週に一度の料理で認知症リスクが70%低下する可能性

食事習慣と脳の健康は一見まったく別のもののように思えますが、研究によれば、家庭で料理をするというシンプルな行動が、特に高齢者の認知症リスクを減らすうえで大きな効果をもたらす可能性があります。とりわけ料理スキルが低い人ほど大きな恩恵を受けることが示されています。

この研究には関与していない、ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部栄養学部門の講師で臨床栄養士のリンジー・マローン氏は、エポックタイムズに「料理は単に食べ物を扱うだけでなく、脳と体を同時に使う総合的な活動です。その組み合わせこそが、こうした保護効果が見られる理由の一部かもしれません」と述べています。

料理が脳を守る可能性がある理由

医学誌『Journal of Epidemiology and Community Health』に最近掲載されたこの研究では、定期的に料理をすることで認知症リスクが30%低下する可能性が示されています。特に料理スキルが限られている高齢者では、そのリスク低下が最大70%に達する可能性があります。この研究は65歳以上の約1万1,000人を対象に、2022年までの6年間にわたってデータを分析したものです。その期間中、参加者の約11%が認知症を発症しました。

週に少なくとも1回、一から料理をする人は、ほとんど料理をしない人と比べて、男性で23%、女性で27%認知症リスクが低いことが示されました。

研究者たちは、生活習慣・収入・教育など認知症リスクに影響を与える可能性のある要因も考慮しました。その結果、料理と認知症リスク低下の関連は、園芸・ボランティア・手工芸といった活動とは独立していることがわかりました。

分析の結果、男女ともに料理の頻度が高いほど認知症リスクが低い傾向があり、その効果の大きさは料理スキルの程度によっても左右されることがわかりました。

研究者たちは主に2つの理由を挙げています。第一に、料理には身体活動が含まれる点です。買い物・立ち作業・キッチン内での移動といった動きは、それ自体が認知機能の健康と関連しています。第二に、料理には継続的な認知的関与が求められる点です。計画・手順の組み立て・注意力・記憶力などが必要になります。

特に初心者にとっては、料理が新しい認知的刺激となるため、より大きな効果が得られる可能性があります。慣れた作業とは異なり、脳に新たな刺激を与えるからです。

研究著者であり、東京科学大学(旧東工大・医科歯科大)の公衆衛生学部門の准教授である谷友香子氏は、エポックタイムズに対し、認知症リスクの低下は「身体活動」と「生産的な活動としての認知的関与」という2つの経路によって説明できる可能性があると述べています。

ただし、料理による効果には上限(一定以上は効果が伸びにくくなる現象)がある可能性もあると考えられています。

すでに料理スキルが高い人はもともとリスクが低いため、料理頻度をさらに増やしても追加的な効果は限られる可能性があります。谷氏はこれらの解釈を探索的なものとしたうえで、「それぞれの要因がどの程度寄与しているかを明らかにするためには、さらなる研究が必要です」と述べています。

また、週1回以上料理をしても、頻度を増やしても効果がさらに高まるわけではない可能性も示されており、重要なのは頻度よりも「定期的にキッチンに立つこと」だと考えられます。

さらに、外出頻度・歩行や立っている時間・食料品を自分で購入しているかどうかといった要因を調整すると、料理頻度と認知症リスクの関連は弱まることがわかりました。これは、身体活動が認知機能への効果の一部を担っている可能性を示しています。

谷氏は、この研究は観察研究であるため因果関係を確定することはできないとも指摘しています。逆の因果関係、すなわち認知機能が高い人ほど料理をしやすいという可能性も排除できません。また、この結果は日本人を対象にしたものであり、食文化や料理習慣の違いから、他の国にそのまま当てはまるとは限りません。
 

家庭料理が与える食事へのコントロール

ニューヨークのノースウェル・ヘルス・ハンティントン病院の登録栄養士で、この研究には関与していないステファニー・シフ氏は、特定の食品群や栄養素に注目することで、家庭料理がもたらす認知症予防効果をさらに高めることができると述べています。

シフ氏は、家庭で料理をする人は果物や野菜の摂取量が増え、超加工食品の摂取量が減る傾向があることを示す研究を挙げています。これらは、脳の健康を改善するとされる地中海食やDASH食(高血圧予防を目的とした食事法)の重要な要素です。

マローン氏は「家庭で料理をすると、食材・分量・調理方法を自分でコントロールできるため、全体的な健康にとって非常に大きな意味があります」と述べています。

マローン氏はまた、オンラインでレシピを探す代わりに、紙の料理本を使うことを勧めています。

「選択肢が多すぎて疲れてしまう『意思決定疲労』を減らし、集中しやすくなります」とマローン氏は述べ、図書館で借りたり中古で購入したりして、自分に合うものを試してから決めることを勧めています。

谷氏は、最も重要なメッセージは、料理のように認知的・身体的・機能的な関与を伴う日常活動に取り組むことが、高齢期の認知機能の維持につながる可能性があるという点だと述べています。

谷氏はさらに、「高齢者がこうした活動を継続できる環境を整えること」は、活動そのものと同じくらい重要である可能性があるとしています。

(翻訳編集 井田千景)

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。