日差しがなく、まるで自分の身体が“起動”していないような感覚。頭は重く痛み、まぶたは重く、首もこわばっていて、全身がだるくてやる気が出ません。

でも、これはあなただけの問題ではありません。

中医学では、梅雨の時期は湿気が脾を妨げ、陽気(体を動かすエネルギー)の発動が阻まれるとされます。とくに朝は本来、陽気が生まれ始める時間ですが、空気中の湿気がこれを妨げてしまうため、手足が重く、息が詰まり、思考も鈍りがちになり、イライラや気分の沈みも出てきます。

では、どうやってこの「眠ったままの朝の陽気」を目覚めさせればいいのでしょうか?その方法の一つが「音楽」です。

ここでは、あなたの頭をすっきりさせ、ぼんやりとした湿気の重さから解放してくれる、古典音楽9曲をご紹介します。

音楽は心に届き、五臓を整える ― 陽気を高める

古人はこう言いました:「音とは、心の声であり、五臓六腑に通ず」

音楽はエネルギーそのものであり、音楽は心に入り込み、五臓六腑にまで作用し、経絡や気血の流れを整え、精神を落ち着かせる力があります。古人はこれを「音療(おんりょう)」と呼びました。中国最古の医学書『黄帝内経』にも、音律が五臓のバランスを整える効果があると記されています。それぞれの音階には、以下のような対応関係があります:

 

さわやかでリズムが明快、旋律が伸びやかで透明感のある音楽は、まるで窓を開けて朝の風と光を呼び込むような効果があります。これにより気の巡りが良くなり、身体から湿気が抜けていき、自然と元気が湧いてくるのです。

 

 9つの音楽処方箋|中・日・西洋の古典音楽セレクション

以下に、中国古典音楽、日本の伝統音楽、西洋クラシックからそれぞれ3曲ずつ、合計9曲をご紹介します。体質に応じて選べるように、五行の属性と養生(調整)効果を併せて記載しています。

一.中国古典音楽|音の清らかさと広がりが、湿を払い陽気を高める

  • 《瀟湘水雲(しょうしょうすいうん)》|古琴曲

     五行:角音(木)・肝

     肝の気を巡らせ、抑うつを和らげる。清らかな風のような音色

     こんな人に:胸が重苦しく、肝の気が滞っている人

     
  • 《高山流水》|古琴・古筝

     五行:宮音(土)・脾

     脾を健やかにし、湿を払い、身体の中から元気を引き出す

     こんな人に:脾が弱く、疲れやすく集中力が落ちている人

     
  • 《陽春白雪》|古筝・琵琶

     五行:徵音(火)・心

     心の陽気を高め、血行を良くし、頭をスッキリさせる

     こんな人に:心が疲れやすく、朝にやる気が出にくい人
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 二.日本の伝統音楽|静けさの中に力を秘め、気を清め心を穏やかに

  • 《六段の調》|筝曲

     五行:宮音(土)・脾

     脾を穏やかに助け、気血のバランスを整える

     こんな人に:体力がなく、朝起きるのがつらい人

     
  • 《越天楽》|雅楽

     五行:商音(金)・肺

     肺の気を引き上げ、意識を明瞭にする

     こんな人に:湿がたまり、痰が出やすく、頭が重い人

     
  • 《春の海》|宮城道雄 作曲

      五行:角音(木)・肝

      肝の気を巡らせ、穏やかでありながら芯のある状態に導く

      こんな人に:精神的に抑圧されやすく、気分が落ち込みがちな人
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三.西洋クラシック|光と動きに満ちた旋律が、陽気を呼び覚ます

  • バッハ《ブランデンブルク協奏曲 第3番》

    五行:徵音(火)・心

    力強いリズムは、まるで朝の陽ざしが雲を突き抜けて差し込んでくるように爽快で鮮やか

    こんな人に:陽気が不足していて、朝の目覚めが悪く、元気が出ない・精神的にぐったりしているタイプの人

・ヴィヴァルディ《四季・春》第1楽章

 五行:角音(木)・肝

 生命力に満ち、気の巡りを促す

 こんな人に:梅雨時に気分が沈みがちな人、気うつ体質の人

・ヘンデル《水上の音楽 組曲・序曲》

 五行:商音(金)・肺

 明るく澄んだ音色が肺の気を活性化させ、心を奮い立たせてくれる

 こんな人に:起床時に頭が重く、気分がすぐれない人

 

 

音楽で陽気を高める朝の3ステップ

1. まずは身体を温める:起床後、温かいタオルを首や背中に当て、肩を軽くもみましょう。

2. 音楽を流しながら軽く動く:音楽が流れている間に、ゆっくりと歩いたり、体を伸ばすような軽いストレッチをしてみましょう。

3. 温かい飲み物を添える:小豆とハトムギのお茶や焙じ茶を一杯飲むことで、陽気がより自然に高まりやすくなります。

 

 結びに

養生とは、「何を飲むか」「何を食べるか」だけでなく、「何を聴くか」もとても大切です。

よい音楽は、耳を楽しませるだけでなく、五臓の気の巡りを整えてくれます。特に湿気の多い梅雨の朝は、無理にシャキッとしようとするより、静かに音楽を聴いて、旋律の力で自然に身体を目覚めさせるのが効果的です。

どうか、あなたの毎朝に素敵な音楽が寄り添い、心身を照らす“内なる太陽”が静かに昇りますように。

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