ストレスと不安を減らす9つの戦略

ストレスは、静かな心配事から大きな挫折まで、誰にでも影響します。適度なストレスは実際に役立つこともあります。良い運動で筋肉が鍛えられている証拠として「熱さ」を感じるのと同じように、適度なストレスは心身を強くするサインにもなります。

しかし、ストレスが過剰になると問題となります。徐々に心身を消耗させ、慢性的な病気の原因になる可能性さえあります。

以下に紹介するエビデンスに基づいたツールは、ストレスや不安に立ち向かい、持続的なレジリエンスを築くための包括的な土台を提供します。
 

1.栄養価の高い食事をとる

研究によると、精製度の低い全体食で栄養密度が高く、特に炭水化物が少なく健康的な脂質が多い食事は、ストレスを軽減し、安定したエネルギーを供給し、脳機能を支えることが示されています。この方法は血糖値の変動を抑え、ホルモンのリズムを整えることで、気分や集中力を安定させます。エネルギー代謝や脳内化学物質の調整を支える効果も確認されています。

健康的な脂質を適切に含む個別化された食事は、脳へのエネルギー供給を最適化し、炎症のシグナルを抑え、神経伝達物質の安定した生成を促してストレス軽減に役立ちます。精製食品を避け、タンパク質、脂質、色鮮やかな野菜を中心にすることで血糖値は安定し、体と神経系の調整が保たれます。

完璧に食べる必要はありません。まずは加工食品を卵、葉物野菜、サーモン、ナッツ、アボカドなどのシンプルな食材に置き換えることから始められます。

また、日本の「腹八分(はらはちぶ)」のように満腹前で食事を止める知恵も有効です。『アメリカ生活習慣医学』雑誌に発表された研究では、このマインドフルな習慣がエネルギーの改善、気分の安定、さらには長寿の促進に寄与するとされています。
 

2.睡眠の質を優先する

食事がストレスに対抗する土台だとすれば、睡眠は修復システムです。回復的な睡眠がなければ、思考の明晰さは低下し、感情の調整は難しくなり、ストレスが蓄積してしまいます。

神経科学の重要な発見のひとつが「グリンパ系(脳の老廃物排出システム)」です。深い睡眠の間、このシステムが日中に蓄積した毒素や代謝廃棄物を取り除き、認知機能の回復や感情のバランスを支えます。質の低い睡眠は老廃物を残し、脳の働きを妨げ、ストレスや不安、感情の不安定、認知機能低下の原因となる可能性があります。

睡眠を最適化するには、毎日同じ時間に寝起きする一貫した生活習慣を持つことが大切です。夜は刺激を減らし、涼しく暗い環境を整え、通知をオフにして感覚入力を減らしましょう。本を読んだり照明を落としたりする簡単な習慣が、睡眠の準備サインとなります。
 

3.楽しめる日課を持つ

ルーティンは単調さではなく、神経系にとっての薬です。予測可能なスケジュールを持つことで、体と脳は「活動する時・休む時・回復する時」を学習し、ストレスを減らします。2024年に『BMC公衆衛生学』誌に掲載された研究では、一貫性が感情調整を改善し、うつ症状を減らすことが確認されました。

これは主に概日リズム(体温やホルモン、睡眠・覚醒バランス、気分を調整する自然なサイクル)によるものです。朝日と共に起き、日没後に活動を落ち着ける生活は、夜間のコルチゾール(ストレスホルモン)を下げ、日中のセロトニンを高め、エネルギーの安定を促します。

朝食を丁寧にとる、軽くストレッチをする、夜は画面を見る時間を決めて切り上げるなど、小さなルーティンで1日を整えましょう。特に朝の習慣は1日全体を穏やかにし、集中力を高める効果があります。こうしたパターンは神経系に安心を伝え、外側の一貫性が内側の安定を生み出します。
 

4.体を動かして気分を高める

運動は気分を変え、ストレスに関わる体内のバランスを整える最も速い方法のひとつです。血糖値の調整、ホルモンのバランス、ドーパミンやセロトニンなど神経伝達物質の分泌を促し、心の明晰さを取り戻します。

2024年に『身体活動と栄養学』誌に発表されたレビュー研究では、定期的な運動がうつを大幅に軽減し、不安を和らげ、気分を安定させる神経伝達物質のパターンを改善すると確認されています。さらに認知の柔軟性を高め、ストレス下で思考を切り替える力を強化します。エンドルフィン(脳内ホルモン)が分泌され、痛みを減らし、幸福感を高めることも知られています。

屋外での散歩、ピラティスやヨガ、気功のオンラインクラス、机でのストレッチなど、シンプルな運動でも回復力に役立ちます。これらの動きは神経系に「安全」を伝え、ストレス反応を和らげます。
 

5.感謝を実践し、体現する

感謝は単なる心構えではなく、脳を変える神経生物学的な実践です。研究では、感謝がストレスホルモンのコルチゾールを下げ、感情ネットワークを調整し、共感や自己調整の経路を強化することが示されています。

『社会認知・感情神経科学』誌に掲載された神経科学研究では、感情調整や回復力に関与する脳ネットワークが、感謝によって活性化することが確認されました。さらに2023年にEinsteinで発表されたメタ分析では、感謝の介入を行った患者が、より高い感謝の感情を持続し、精神的健康が改善し、不安やうつ症状が軽減することが示されました。

