10月30日に『JAMA Oncology』に掲載された査読済みの研究によると、ピルなどのホルモン避妊薬を使用する女性は、乳がんの発症リスクが高まる可能性があることがわかりました。
スウェーデンでは、2006年時点で13~49歳の女性209万5,130人を対象にデータを収集し、2019年末まで追跡しました。乳がん・卵巣がん・子宮がん・子宮頸がんの既往がある人、不妊治療を受けている人、卵巣摘出者は除外されています。
ピル、インプラント、注射、子宮内システムなど、あらゆるホルモン避妊薬が調査され、緊急避妊ピルは除外されました。
2006~2019年に乳がんは16,385件確認され、ホルモン避妊薬使用者128万人で8,485件、非使用者で7,900件でした。
あらゆるホルモン避妊薬の使用により乳がんリスクは増加し、年間7,752人あたり1件が追加される形でした。
ホルモン避妊薬には、プロゲスチン単独タイプとエストロゲン・プロゲスチン併用タイプがあります。プロゲスチンは、体内の生殖ホルモン・プロゲステロンを合成したものです。
プロゲスチン単独の避妊薬は、併用型よりも乳がんリスクが「統計的に有意に高い」ことが示されました。
「プロゲスチン単独では8,572人あたり1件追加、併用型では14,417人あたり1件追加」という結果でした。
研究では避妊薬に使われる6種類のプロゲスチンが分析され、デソゲストレルとその活性代謝物であるエトノゲストレルを含む避妊薬は、レボノルゲストレルを含む製品より乳がんリスクが高い可能性が示されました。
一方、使用者が多いエトノゲストレル膣リング、メドロキシプロゲステロン酢酸注射、ドロスピレノン併用経口薬では、「統計的に有意な乳がんリスク増加は見られなかった」とされています。
「デソゲストレルが他のプロゲスチンより乳がんリスクを高める可能性は、私たちが知る限りこれまで報告されていない新しい発見です」と研究者たちは述べています。
この研究はスウェーデン・ウプサラ大学の研究者らによるものです。
10月31日の声明で、同大学は従来のホルモン避妊薬研究が、過去に一般的だった経口併用ピルに偏っていた点を指摘しました。近年プロゲスチン単独避妊薬の人気が高まっており、その長期的な健康影響の研究が重要になっているとしています。
本研究はスウェーデンがん協会、スウェーデン研究評議会、ショーベリ財団が資金提供し、著者は利益相反なしと報告しています。
アメリカ疾病対策センターは8月28日の更新で、「ほぼすべての女性が生涯のどこかで避妊を使用する」と述べています。
アメリカ疾病対策センターの推計によると、2022~23年の15~49歳女性のうち54.3%が避妊を使用しており、その中で経口避妊ピルは11.4%を占めています。
アメリカがん協会の5月5日の投稿によれば、乳がんは皮膚がんを除き、アメリカ女性でもっとも一般的ながんです。
アメリカがん協会は、乳がんがアメリカ女性の新たながんの約30%を占めるとし、2025年には浸潤性乳がんが31万6,950件診断されると予測しています。
従来の研究でも、避妊薬が女性に影響を及ぼす可能性が指摘されています。たとえば2023年8月の研究では、ピル使用女性は非使用女性と比べ、社会的活動時のストレスホルモンの低下が同程度には見られないという報告がありました。
(翻訳編集 日比野真吾)
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