認知症予防につながる「座り方」

私たちの多くは1日の大半をソファやデスクで過ごしていますが、「座る」ことにも種類があります。

新しい研究によると、テレビをぼんやり見る時間を本を読むことやプロジェクトに取り組む時間に切り替えるだけで、脳に良い刺激を与え、将来の認知症リスクを下げられる可能性があります。

現在、認知症は世界の高齢者における死因の第3位です。研究者らが明らかにした意外にシンプルな予防習慣は、「受動的なスクリーンタイムを読書や知的作業に置き換える」ことです。これにより認知症リスクを最大11%低減できる可能性があります。
 

受動的な座り方はリスクを高めなかった

この結果は最近『アメリカ予防医学雑誌(American Journal of Preventive Medicine)』に掲載されたもので、受動的な座り方と知的活動を伴う座り方を区別して認知症リスクを調べた初めての研究です。その差は顕著でした。

研究者は35〜64歳の約2万1000人を対象に、1997年から2016年までの19年間追跡調査しました。参加者は座り方の習慣、身体活動、その他の認知症関連行動について回答し、スウェーデンの健康記録・死亡記録と照合して新たな認知症の発症を特定しました。研究期間中に569件の新たな認知症が記録されました。

研究では3つの重要な効果が明らかになりました。

読書、仕事、パズルなどの知的刺激活動に1時間多く取り組むごとに、認知症を発症するリスクが約4%低下することがわかりました。この保護効果は、特に50〜64歳の人で顕著でした。

受動的な座りがちな活動に費やした時間を1時間、知的刺激活動に置き換えると、認知症リスクの低減効果が7%に上昇しました。

他の活動量を同じに保ったまま、毎日1時間の知的刺激活動を追加すると、認知症リスクが約11%低下しました。

テレビを見るなどの受動的な座り方は、他の生活習慣要因を調整した後、認知症リスクを独立して高めるものではありませんでした。つまり、ソファで過ごす時間自体が害になるわけではなく、脳を使う機会を逃しているだけなのかもしれません。

「座っているときに脳をどのように使うかが、将来の認知機能の重要な決定要因であり、認知症の発症を予測する可能性がある」と、研究共同著者で主任研究者のマッツ・ハルグレン氏(スウェーデン・カロリンスカ研究所)は声明で述べています。
 

知的関与が最も重要

この結果は専門家が予想していた通りです。

「明確なのは、知的に関与することが最も重要で、具体的な活動自体ではないということです」と、認定神経科医でニューヨーク・タイムズベストセラー作家のデイビッド・パールミュッター医師はエポックタイムズに語りました。「読書、執筆、新しいことを学ぶ、パズル、問題解決など、考える・集中する・参加する活動は、テレビを見るような受動的活動よりも一般的に有益です」

パールミュッター氏によると、特に効果的な活動は、少し挑戦を伴うもの、新しいことを学ぶもの、積極的な問題解決を必要とするものです。

「シンプルに言えば、『最高の活動』は1つではなく、大切なのは脳を積極的に使うことで、ぼんやりとオフにしないことです」と同氏は述べています。

これは「認知予備力」という概念とも一致します。定期的に脳に負荷をかけることで、加齢や疾患の影響に強くなるという考え方です。

パールミュッター氏はこの研究を興味深く有用と評価しつつ、観察研究であり介入研究ではないため、因果関係を証明するものではなく、関連性を示すものにすぎないと指摘します。また、知的活動を好む人はもともと健康状態が良く、教育レベルが高いなど、脳の健康を支える他の生活習慣を持っている可能性もあるとしています。
 

体を動かすことも忘れずに

ハルグレン氏は、座りがちな行動は「ありふれているが修正可能な」多くの健康リスク要因の一つであり、認知症もその一つだと述べました。本研究は、すべての座りがちな行動が同じリスクを持つわけではないことを示しています。

「一部は認知症リスクを高める可能性があり、他は保護的に働く可能性があります」と同氏。「加齢とともに身体的に活動的であることは重要ですが、座っているときにも知的に活動的であることが大切です」

知的関与は全体像の一部にすぎません。

研究に関与していない神経科学者のクリストファー・U・ミスリング氏は、座りながらの知的活動と身体活動はどちらも脳の健康を支えるものの、異なる経路で働くとエポックタイムズに語りました。

知的刺激課題は記憶・注意・問題解決に直接働きかけて認知ネットワークを強化するのに対し、身体活動は血流の改善、炎症の低減、神経可塑性(新しい神経接続を形成する脳の能力)の支援を通じて、間接的に脳の健康を高めるとのことです。

「全体として、運動には認知症リスク低減に関して、より強く一貫したエビデンスがあります。しかし、定期的な身体活動と、知的刺激を伴う座りがちな行動を組み合わせることで、最大の保護効果が得られるようです」

(翻訳編集 日比野真吾)

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。