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癒やしの相棒

ペットがもたらす癒やしの力

ドーン・マクグラスさんは、ペットが人生を変える力を持っていることを身をもって体験しました。犬を連れていることで人との会話が生まれ、ストレスや孤独感が和らぎます。

「私は、シェットランド・シープドッグのベイリーと、コッカー・スパニエルのジンジャーを連れて、地元の介護施設、リハビリセンター、病院、学校、図書館などへ訪問しています」と、登録動物セラピーボランティアであるマクグラスさんは、エポックタイムズへのメールで語っています。

「心からの笑顔、両手を広げた歓迎、そしてハグが生まれ、人々の態度ややる気、そして全体的な幸福感の向上につながっています」

介護施設で活動するマクグラスさんのチーム(写真提供:ドーン・マクグラスさん)

アメリカでは約半数の家庭がペットを飼っており、この人気は、飼い主が犬や猫から大きな喜びを得ていることを物語っています。しかし、ペットには本当に癒しになのでしょうか?

2018年、ワシントン州立大学(WSU)がMDPI誌に掲載した論文では、犬との触れ合いプログラムに参加することで、大学1年生の精神的健康が改善されたことが示されました。ペットが身体的・心理的な健康を促進するという研究結果もある一方で、まだ結論が出ていない研究もあります。科学的な裏付けは完全とは言えませんが、実体験に基づいた証拠は数多く存在しています。

ペットと安全に触れ合い、責任を持って世話をすることができる人にとっては、猫のゴロゴロ音や犬の愛情表現が、心身に多くの恩恵をもたらしてくれるでしょう。
 

大学生にとっての恩恵

世界保健機関(WHO)がアメリカを含む8か国・19の大学で実施した調査によると、大学生の間で精神疾患が世界的に増加していることが明らかになりました。調査では、学生の35%が、全般性不安障害、うつ病、アルコール使用障害など、一般的な精神疾患のいずれかに該当していました。また、実家にいたペットと離れることが、精神的な支えを失う一因になっていることも分かりました。

MDPI誌に掲載された研究では、実家にペットを残して大学に進学した145人の学生を対象に、犬のセラピー活動に参加するグループと、待機リストのグループに無作為に分けて調査が行われました。セラピーセッションは非公式な形式で実施され、学生は犬をなでたり、そばに座ったり、話しかけたりすることで交流しました。

学期を通じて参加者の健康状態を追跡した結果、犬と触れ合ったグループは、待機グループに比べて心配・うつ・ストレスの症状が大幅に軽減されていたことが明らかになりました。犬の存在が大きな役割を果たしましたが、静かな環境や他の学生・スタッフとの交流も、効果に貢献していたと考えられています。

「学生の幸福を支えるための、比較的簡単で低コストな方法です」と、人間発達学の教授であり、この研究の共同執筆者でもあるパトリシア・ペンドリー氏は声明で述べています。
 

身体的健康への恩恵

犬は、飼い主に散歩を促すことで、運動へのモチベーションを高めてくれる熱心なパートナーです。運動が心血管をはじめ、さまざまな健康面に良い影響を与えることは、よく知られています。

2019年に『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載された研究では、イギリスで犬を飼っているの成人191人、犬を飼っていない成人455人、子ども46人を対象に調査が行われました。その結果、犬の飼育はレクリエーションとしての散歩の増加や、運動ガイドライン達成の可能性向上と関連していることが示されました。また、犬を飼っている子どもは、犬を飼っていない子どもよりも1日に歩く距離が多いことが分かりました。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、成人に対して週150分以上の中強度(Moderate Intensity)の運動を推奨しています。これは、1日30分を週5日に分けて行っても構いません。

さらに、『Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes』誌に発表された系統的レビューとメタ分析によると、犬の飼育は心血管の健康改善と関連していました。このレビューでは、1950年から2019年までの間に得られた約400万人分のデータが分析されています。

いくつかの研究では、犬の飼育が血圧の低下、コレステロール値の改善、交感神経系(ストレス時に働く神経系)のストレス反応の低下に関係していることが示されています。

全体のデータを通じて分析した結果、犬を飼っている人は、心血管疾患による死亡リスクが31%低下していました。研究者たちは、寿命が延びる理由の一つとして、犬による運動量の増加を挙げています。
 

精神的・心理的健康への恩恵

ペットを飼うことには、ストレスの軽減や気分の向上など、多面的な精神的・心理的健康への効果があります。

「ペットと過ごすことで、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が減少します」と、サヴァント・ケア社の認定精神科看護師であるシェブナ・N・オサンモー氏は、エポックタイムズへのメールで述べています。

この主張を裏付ける証拠として、2019年に『セージ・ジャーナルズ』に掲載された臨床試験があります。

この研究では、249人の大学生を、ペットと直接触れ合うグループ、他人がペットと触れ合うのを見るグループ、ペットのスライドショーを見るグループ、そして対照グループに分けました。その結果、猫や犬と10分間直接触れ合ったグループでは、コルチゾールの分泌が減少し、短時間ながらストレスが和らいだことが確認されました。

