40代の患者さんが神経内科を受診し、ブレインフォグを訴えました。記憶力の低下のほか、腹部膨満、しゃっくり、かゆみを伴う皮膚発疹も見られました。診断の結果、慢性的な食物アレルギーと持続的な腸の炎症が判明しました。
長安醫院神経内科・統合医療センター長の陳恵萱医師は、新唐人テレビの健康番組「Health 1+1」のインタビューで、「ブレインフォグは、腸脳軸を通じて腸の炎症が脳に影響するなど、体内の不均衡が原因となることがあります」と語りました。
その患者さんは腸内環境を整える食事調整を行ったところ、徐々にブレインフォグが改善しました。
複数の身体的不均衡の結果
ブレインフォグとは、頭がぼんやりして思考が遅く、集中できない状態を指す包括的な言葉で、明確に診断できる神経学的原因があるわけではありません。精神的な鋭さが低下したように感じる主観的な体験を表すもので、それ自体が病名ではありません。
陳医師によると、機能医学の観点から見ると、臨床でよく見られるブレインフォグの多くは、5つの健康上の不均衡に関連しています。
腸内環境の乱れ:腸と脳は、神経系・免疫系・内分泌系を通じて「腸脳軸」を形成しています。腸内細菌のバランスの乱れ、消化機能の低下、慢性的な食物過敏などが腸を刺激すると、低グレードの炎症を引き起こします。炎症のシグナルが血流を通じて全身に広がることで、脳機能に干渉し、ブレインフォグの症状が現れることがあります。
ミトコンドリア機能の低下:ミトコンドリアは細胞の「発電所」として知られています。脳はエネルギー消費が非常に多い臓器です。ミトコンドリアの機能が低下するとエネルギー供給が不足し、脳の働きが鈍くなることがあります。
毒素の蓄積:重金属、内分泌かく乱物質、カビ毒などもミトコンドリアを損傷し、ブレインフォグを悪化させる可能性があります。
神経伝達物質の不均衡:ドーパミン、セロトニン、アセチルコリンなどの脳内神経伝達物質のバランスが崩れると、脳の協調的な働きが損なわれ、ブレインフォグを引き起こすことがあります。
酸化ストレスと慢性炎症:酸化ストレスは神経系を損傷し、脳の炎症を引き起こすことがあります。長期的なストレス、偏った食事、睡眠不足、慢性疾患などの影響で、体は低グレードながら持続的な慢性炎症状態になりやすいです。
食事の推奨
脳の炎症がブレインフォグの主な原因の一つと考えられているため、予防には抗炎症対策が重要です。台湾精準予防医学会理事長の張家銘医師は、番組「Health 1+1」で、脳の炎症を抑えるための食事の工夫について紹介しました。
1.抗炎症・抗酸化栄養素を補給する
3つの栄養素の補給が勧められています。
- オメガ3脂肪酸:強力な天然の抗炎症成分で、主に深海魚、亜麻仁、チアシードに多く含まれます
- ビタミンD:骨粗鬆症予防や免疫機能の安定化、アレルギー症状の改善に関わるとされています
- ビタミンC:酸化ストレスを減らし、炎症を軽減する働きが期待されます
2.プロバイオティクスとプレバイオティクスを補給する
腸の炎症が脳の炎症の大きな原因の一つであるため、食物繊維が豊富で善玉菌の増殖を助けるプレバイオティクス食品(サツマイモ、バナナ、全粒穀物など)を多く摂取することが勧められます。同時に、ラクトバチルスやビフィドバクテリウムなどのプロバイオティクスを補うのもよいでしょう。チーズやキムチなどの発酵食品もプロバイオティクスが豊富で、役立つ可能性があります。
3.炎症を促進する食品を避ける
善玉菌や食物繊維を摂るだけでなく、腸の健康を保つためには、腸に負担をかける高糖質・高脂肪・超加工食品を避けることも大切です。また、グルテンなどに不耐性のある人は、できるだけ避けたほうがよいでしょう。
陳医師によると、医療的な補助療法が役立つ場合もあります。例えば、栄養不良の患者では、経口または静脈による栄養補給で、より早く改善が見られることがあります。
生活習慣
生活習慣の面では、陳医師は睡眠の質を高め、就寝前の携帯電話やパソコンの使用を避けて、ブルーライトによる睡眠への悪影響を減らすことを勧めました。また、読書や学習によって脳を鍛えることも勧めています。
定期的な運動も脳を活性化するとされています。研究では、運動中に脳を保護する神経栄養因子などの物質が分泌され、良好な記憶力や認知機能の維持を助ける可能性が示されています。
陳医師はまた、社交、旅行、音楽鑑賞などのストレス解消習慣も勧めました。強いストレスによる重度のブレインフォグがある患者には、アロマセラピーでストレスホルモンの分泌を整えることを勧めています。研究では、ラベンダーとローズマリーの精油を吸入すると、コルチゾールが低下し、抗酸化作用が得られる可能性が示されています。
重金属毒性の低減
毒素による脳の損傷は、体内の重金属の蓄積が原因となることがあります。陳医師によると、重金属は神経の炎症を促進し、血液脳関門を損傷し、神経系の障害を悪化させ、毒素が脳に入りやすい状態にします。研究では、重金属がミトコンドリアを損傷し、脳のエネルギー不足や細胞死を引き起こす可能性も示されています。
重金属の摂取を減らすために、陳医師は低品質な化粧品を避け、大型魚の摂取を控え、自宅の古い水道管、塗料、調理器具を確認することを勧めました。
陳医師はまた、運動、水分補給、食物繊維の摂取によって、汗・尿・便を通じた重金属の排出を促せる可能性があると述べました。食事面では、以下のような解毒作用が期待される食品を多く摂ることを勧めています。
- ニンニク、タマネギ、アブラナ科の野菜(硫黄化合物が豊富で、肝臓の解毒機能を助けるとされています)
- サツマイモ、カボチャ、黒キクラゲ(食物繊維が豊富で、腸内の重金属の排出を助ける可能性があります)
- 海藻(キレート作用によって重金属の排出を助ける可能性があります)
- ビタミンC、E、Aのサプリメント(抗酸化力を高め、重金属による炎症を軽減する働きが期待されます)
ブレインフォグと認知症は関連しているか?
ブレインフォグのある患者さんの多くは、認知症になるのではないかと心配します。両者には関連があるのでしょうか。陳医師によると、ブレインフォグは認知症そのものではなく、脳の「亜健康状態」——健康と病気の間の移行段階——と考えられています。
最も一般的な認知症は変性性認知症で、健康な状態から病気へとゆっくり進行する慢性疾患だと陳医師は言います。
「脳は一夜にして健康な状態から認知症になるわけではありません」と陳医師は言いました。「スケールで0が健康状態だとすると、認知症は80〜100の間です。ブレインフォグは亜健康または亜疾患の段階にあり、20〜80のどこかに位置します」
(翻訳編集 日比野真吾)
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