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果物と野菜の熟成は操作できる エチレンを味方につける保存の科学

果物や野菜が食べきる前に傷んでしまう理由を不思議に思ったことがある人へ――その秘密は、実はそれ自体が自然に生み出している物質「エチレン」にあるかもしれません。

エチレンは、熟成を引き起こすガスであり、天然の植物ホルモンです。果物や野菜がエチレンを生成し始めると、一連の生物学的変化が始まります。たとえば、甘みが増し、酸味が減少し、香りが発達することで、「食べごろ」であることを私たちに知らせます。

メリーランド大学の植物科学・景観建築学助教授であるマカレナ・ファーク博士(Macarena Farcuh)は、エポックメディアの取材に対し、エチレンには成長や発達以外にもさまざまな役割があると語っています。エチレンは花の老化を促進し、落葉・落果を制御し、植物がストレスに対応するのを助けます。

ただし、すべての果物や野菜が同じ量のエチレンを生成するわけではありません。ノースカロライナ州立大学の食品安全学准教授であり、エクステンション専門家でもあるリネット・ジョンストン博士(Lynette Johnston)は、エポックメディアに対し、「バナナ、リンゴ、トマト、アボカドなどはエチレンを多く生成しますが、ニンジン、ブロッコリー、葉物野菜などはごくわずかしか生成しません」と述べています。

果物は収穫時期によっても熟し方が異なります。熟す前に収穫され、エチレンの影響で熟す果物は「追熟型」と呼ばれます。リンゴ、バナナ、マンゴー、アボカドなどがその例です。一方、ブドウ、イチゴ、サクランボなどは「非追熟型」で、完全に熟した状態で収穫されます。ほとんどの野菜は熟してから収穫され、エチレンには依存しませんが、エチレンにさらされると腐敗が早まることがあります。

「果実の成熟度や栽培品種によっても、エチレンの生成量は異なります」とファーク博士は述べています。

栽培品種とは、人間が望む特性(風味、食感、見た目、乾燥耐性、収穫量など)を基に選抜・育成した果物の特定の品種のことです。

エチレン以外にも、熟成にはさまざまな要因が影響します。

  • 果物や野菜の種類および栽培品種
    (例:マッキントッシュ種のリンゴは他よりも多くエチレンを放出する)
     
  • 成熟度と熟し具合
     
  • 温度
     
  • 光の有無
     
  • 物理的ストレス(打撲や傷など)
     
  • 酸素と二酸化炭素の濃度
     
  • 湿度
     

エチレンを発生する食品・エチレンに敏感な食品・影響を受けにくい食品一覧

一部の食品は多量のエチレンを放出し、他の食品はそれに非常に敏感です。これらを一緒に保管すると、腐敗が早まることがあります。

以下は、それぞれの例です。より詳細な一覧は、US Foodsの「produce-ethylene sensitivity chart(農産物のエチレン感受性一覧表)」で確認できます。

エチレンを発生させる食品

リンゴ、アボカド、バナナ、カンタロープ(マスクメロンの一種)、キウイ、モモ、ナシ、ピーマン、トマト

エチレンに敏感な食品

リンゴ、アスパラガス、アボカド、バナナ、ブロッコリー、カンタロープ、キュウリ、ナス、ブドウ、ハネデューメロン、キウイ、レモン、レタス、ライム、マンゴー、タマネギ、モモ、ナシ、ピーマン、カボチャ、サツマイモ、スイカ

エチレンに影響を受けにくい食品

ブルーベリー、サクランボ、さやいんげん、ニンニク、グレープフルーツ、オレンジ、パイナップル、ジャガイモ、ラズベリー、イチゴ、トマト
 

保存方法が重要です

果物や野菜は、保存の仕方を工夫することで、望む熟成スピードに調整することができます。

熟成を遅らせる方法

果物や野菜を冷蔵庫に入れると、低温によって熟成が遅くなり、鮮度を長く保つことができます。ただし、ジャガイモ、タマネギ、ニンニクなどは冷蔵庫に入れないようにしましょう(ただし、加熱・カット・すりおろした場合は別です)。

果物や野菜を長持ちさせるためには、エチレンを多く出すリンゴやバナナを、エチレンに敏感なキュウリやナスの近くに置かないようにすることが大切です。

また、熟成を遅らせるもう一つの方法は、果物や野菜を袋やラップなどの密閉包装から取り出すことです。包装内にガスがこもると熟成が早まってしまいます。

熟成を早める方法

アボカドでワカモレを作りたいのに、まだ硬い…そんなときは、未熟な果物をエチレンを多く出す果物(特にリンゴやバナナ)の近くに置きましょう。さらに早く熟させたい場合は、紙袋に一緒に入れておくと、あっという間に食べごろになります。

「紙袋は空気の入れ替えを助け、過剰な湿気の蓄積を防ぎながら、エチレンを適度に保持することで熟成を早めます。これに対してプラスチック袋は湿度が高くなりやすく、カビや腐敗を促進し、空気の循環も妨げます」とファーク博士は説明しています。

カットした果物や野菜を空気にさらしたり、温かい場所や日当たりの良い場所に置くことも、熟成を促進する方法ですとジョンストン博士は述べています。
 

鮮度を保つために

野菜は収穫時点で成熟しているため、エチレンによって熟成することはありません。しかし、私たちが「野菜」と呼んでいる中には、植物学的には果物に分類され、エチレンの影響を受けやすいものもあります。ピーマン、ナス、キュウリなどがその例です。

一方で、野菜をエチレンにさらすことは逆効果で、熟成を早めるのではなく老化や腐敗を進めてしまいます。

多くの野菜はエチレンに敏感であり、エチレンを多く出す果物(リンゴ、バナナ、アボカドなど)と一緒に保存すると、早く傷んでしまうため、別々に保管するのが基本です。

「たとえば、ブロッコリーやカリフラワーは黄ばみ、レタスやホウレンソウのような葉物は赤褐色の斑点が出やすくなります。ニンジンは苦味を帯び、キュウリやズッキーニは黄変して柔らかくなります」とジョンストン博士は説明しています。

最終的に、ジョンストン博士は次のようなポイントを守れば、食品の鮮度をより長く保てると述べています。

  • 果物や野菜は、食べる直前に洗う(ただしベリー類は、酢水で洗ってしっかり乾燥させてから保存するのが効果的)
     
  • 保存前にしっかり乾燥させる
     
  • 湿度を適切に保つ(葉物は高湿度、タマネギやニンニクは低湿度)
     
  • 食べるまで時間がかかる場合は、熟した果物を常温から冷蔵庫へ移す

これらのコツを活用すれば、あなたの果物や野菜はより長く新鮮さを保ち、料理の味を高め、次の買い物までおいしく食べきることができるでしょう。

(翻訳編集 井田千景)

鍼灸医師であり、過去10年にわたって複数の出版物で健康について幅広く執筆。現在は大紀元の記者として、東洋医学、栄養学、外傷、生活習慣医学を担当。