日記を書く、感謝の手紙を書く、マインドフルネスを取り入れるなど、具体的な方法を試すことができます。動作や儀式を伴うことで、感謝は自動化されやすくなります。

感謝を振り返りや会話、体の動きの中に織り込むことで、ストレスをつながりや希望、前向きさへと変換していけます。
 

6.マインドフルな休止と呼吸を取り入れる

ストレスに圧倒されやすいのは、休む間が足りないときです。マインドフルな休止は脳の前頭前野(意思決定や自己制御を担う部分)を活性化し、扁桃体(感情の警報システム)を静めます。神経科学的な証拠では、「感情ラベリング(自分の感情を言葉にする行為)」がストレス反応を調整する効果があるとされています。また、短時間の休止を繰り返すことで、回復力と自己制御力が強化されることも確認されています。

呼吸法はマインドフルネスの最も簡単な入り口です。『ストレス健康』誌の465件の研究を対象とした総合レビューや、『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載されたメタ分析では、ゆっくりと意識的に呼吸することが生理的な覚醒を下げ、気分を整え、ホルモンバランスを保つことが示されています。毎日5分でも、ストレス状態を変えることができます。『生理学のフロンティア』誌では、医療現場でガイド付き呼吸法を導入したところ、健康状態が改善したことが報告されています。

実践方法としては、30秒立ち止まって1〜2回ゆっくり呼吸するだけでも十分です。また、「不安を感じている」「落ち着いている」など、今の感情を言葉にしてみるのも有効です。言葉にするだけでストレスの経路が整い、呼吸が神経系を安定させます。繰り返すことで長期的な感情バランスが育まれます。
 

7.毎日ポジティブなことに触れる

取り入れるメディアは気分や回復力に直結します。最近の研究では、特定のメディアが精神的健康の改善に役立つ可能性が示されています。2025年3月に『PLOSメンタルヘルス』誌に発表された体系的レビューでは、特定のポッドキャストがストレス・不安・自己スティグマを軽減し、自己への思いやりを高める効果があることが報告されています。

無限スクロールをやめ、意識的に情報を選ぶことを考えてみましょう。インスピレーションを与えてくれるクリエイターをフォローする、散歩中に前向きなポッドキャストを聴く、朝のニュースの代わりに内省的なオーディオ番組を流すなど、数分のポジティブな時間が視点をリセットし、回復力を養います。

信仰や精神的実践を通して高次の存在に心を向けることも、希望や意味、前向きな見方を育み、困難な時期に支えとなります。『人格研究』誌に発表された研究では、日々の宗教的実践が気分を改善し、ストレスを軽減することが確認されています。信念やコミュニティとつながることで、内なる強さが強化されます。
 

8.志を同じくするコミュニティとつながる

人間はつながりを求める存在であり、社会的な絆はストレスを減らし、回復力を高める最も強力な方法のひとつです。2025年3月に『老化の革新』誌に発表された6,000人以上の高齢者を対象とした研究では、活発な社会グループへの所属が幸福感と健康を直接高めることが示されました。「世界幸福度報告」でも、人間関係が精神的健康を支える主要因であることが強調されています。

世界にはその例が多くあります。日本の「模合」は、参加者がストレスを乗り越え、孤独を減らし、長寿を実現する助けとなっています。イタリアでは家族や友人との頻繁な集まりが孤独感を減らし、日常に喜びをもたらしています。社会的つながりは脳の報酬回路を活性化し、コルチゾールを下げ、オキシトシン(絆や安心感を高めるホルモン)システムを強化します。

他者とつながるには、ボランティア活動に参加する、既存の友人関係を深めるなど、自分が居場所を感じられるコミュニティに加わるのがよいでしょう。つながりは感情的負担を一人の肩から共同体の力へと移し、回復力を何倍にもします。
 

9.脆さを受け入れる

ストレスに直面したときの回復力のパラドックスは、完璧さではなく不完全さを受け入れることで、最も強く育まれるということです。脆さを受け入れることで、つながりや信頼、本物の自分らしさが生まれます。日本の「金継ぎ」の芸術はその比喩です。割れた陶器を金で修復することで、欠点は欠陥ではなく美しさの一部となります。

2023年に『心理学のフロンティア』誌に掲載された研究では、困難の中で脆さや適応力を示すことが持続的な強さを育むことが確認されました。特にCOVID-19パンデミックのような状況下で顕著です。限界を認め、他者に真実を共有し、自己内省を行うことで、脆さはつながりと創造性への扉となります。

実践的な方法としては、信頼できる友人に正直に話す、難しい感情を文章にする、芸術や物語を通じて脆さを表現するなどがあります。強さを削ぐのではなく、開かれた心が相互性や帰属意識、回復力の絆を生み出し、より大きな希望をもって困難に立ち向かう準備が整います。

レジリエンスは、ストレスを避けるべき脅威ではなく成長の合図として受け止めるときに形づくられます。バランスと視点を養う小さな習慣を意識的に実践することで、適応し回復する力が強化されます。時間をかけて積み重ねることで、恐れではなく安定感を持って困難に立ち向かう柔軟性と自信が培われていきます。

(翻訳編集 井田千景)

臨床栄養士および自然療法士として、2009年より消化不良、依存症、睡眠障害、気分障害に悩む方々を支援するコンサルティングを実施。大学で補完医療を学ぶ中で、行動神経科学や腸・脳の不均衡に強い関心を抱く。それ以来、栄養ゲノミクス、トラウマにおけるポリヴェーガル理論、および栄養療法アプローチに関する大学院レベルの認定資格を取得。