50代前半の男性が、突然、頭痛・吐き気・嘔吐といった風邪に似た症状を発症しました。彼はこの不調を疲労や不規則な食生活のせいだと考え、休めば回復するだろうと思っていました。
しかし数日後、視力が急激に低下し始めました。医療機関を受診したときにはすでに視力の半分以上を失っており、治療の最適なタイミングを逃してしまっていました。
カナダの公立大学で中医学の教授を務め、エポックタイムズにも寄稿しているジョナサン・リウ氏が、この症例を紹介しました。患者は急性閉塞隅角緑内障と診断されていました。この疾患は、突然の頭痛や吐き気を呈することがあります。
頭痛のほとんどは深刻なものではありませんが、中には目・脳・血管・脊髄などに影響を与える深刻な病気のサインである場合もあります。警告サインを見逃さず、適切なタイミングで医療機関を受診することが、回復と取り返しのつかない損傷の分かれ目になることもあると、リウ氏は述べています。
頭痛を引き起こす危険な原因
リウ氏は、すぐに医療機関での診察が必要な頭痛の種類をいくつか紹介しています。
1. 急性閉塞隅角緑内障
急性閉塞隅角緑内障は、眼科の緊急疾患です。主な症状は、目と頭部に突然激しい痛みが生じることです。リュウ氏は、痛みは眼窩や眉のあたりから額やこめかみに向かって広がる傾向があり、患者は「鋭い痛み」「ズキズキする痛み」「頭が爆発しそうな痛み」と表現することが多いと述べています。
目の充血や急速な視力低下を伴うことがあり、重症の場合には短時間で突然の失明に至ることもあります。これらの症状には、吐き気や嘔吐を伴うことも少なくありません。
頭痛に加えて視覚に異常がある場合は、すぐに医師の診察を受ける必要があると、リウ氏は指摘しています。眼圧を早急に下げなければ、視神経に取り返しのつかないダメージが生じる恐れがあります。
2. くも膜下出血
くも膜下出血は、突然発症する激しい頭痛が特徴で、「人生で最悪の頭痛」と表現されることもあるほどです。吐き気や嘔吐を伴うことも多くあります。
この疾患は脳を覆う膜の間の空間での出血です。台湾・東元総合病院家庭医学科の黄彗倫医師はエポックタイムズに対し、脳動脈瘤の破裂や脳動静脈奇形が主な原因だと説明しました。
出血量が少ない場合、患者は意識を保っているものの、動きや反応が鈍くなることがあります。出血量が多い場合は、突然意識を失うこともあります。そのほかの症状としては、首の硬直、まぶたの下垂、複視(ものが二重に見える)などがあります。
脳動脈瘤は、破裂するまでほとんど自覚症状がないことが多いのが特徴です。破裂が起こると急性出血につながることがあり、40〜50代に多く見られます。
一方、動静脈奇形は脳血管の先天性異常で、小児期から高齢期まで幅広い年齢で発症する可能性があります。頭部外傷、血液疾患、抗凝固薬の使用なども頭蓋内出血の原因となることがあります。
3. 高血圧性脳出血
高血圧性脳出血の症状は、くも膜下出血と似ています。激しい頭痛、めまい、吐き気、嘔吐などが見られ、場合によっては急速に意識を失うこともあります。
黄氏によると、脳内出血の症例の約80%は、長期にわたる血圧コントロール不良または血管の脆弱性に関連しているといいます。この状態は死亡率・障害率が高く、早期治療が予後の改善につながります。
リウ氏によると、高血圧性脳出血は、高血圧や動脈硬化の既往歴がある60歳以上の方に多く見られるとのことです。
4. 頸性頭痛と脳血管疾患
深刻な頭痛は、必ずしも突然・激しく発症するとは限りません。中には徐々に始まり、首や上部脊椎の慢性的な緊張と関連しているものもあります。
リウ氏によると、頸性頭痛は通常、頸椎(特に第1〜第3頸椎)の変性や機能異常に関連しています。首のこわばりや後頭部に広がる痛みを伴うことが多いのが特徴です。
リウ氏は、長年にわたり職業上のストレスを抱えていた元上級管理職の事例を紹介しました。その方は50代前半でラクナ梗塞(脳の細い血管が詰まる種類の脳梗塞)を発症しました。既存の血管リスク要因に加え、慢性的な頸部の緊張が脳血流の低下に関与していた可能性が指摘されました。
脳に血液を供給する主要な血管は頸椎の近くを通っており、椎骨動脈は頸椎の小さな開口部を通過しています。持続的な筋肉の緊張、骨の過剰増殖、または姿勢のゆがみは、場合によっては血流に影響を与えることがあります。
脳は日常的な活動においても体全体の代謝エネルギーの約20%を消費しており、集中的な思考活動や持続的なストレス時にはさらにエネルギー需要が増します。脳への血流が長期間不足すると、脳機能が低下し、頭痛などの症状を引き起こす可能性があります。
首の緊張・姿勢・血管の健康状態に気を配ることで、頭痛の頻度と長期的なリスクの両方を軽減できる可能性があります。
予防のために心がけたいこと
危険な頭痛や頭蓋内出血を予防するには、血管の破裂や急性出血のリスクを減らすことが重要です。黄氏は次の対策をすすめています。
1. 「血圧・血糖値・血中脂質」を管理する
血圧・血糖値・血中脂質を、定期的に数値を確認し、必要に応じて適切な治療を受けながらコントロールしましょう。
2. 動脈瘤リスクのモニタリング
動脈瘤の家族歴がある方や、すでに動脈瘤が見つかっている方は、定期的な画像検査を受けることが大切です。
3. 脳血管異常の経過観察
脳の構造異常や血管奇形が判明している場合は、治療が必要かどうかを判断するために継続的な経過観察が必要です。
4. 頭部外傷の予防
安全な生活習慣を心がけ、危険な行動を避け、適切な安全対策と保護具を使用しましょう。転倒予防は、高齢の方や体が弱い方にとって特に重要です。
5. 抗凝固薬(血液をさらさらにする薬)は慎重に使用する
処方された薬は必ず指示通りに服用しましょう。肝機能・腎機能・血球数・血液凝固検査などを定期的に受けることをおすすめします。
6. 健康的な生活習慣を維持する
禁煙を心がけ、適切な体重を維持し、定期的に運動し、ストレスを管理し、良質な睡眠習慣を身につけましょう。
ツボ押しで頭痛を和らげる
日々のセルフケアとして、リウ氏は首の後ろにある特定のツボをマッサージすることをすすめています。血行を促進し、緊張をほぐす効果が期待できます。
基本的なやり方:親指を使って適度な圧力をかけ、軽い痛みを感じる程度にマッサージします。各ツボを1〜2分間、1日1〜2回、ゆっくりと深呼吸しながら行いましょう。
風府(ふうふ)
後頭部の正中線上、生え際のすぐ上・第1頸椎付近のくぼみに位置するツボです。