さらに、デトックス・カリフォルニアのメディカルディレクターであるマイケル・S・バルデス医師によると、動物には気分を高め、精神的健康を向上させる、まるで魔法のような力があるとのことです。

「ペットとの純粋なつながり、楽しいいたずら、そして愛情表現は、飼い主のセロトニンとドーパミンの分泌を促します」と、バルデス医師は語っています。

リラックス効果だけでなく、ペットとのふれあいは不安やうつの症状を和らげ、血圧の調整にも役立ちます。動物と過ごす時間は、ストレスの軽減と幸福感の向上にもつながるとバルデス医師は言います。

さらに、ペットは精神療法においても、感情的な恩恵をもたらします。

「動物がどれほど人の人生を変えてきたか、驚くようなエピソードがたくさんあります」と、アンリーシュド・カウンセリングの創設者でディレクターのアナリサ・スミッソンさんは語っています。「私たちのチームでは、従来の対話療法(トークセラピー)に苦手意識を持つ方と一緒に、犬やウサギとふれあいながら、ストレス軽減やうつ克服、トラウマの処理を支援しています。
 

社会的な健康効果

ペットは人間の友情に取って代わることはできませんが、それを助ける役割を果たすことができます。

「犬を飼うと、自然と社会との交流の機会が増えます」と、カリフォルニア・ビヘイビオラル・ヘルスの臨床ディレクターで、結婚・家族療法士であるメリッサ・レジェールさんは、エポックタイムズ紙へのメールの中で次のように語っています。

「たとえば犬を散歩させると、ご近所の方や公園で会う他の犬の飼い主と、自然とちょっとした会話が生まれます。無理に人間関係を作ろうとしなくても、人と出会うチャンスになるのです。さらに、犬がいることで人が親しみやすくなり、すぐに打ち解けることができます」

犬の散歩は自然な形で人と出会う方法ですが、新しい友情を築くという見通しは不安に感じる人もいるかもしれません。

オンタリオ州にある「ザ・マインドフル・ロフト 裏切りトラウマと人間関係回復センター」の創設者で心理療法士であるステファニー・ブーシェさんも、ペットはその助けになると述べています。彼女はエポックタイムズに対し、ペットが人に感情的な安心感や支えを与え、人との交流の場に一歩踏み出す勇気をくれると語りました。

「一人暮らしで友人の少ない高齢者にとって、ペットとの絆は、社会的なリスクを取るための自信につながることがあると思います」とブーシェさんは言います。「それが新しい人との出会いや友情の構築につながるかもしれません」
 

ペット飼育の代替案

誰もがペットをフルタイムで飼えるわけではありません。時間、経済的な余裕、健康状態などの理由から、それが難しい人もいます。MDPIの研究で紹介されたようなペット訪問プログラム以外にも、パートタイムでペットと関わる方法はいくつかあります。

たとえば、外で働いている人にとって犬を飼うのは現実的ではないかもしれませんが、ペットシッターや犬の散歩代行を雇うことで日中のケアを任せることができます。これはペットを飼っている人と、飼っていない人の双方にとってメリットのある方法で、大切なペットを手放すことなく、他の人にも癒やしの時間を提供できます。

また、一時預かり(フォスターケア)という選択肢もあります。NOLAs Finest Pet Care LLCの創設者兼CEOであるトワイラ・マギーさんはエポックタイムズに対し、「フォスターケアは、ペットを飼う楽しみを味わいながら、金銭的負担を軽減できる最良の方法のひとつです」と述べています。

「この方法は、ペットに愛情のある一時的な家庭を提供し、最終的な飼い主が見つかるまでに必要なケアを受けさせることができます。これは、保護施設ではなかなか実現できない経験です」と彼女は言います。「フォスター中は一人ではありません。地域の動物保護施設や保護団体が、食事やしつけ、獣医ケアといった必要なリソースを提供してくれます。猫や犬を迎え入れたいと考えているけれど、まだ準備ができているか分からない方には、フォスターをおすすめします。」
 

ペットを飼うリスク

ペットを飼うことには多くの癒やしの効果がありますが、リスクも伴います。主なリスクの一つは人獣共通感染症(ズーノーシス)です。これはウイルスや細菌、真菌(カビ)、寄生虫などによって引き起こされる感染症で、ペットから人間にうつることがあります。病気の程度は軽度から重度までさまざまで、場合によっては命に関わることもあると、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は指摘しています。

こうした感染症は、犬や猫に触れたり、なでたりする際にその体液に直接触れることでうつる場合もあれば、ペットの餌や水の容器を扱うといった間接的な接触によってうつることもあります。

特に感染のリスクが高いのは以下のような人々です:

  • 5歳未満の子ども
  • 65歳以上の高齢者
  • 妊娠中の女性
  • 免疫力が低下している人

何らかの理由でペットを飼っても大丈夫か不安がある場合は、医師に相談することをおすすめします。

(翻訳編集 井田千景)

Mary West
フリーランスライター。ルイジアナ大学モンロー校で2つの理学士号を取得。