人は幸せになる方法を求めて、これまでさまざまなことを試みてきました。これに対し、専門家は「善良な心こそが幸福をもたらす源であり、善を貫くことで必ず幸せになれます」と助言しています。
アメリカの人気ポッドキャスト番組「ハピネス」の司会兼プロデューサーであり、ベストセラー作家で臨床心理学者でもあるロバート・パフ氏は、『サイコロジー・トゥデイ』のウェブサイトへの寄稿の中で、「善良な心を持つことこそが自己価値を高め、幸福な人生を築く正しい道である」との見解を示しています。
パフ氏は、新生児や幼いライオン、子犬に共通する点として、彼らが人の心に温もりを与え、守りたいという気持ちや優しい愛情を呼び起こす存在であることを挙げています。これは人間に生まれつき備わっている本能であり、その力は計り知れません。純粋で無防備な姿は人々の心を自然と和ませ、私たちは理由がなくても、こうした小さな命が私たちを傷つけるものではなく、ただ愛され、抱きしめられるべき美しい存在であることを本能的に理解しているのです。
このような本能は、人間の心の奥深くに根付いています。私たちは善い行いを見ると善意や愛、同情を抱き、悪しき行為を目にすると嫌悪や敵意、さらには憎しみさえ感じます。人は常にこうした視点から他者の行動を判断し、同時に自分自身の行いについても評価しているのです。
善の循環
善とは外見だけを装うものではなく、内面こそが重要であるとされています。パフ氏は、私たちの行動がその価値観と一致したときにこそ、美しく自己を高める「幸福の循環(サイクル)」が生まれると指摘しています。
パフ氏は、空港での出来事について語っています。海外から来た高齢の男性が、大きく重いスーツケースを引きずりながら長い階段を下りようとしていました。その様子は非常に疲れ切って見えました。そこでパフ氏は迷うことなく、そのスーツケースを持ち上げ、自身の荷物と一緒に階段の下まで運んであげたのです。
その男性は英語を話せなかったものの、その満面の笑みがすべてを物語っていました。彼は心から感謝していたのです。その後も空港内で何度か顔を合わせましたが、その都度、男性はパフ氏に向かって、最も明るく温かな笑顔を見せていたといいます。
パフ氏は次のように述べています。「実のところ、私の心は喜びで満たされていました。困っている人に手を差し伸べることによって、これまでにない幸福感を得ることができました。これこそが善の持つ力です。この幸福感は善行に伴うものであり、与える側も受け取る側も同じように幸せを感じるのです」

悪行には大きな代償が伴います
パフ氏は、人間が生まれながらに持つ善良な心に反する行動──特に無実の人(あるいは他の動物)に対してそれを行った場合には、深い自己嫌悪が心に刻まれ、魂に重く、長く、深い傷を残すと指摘しています。
彼は大学時代に飼っていた2匹の猫に関する体験を語っています。仕事と旅行の都合で世話ができなくなり、新しい飼い主を見つけられないままアイオワ州の田舎へ車で行き、農場の方に引き取ってもらおうとしましたが、断られるのを恐れ、猫たちを入り口に置いたまま立ち去ってしまいました。車を走らせたそのとき、1匹の猫が道の真ん中に駆け寄り、彼を見つめていました。
何年経ってもその光景は彼の心から離れず、思い出すたびに涙があふれました。幼い命に恐ろしい運命を強いてしまったかもしれないと思うと、その苦しみは耐え難く、彼の心を深く苛み続けました。
彼は次のように語っています。「私はすでに自分を許し、償いを果たしてきたつもりでしたが、その記憶は常に私に警鐘を鳴らし続けました。――無実の命をむやみに傷つけることは、自分自身を傷つけることと同じです」
善を選ぶ
パフ氏は、人生には常に選択の機会があり、人間は善の道を選ぶことも、悪の道を選ぶこともできると述べています。そして、真の幸せへと至る道は「清らかな心」を育むことにあると考えています。
たとえどんなに小さなことであっても、良い行いをするとき、人は自分自身に対する見方が変わり始めます。鏡の中には、清らかな心を持つ自分の姿が映し出されるのです。
人は誰しも過ちを犯します。大切なのは、過去にとらわれることではなく、そこから学び、自分を許し、今日という新しい日に別の道を選ぶことです。新しい一日、私たちは荷物を持つ人を助ける人、見知らぬ人に微笑みかける人、愛と善意に満ちた人になることを選ぶことができます。
パフ氏は次のようにまとめています。「良い行いを重ねることで、私たちの心はより明るく、より慈悲深くなっていきます。幸せは、もはや追い求めるべき遠い目標ではなく、いつもそばに寄り添い、日々を共に歩む温かな友のような存在となるのです」
(翻訳編集 正道勇)
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