風池(ふうち)
風府のツボの両側に位置し、頭蓋骨の付け根、生え際の上のくぼみにあります。このツボは、緊張した筋肉をほぐし、頭痛やめまいを和らげるためによく用いられます。

天柱(てんちゅう)
首の後ろの生え際、僧帽筋(頭蓋底まで伸びる大きな筋肉)の外縁に沿ったくぼみの両側にあるツボです。首のこりや後頭部の不快感を和らげる効果が期待できます。

百労(ひゃくろう)
第7頸椎から指2本分ほど上、背骨から指1本分ほど外側に位置するツボです。第7頸椎の場所は、頭を軽く前に倒したとき、首の後ろで最も目立つ骨の突起を目安にしてください。長時間のデスクワークや勉強による首の痛み・肩こり・頭痛の緩和に役立つ可能性があります。

食事で血管を守る
伝統中医学では「医食同源」という考え方があります。頸性頭痛や血管のサポートには、穏やかなハーブを使った食事療法や薬用茶が補完的なアプローチとして用いられることがあります。
桂枝葛根湯
リウ氏は、特定の体質パターンに対して、桂枝(けいし)と葛根(かっこん)を使った煎じ薬(桂枝葛根湯)をすすめています。この伝統的な漢方薬は、体を温める生薬を用いて首のこりを和らげ、血行を促進し、筋肉の緊張に伴う頭痛の症状を軽減します。
材料
- 葛根 30g
- 桂枝 10g
- 白芍 10g
- 生姜 5g
- ナツメ 10g
作り方
- すべての材料をよく洗います。
- 鍋に入れ、水約2000mLを加えます。
- 強火で沸騰させた後、弱火で30分煮出します。
- こして1日2回、お茶として飲みます。
この処方は、細身で色白、汗をかきやすい体質の方によく用いられます。中医学の理論では、こうした特徴は特定の体質パターンと関連づけられています。妊娠中の方は、使用前に資格のある漢方医にご相談ください。
葛根は、長時間座りっぱなしで運動量が少ないオフィスワーカーにも有益とされています。2025年に発表されたレビュー研究によると、葛根は血圧と血糖値の調整に役立ち、脳への保護効果を持つ可能性が示唆されているとのことです。
※この記事で紹介している生薬は、一般的に健康食品店やアジア系食料品店で購入できます。治療方法は個人によって異なる場合がありますので、具体的な治療計画については医療専門家にご相談ください。
酢漬けピーナッツ
血管の健康は出血性頭痛や脳卒中の予防に深く関わることから、リウ氏は酢に漬けたピーナッツもすすめています。
材料
- 生ピーナッツ 700〜1000mL程度
- 米酢または黒酢 (ピーナッツが完全に浸かる量)
作り方
- 広口のガラス瓶に生ピーナッツを入れます。
- ピーナッツが完全に浸かるまで酢を加えます。
- 蓋をしっかり閉め、1週間漬け込みます。
- 完成したら、朝夕それぞれ10粒を毎日食べます。
近年の研究では、ピーナッツを食べることが心血管の健康に良い影響を与える可能性も示されています。2022年に行われた臨床試験では、軽く塩味をつけたドライローストピーナッツを食べたグループは、低脂肪食を摂取した対照グループと比べ、収縮期血圧が平均5mmHg下がったことが明らかになりました。研究者らは、この血圧低下が主要な心血管疾患の発症リスクを約10%下げることにつながると推定しています。
積極的に摂りたい食品
野菜・果物・健康的な脂肪を豊富に含む食事は、心臓と脳の健康を守るうえで重要な役割を果たします。亜麻仁油・エゴマ油・椿油・オリーブオイルなど、オメガ3脂肪酸・オメガ9脂肪酸を豊富に含む食品も、血管の健康維持に役立つ可能性があります。
台湾・可苡栄養カウンセリングセンターの創設者で管理栄養士の黃苡菱氏は、加工食品やナトリウム・脂肪分の多い食事を控えることの大切さを強調しています。
「ただの頭痛」とあなどらないで
リウ氏の患者が経験したように、頭痛は必ずしも軽い不快感にとどまるものではありません。場合によっては、深刻な眼疾患や脳疾患の緊急サインとなることもあります。
早めに警告サインを察知し、日ごろから血管の健康を維持することが、取り返しのつかない事態を防ぐことにつながります。
(翻訳編集 日比野真吾)
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