今年の秋は「風火の秋」とされ、乾燥と熱に加えて湿気も重なり、体が疲れやすく、汗をかきやすいのが特徴です。
中医学では「汗の出る場所にはそれぞれ意味があり、頭・胸・背中・手足といった部位は、それぞれ対応する臓腑の不調を知らせている」と考えられています。

汗の出る場所を見極めて食材を工夫すれば、シンプルな豚しゃぶサラダも、中医学に基づいたおいしい薬膳料理に仕立てることができます。
豚肉は乾きを癒す“潤い食材”
豚肉は性質が平からやや涼に寄り、体の基盤を支える力があるとされます。腎を補い、脾を健やかにし、疲労を和らげる働きがあり、火と風が重なる秋の「燥」による疲れや乾きを癒すのに最適です。
牛や羊のように熱をこもらせる心配がなく、かといって海鮮のように冷えすぎて胃腸を傷めることもない、ちょうど良いバランスを持った肉なのです。豚肉をさっと湯通しすれば、油っぽさもない、さっぱりとした食感のサラダになります。さらに、汗のかき方(出る部位)に合わせて組み合わせる野菜を変えれば、臓腑の不調に応じた養生サラダになります。
頭や顔に汗――「心火」をしずめる
食事中に額がじんわり汗ばむのは、多くの場合「心火(しんか)」が上にのぼっているサインです。
そんなときには、ゴーヤときゅうりの組み合わせがおすすめ。ゴーヤは体を冷ます力が強く、苦味が心に作用して心火をしずめ、イライラやほてりを鎮めてくれます。きゅうりはさっぱりと利水作用があり、余分な湿気を体の外に流してくれます。豚肉と合わせれば、秋の心火をちょうどよく抑えてくれるサラダが出来上がり。
背中に汗――「脾胃」を整える
背中がいつもじっとりと汗ばむのは、脾胃が弱って湿気がたまっているサインです。
この場合に役立つのが長芋ととうもろこし。長芋は、脾と胃を健やかにして気を補うのが得意で、体の基盤を整えて疲労を回復し、水分代謝を促して余分な湿気を取り除く働きがあります。とうもろこしは余分な水分を流し、湿気を追い出す働きがあります。ここにごまダレを少し加えれば、香ばしさで食欲を引き出しつつ、脾を守る効果も。さっと和えるだけで、湿気が体にまとわりつきにくくなります。
胸に汗―肺の弱りのサイン
胸もとに汗をかきやすいのは、肺のエネルギー(肺気)が不足している証拠です。
そんなときは大根と小松菜をプラス。大根は気の流れを整え、余分な痰を取り除いて胸のつかえをやわらげ、小松菜は肺を潤してのどや皮膚を乾燥から守り、さらに肝の余分な熱をしずめてくれます。そこに甘酒やはちみつを少し加えれば、素早く元気を補い、潤いを与えて秋の乾燥によるのどのかゆみも和らぎます。
手足に汗―腎の陰が不足
夜眠りが浅く、手足のひらにじんわり汗が出るのは「腎陰不足」のサインです。
ここでは黒きくらげと海藻の出番。黒きくらげは腎を補い、血を養いながら体の乾きを潤してくれます。海藻はしこりやこわばりをやわらげ、余分な湿や熱を体の外へ導くはたらきがあります。仕上げに紫蘇の葉を散らせば、香りで気の巡りをととのえ、香りも引き立ち、サラダ全体がより爽やかに仕上がります。
参考レシピ:豚しゃぶ薬膳サラダ(2人分)

【材料】
・豚肉……150g(薄切り)
汗の出る部位に応じて組み合わせる野菜(目安量)
・紫蘇の葉……少々
・ゴーヤ……50g
・きゅうり……50g
・長芋……80g
・コーン……50g
・大根……60g
・小松菜……40g
・黒きくらげ……30g
・海藻……20g
【作り方】
- 豚肉はさっと湯通しして臭みを抜き、氷水で冷やしておく。
- 野菜はそれぞれ切ったり下ゆでしたりして準備する。
- あとは一緒に和え、汗の出方に合わせて選んだ野菜やドレッシングで味つけすれば出来上がり。
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