最新の研究によると、人々が摂取する食事中のタンパク質──卵白、玄米、大豆など──は腸内の微生物環境を変化させ、消化器の健康から脳の機能に至るまで、さまざまな影響を及ぼす可能性があります。

「現代の食生活にはいくつかの問題がありますが、その本質的な原因についてはまだ十分に明らかになっていません」と、ノースカロライナ州立大学の博士研究員であり本研究の著者でもあるアルフレド・ブレイクリー・ルイス氏は声明で述べています。

研究の結果、特定のタンパク質は腸内の保護膜に悪影響を及ぼす可能性があることが分かりました。この発見は、従来の「健康的な食品」についての見方に疑問を投げかけています。

異なるタンパク質、異なる腸内細菌

この研究は『ISME Journal』に最近発表され、マウスを対象に、異なるタンパク質源が腸内細菌にどう影響するかを調査しました。マウスには一種類のタンパク質のみを含む食事が1週間ずつ与えられ、使用されたタンパク質は卵白、玄米、大豆、酵母でした。

ブレイクリー・ルイス氏は、「タンパク質源を変えるたびに、腸内の微生物構成が大きく変化しました」と述べています。特に玄米、酵母、卵白を含む食事は、腸内細菌の働きに強く影響を与えました。

彼によると、「玄米や卵白の食事は、腸内細菌によるアミノ酸の分解を増加させます。これは、細菌が外から得たタンパク質を分解して使っていることを意味しており、自分たちでアミノ酸を合成するのではありません」

このプロセスは健康に影響を及ぼす可能性があります。なぜなら、特定のアミノ酸は毒素に変わることがあり、また別のアミノ酸は腸と脳の結びつきに影響を与える可能性があるからです。

研究者たちは、腸の保護バリアである腸内膜への影響に特に注目しました。卵白を含む食事で増加したある種の細菌は、ムチンという粘液を分解する酵素を産出します。ムチンは腸内壁を守る粘性のあるタンパク質です。

ブレイクリー・ルイス氏は、ムチンの分解が腸内膜を損傷し、腸の健康を損なう可能性があるとし、炎症や感染のリスクを高めると指摘しています。

「私たちは通常、タンパク質が腸内環境を左右する要因だとは考えませんが、実際にはその通りです」と、この研究には関与していないアリゾナ州フェニックスの消化器系栄養士アリッサ・シンプソン氏はエポックタイムズに語っています。
 

植物性タンパク質 vs 動物性タンパク質の壁を超えて

研究者たちが最も驚いたのは、タンパク質のアミノ酸構成がこれらの変化を引き起こす主な要因ではなかったことです。

「私はこれまで、タンパク質とはアミノ酸の鎖に過ぎないと考えてきました。だから、どんなタンパク質を摂取するかが、腸内細菌にそれほど大きな影響を与えるのかと疑問に思っていました」と、ノースカロライナ州立大学植物・微生物生物学科の准教授で、本研究の共同責任著者でもあるマヌエル・クライナー氏はエポックタイムズの取材に答えています。

彼はさらに、「今回の研究で明らかになったのは、アミノ酸の組成は我々が観察した大きな影響とは関係がないということです」と語りました。重要なのは、食物が大腸に届いたときに、どのタンパク質がどの程度消化されていたか、そしてそれらのタンパク質にどのような分子が結びついているか、という点です。

クライナー氏は次のようにも述べています。「今回の発見が強調しているのは、健康への影響を考える際に、タンパク質を単純に植物性と動物性で分けるのは過度に単純化しているということです。腸内細菌への影響においては、植物由来でも動物由来でも、どちらも腸内環境に大きな変化をもたらします。したがって、重要なのは具体的なタンパク質の由来なのです」

研究によれば、玄米を使った食事では、インドールという化合物を生成するタンパク質が顕著に増加しました。インドールは植物の消化過程で腸内に生じることが多い化学物質です。また、卵白を使った食事では、神経伝達物質であるGABA（γ-アミノ酪酸）の生成に関与するタンパク質がわずかに増加しました。インドールもGABAも抗炎症作用があり、腸や脳の機能に影響を与える可能性があります。

クライナー氏はエポックタイムズに対し、マウスの消化器系と腸内細菌の構成は人間と大きく異なるものの、過去の研究では「何度も繰り返し」、食事や他の「介入」が微生物群に与える全体的な傾向は人間とマウスの間で共通していることが示されてきたと述べました。

そして彼は、現在進行中の後続研究では、特定のタンパク質源からなるサプリメントを人間が摂取した場合に、同様の効果が確認できるかを調査していると付け加えました。
 

タンパク質摂取のバランスを保つことの大切さ

栄養士たちは、今回の新たな研究結果が、多様な食生活重要性を改めて示していると指摘しています。ニューヨーク州のノースウェル・ヘルス（Northwell Health）に属するロングアイランド・ユダヤ医療センターの登録栄養士、エミリー・フェイヴァー氏はエポックタイムズの取材に対し、植物性タンパク質は食物繊維が豊富であり、人間の腸内健康を改善する効果が実証されていると述べました。しかし同時に、「すでに胃腸の病気を抱えている人にとっては、植物由来の追加の繊維がかえって胃腸の不調を引き起こす可能性がある」と警告しています。

アリッサ・シンプソン氏も補足として、一般的には、豆類、穀物、種子など植物由来のタンパク質は、繊維やポリフェノールを含んでおり、それが有益な腸内細菌の栄養源となって、腸内環境をより健康に保つ傾向があると述べています。彼女は「動物性タンパク質も、腸に優しい食事の一部にはなり得ますが、大切なのはバランスです」と指摘しています。

過敏性腸症候群やリーキーガット症候群などの腸疾患を持つ人は、タンパク質の種類によって腸内細菌が影響を受けやすくなります。シンプソン氏によれば、特に食物繊維が不足した状態で特定の動物性タンパク質を過剰に摂取すると、炎症や腸の内膜を損傷させる細菌が増加する可能性があるとのことです。

また、腎臓疾患のある人についても、シンプソン氏は「高タンパク食は腎機能に負担をかける恐れがあるため、注意が必要です」と述べています。

今回の研究では、卵白を多く摂取する食事が腸内膜を損傷する可能性のある細菌の増殖を促すことが示唆されました。これは、鶏肉の摂取量が多いと死亡率が高まるとした一部の疫学調査結果を説明する可能性もあります。しかし研究者たちは、現実の食生活では脂肪、食物繊維、その他の栄養素が組み合わさっているため、そうした食材の組み合わせが腸内細菌の反応に影響することを強調しています。

この研究のより広い意義は明らかです。タンパク質の摂取源に多様性を持たせることが重要であり、どの菌種が存在するかだけでなく、それらがどのように機能しているかを理解することが、腸の健康を促進する食事戦略を立てる上で不可欠です。

（翻訳編集　華山律）