余命3か月宣告から15年 感謝が支えたがん克服

29歳という若さで、沈蘭婷(しん・らんてい)さんは衝撃的な診断を受けました。進行した大腸がんで、余命はわずか3か月と告げられたのです。しかし彼女は絶望に屈する代わりに、徹底して前向きな考え方を選びました。「残された時間がどれほど少なくても、毎日を喜びと感謝の気持ちで迎えます」と彼女は語りました。

3か月後、手術不能とされた10センチの腫瘍は2センチにまで縮小しました。そして15年後の現在、彼女は活力に満ちた健康な生活を送り、がんは消失しています。

人生を変えた診断

がんを克服した台湾の女性であり、桃園国際青年商会女性部(国際的な青年団体の女性部門)の元会長である沈さんは、その体験をエポックタイムズに語りました。

2010年2月、彼女は大腸から腹膜(腹腔を覆い、多くの内臓を包む薄い膜)に転移した末期の大腸がんと診断されました。医師は腫瘍を手術で取り除くことは不可能だと判断しました。

「医師から、分子標的治療(特定のがん細胞を狙う治療法)を受けても生存率は10%未満で、5年生存率は1万分の1程度だろうと言われました」と彼女は話します。

彼女は強い恐怖を感じ「ほぼ毎日泣いていた」といいます。

しかしこの試練は、彼女に深い気づきをもたらしました。生・老・病・死は誰にとっても避けられないものだということです。「明日何が起こるかは誰にも分かりません。だからこそ、毎日を今この瞬間にしっかり生きるのです」と彼女は語りました。

涙をぬぐい、彼女は家族や友人と意味のある時間を過ごし、人とのわだかまりを解き、自分自身とも和解しながら、一日一日を大切に生きることを決意しました。そして自己憐憫や死への恐怖にとらわれるのではなく「今、本当に大切なこと」に意識を向けるようになりました。
 

がん細胞と和解する

沈さんのがん克服の方法は「戦う」ことではありませんでした。「最も重要なのは考え方を変えることです。がんと闘う、治療するというよりも、『健康を創り出すことが目標』と考える方がよいのです」と彼女は言います。

「がん細胞も結局は自分の細胞です。体が死ねば、彼らも生きられません。だから私は彼らと和解し、気づきを与えてくれたことに感謝し、一緒に癒やされていこうと考えました」

彼女は診断前の生活を振り返ります。多くの若者と同じように、手軽な食事、特にテイクアウトを多く取り、不規則な生活で昼夜が逆転し、運動もせず、体の声を無視していました。

がんは遺伝、環境、免疫、偶然など多くの要因が関係する複雑な病気ですが、彼女はそれを「責任を探す機会」ではなく「バランスを取り戻す機会」と捉えました。

「腫瘍は大きくなるのなら、小さくなる可能性もあるはずです。風船のようなものです」と彼女は語ります。
 

感謝の力

江本勝の著書『水からの伝言』(水に言葉をかけると結晶の形が変わるとする内容)に触発され、沈さんはその考えを自分自身に応用しました。「人間の体の70%以上は水です。だから試してみようと思いました。何を食べるときも『ありがとう』と言って、喜んでいただきます」

彼女は現在、旬で新鮮、自然な食材を優先しながらも、加工食品を時折食べることについては神経質になりすぎないようにしています。「心配や恐れによる悪影響は、食べ物そのものよりもはるかに大きいのです。だから私は感謝して、楽しく食べます」

食事だけでなく、睡眠習慣も改善しました。「寝る前には心から自分の体に感謝し、新しい一日を迎えることを楽しみにします」
 

感情と病気の関係

がん闘病中のある出来事が、感情と健康の深い関係に気づかせました。

タクシーに乗っていた際、運転手と激しい口論になり、怒りに駆られた運転手が彼女の襟をつかみ、脅してきたのです。怒りに燃えた彼女は泣き崩れ、警察に通報しようと考えました。

それまで比較的軽かった抗がん剤の副作用は、この出来事の直後から急激に悪化しました。吐き気や嘔吐、激しい脱毛が、これまでにないほど強く現れたのです。

家族に話すと、同じキリスト教徒である家族は彼女に祈るよう勧めました。最初は気が進まず、感情に押しつぶされそうでしたが、家族の祈りを聞くうちに、心に静かな変化が起こりました。やがて怒りや不満を手放し、運転手の置かれた状況にも思いを寄せるようになったのです。

振り返ってみると、彼女はこの出来事に深い感謝を感じています。

「感情が体にどれほど大きな影響を与えるかを教えてくれました。怒りや悲しみを抱え続けても、自分を傷つけるだけです。手放して、感謝と喜びの心で前に進む方がはるかに良いのです」

