さつまいもがゆ――真冬の動悸と不安をやさしく整える
寒さが厳しい段階に入ると、自然界では冷えが強くなります。五行の考え方では、この時期は「水」の気が強く働き、冷えが単なる寒さから凍りつくような冷えへと変わります。ちょうど、冷蔵庫の冷蔵室から一気に冷凍室へ切り替わるようなイメージです。
人の体では、心は「火」に属します。そのため、水の気が強まるこの時期は、冷えの力が心の働きを抑える事ができ、その結果、体の機能が弱まりやすくなります。
このため、冷え込みが強まる頃には、多くの人が動悸、胸のざわつき、不安感、落ち着かなるといった不調を感じやすくなります。特に、夜中は体温が最も弱まる時間帯で、冷えの影響を強く受けやすくなります。これは、冬の夜に心温が冷えに押され、血の巡りが弱くなる自然な反応です。
冷えが直接、心の血の通り道に入り込むと、心臓のトラブルを引き起こすこともあり、命に関わる危険もあります。そのため、この時期は特に、体を冷やさないことが大切です。
味の組み合わせで整える、冬ならではの知恵
甘さと辛さで気を巡らせ、甘さと酸味で血を養う
寒さの厳しい時期、衣服での防寒だけでなく、食事でどう心を守るかも重要です。ポイントは、体の中を温め、気と血の流れを保ち、心が安心できる状態をつくることです。
古くからの養生の教えには、「甘さと辛さは気を巡らせ、甘さと酸味は血を養う」という、とても実用的な考え方があります。
甘い味は、胃腸を助け、気や血を生み出す土台になります。辛みは、冷えで縮こまった血管や流れをゆるめ、巡りを回復させます。さらに、甘さと酸味を一緒にとることで、血がしっかり作られ、体に満たされる感覚が生まれます。
これは、冬に火を起こすのと同じです。薪を足すだけでなく、火が安定して燃えるように助けることで、強すぎず弱すぎない状態を保てます。
冷えが強い時期は、複雑な食事をする必要はありません。体を温め、血を養い、血の通り道を整え、心の温かさが冷えに押し負けないようにすることが大切です。
さつまいも――胃腸を温め、心を支え、気と血を補う
この条件に合い、しかも手に入りやすい食材として、さつまいもは冬にとても心強い存在です。
さつまいもは甘みがあり、性質は穏やかで、胃腸の働きを助け、気と血を生み出します。冬の自然な滋養食といえます。中でも皮が赤いさつまいもは、赤が「火」に属し、心と相性がよいため、気や血が心に届きやすくなり、胸のあたりが頼りなく感じる不安感をやわらげてくれます。
ただし、甘みだけでは十分ではありません。気と血をスムーズに体のすみずみまで運ぶためには、温かさと巡りを助ける辛みが必要です。そこで、生姜が最適な組み合わせになります。生姜は体を温め、冷えを散らし、さつまいもで生まれた気や血が滞らず、心や手足まで届くようにしてくれます。
さらに血を養いたい場合は、黒糖やなつめを少し加えるとよいでしょう。黒糖は甘さの中にほのかな酸味があり、なつめも同様に血を補い、冷えを防ぎます。こうして、一杯のかゆの温かさが、より穏やかで深みのあるものになります。
真冬に心を養うおかゆ
さつまいも、生姜、黒糖やなつめを組み合わせたこのおかゆは、冬に必要な「体を温め、血を養い、心の力を支える」養生にぴったりです。特別な薬材を使わなくても、この三つの身近な食材だけで、冷えに押されて元気を失いがちな心の温かさを、そっと支えてくれます。
この一杯は、素朴でやさしい味わいですが、しっかりとした力があります。胃を温め、心を温め、手足までじんわりと温かくし、真冬でも血の巡りを穏やかに保ち、胸の締めつけや動悸、不安感を少しずつ和らげてくれます。
レシピ:さつまいも・黒糖・生姜がゆ
材料(1~2人分)
- さつまいも …… 1本
※皮が赤いものがおすすめ。皮は心を助けるため、むかずに使います - なつめ …… あれば数個(種を取ると、より血を養う力が高まります)
- 米 …… 1/2カップ
- 生姜 …… 3~4枚
- 黒糖 …… 適量
- 水 …… 適量
作り方
- 米を洗い、切ったさつまいもとなつめを鍋に入れます。
- 生姜を加え、たっぷりの水を注ぎます。
- 強火で沸騰させた後、弱火にしてじっくり煮ます。
- 米がやわらかくなり、さつまいもがほくほくになったら、黒糖を加え、少し煮て完成です。
温かいうちに食べることで、心の温かさを補い、動悸や不安感をやさしく落ち着かせてくれます。