現代の研究でも、短い時間であってもポジティブな感情が免疫機能を高め、健康指標を改善することが示されています。
 

運動習慣を築く

生活を見直す中で、家族や友人の支えがどれほど大きなものだったかを実感しました。特に、叔母とその飼い犬が、運動習慣を作る上で重要な役割を果たしました。

運動が健康の基盤であり、体を動かすことで細胞に酸素が行き渡り、活性化するという記事を読んだ彼女は、運動の重要性を理解しました。偶然にも叔母も同じ記事を読んでおり、すぐに電話をかけてきて「一緒に運動しよう」と誘ったのです。

彼女は「いいよ」と答えたものの、本当はベッドに倒れ込みたい気分でした。しかししばらくすると、叔母が犬を連れて家の下まで来て「急がなくていいから、ゆっくりでいいよ。一緒に犬の散歩をしよう」と再び電話をしてきました。

窓から見ると、楽しそうに手を振る叔母と、尻尾を振って待つ犬の姿がありました。その優しさに心を打たれ、彼女は迷わず外へ出ました。

こうした周囲の励ましによって、彼女は徐々に運動習慣を身につけ、後には360キロのサイクリングにも挑戦し、他のがん患者にも勇気を与える存在となりました。
 

回復への3つの道

沈さんは、真の回復とは「身体・心・精神」の3つが調和する旅だと考えています。

身体:食事・運動・睡眠を重視し、旬で自然な食材を選び、自然の中で体を動かし、十分な休息を取ることです。

心:持続的な感謝の気持ちを育てることです。ネガティブな感情が湧いたときは、身近な人に打ち明けるなどして無理なく手放し、安らぎへと変えていくことが大切です。

精神:信仰はかけがえのない役割を果たし、人をより前向きで思いやりのある存在へと導きます。

これまでの歩みを振り返り、彼女の心は感謝で満ちています。

「人生はそれぞれ異なる経験の中で展開します。それらはすべて、私たちを成長させてくれる大切な贈り物です。末期がんで最もつらかったとき、もし回復したら自分の体験を分かち合い、誰かを励ましたいと誓いました」

「今、その機会をいただいていることに深く感謝しています。そして何度も思い出すのです。健康で、喜びに満ち、目的を持って生きることの大切さを」
 

感謝の効用

医療の専門家たちは、前向きで楽観的な見方と、感謝に満ちた心を持つことが、病気からの回復を力強く支え、全体的な健康状態を高めることを明らかにしています。

感謝やポジティブな感情は、脳の前頭前野(意思決定や感情制御を担う部位)や報酬系(快感や意欲に関わる神経回路)を活性化させる一方で、恐怖の中枢である扁桃体(危険や不安に反応する脳の部位)を落ち着かせます。この変化により、慢性的なストレスのシグナルが減少し、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌が低下し、炎症も抑えられます。同時に、ポジティブな感情は迷走神経の働きを高め、免疫調整、消化、細胞の修復を改善します。

つまり、感謝は体を「生存モード」から、より回復に適した状態へと導くのです。

ニューヨークのノーザン・メディカル・センターの最高経営責任者(CEO)であり、精神科専門医、そしてエポックタイムズ寄稿者でもある楊景端医師は、道徳的な修養が高い人は独特の視点で世界を見ると語っています。他の人が不運だけを見る場面でも、そうした人々は前向きで心を高める側面を見出します。その結果、否定的な感情を抱くことが少なく、有害な行動に及ぶこともほとんどありません。ヤン医師は、この特質こそが健康と回復力にとって極めて重要であると考えています。

また楊医師は、日常生活の中で思いやり、理解、許し、他者への優しさといった道徳的な人格を育てることの重要性を強調しています。これらを継続的に実践しなければ、前向きな心の状態を維持することは難しくなります。予期せぬ出来事が起きたとき、人は極端な言葉や行動に走りやすくなり、それが他人を傷つけるだけでなく、自分自身の健康にも悪影響を及ぼします。

補完的な観点から、日本の中医師である甄立学氏は、中医学では「経絡(体内のエネルギーの通り道)」の詰まりが痛みを引き起こし、やがて停滞が腫瘍やがんを生み出す原因になると説明しています。感謝は強力なポジティブな力として働き、これらの経絡を通しやすくし、体のエネルギーを天・地・自然の「気(生命エネルギー)」と調和させ、心身のバランスを回復させるのに役立つといいます。

現代科学もこの考えを裏付けています。2024年に『JAMA Psychiatry』に掲載された研究では、約5万人の米国の高齢女性看護師のデータを分析した結果、日常的に感謝を実践している人は、あらゆる原因による死亡リスクが約9%低いことが示されました。さらに、感謝は体内の炎症マーカー(炎症の程度を示す指標)を大きく減少させることも、他の研究で明らかになっています。

感謝の心を育てるためのヒント

甄氏は、日常生活に簡単な感謝の習慣を取り入れることを勧めています。

感謝日記を書く

毎晩、感謝している人や出来事を書き留めてください。美しいものに気づいた瞬間、友人との楽しい会話、おいしいコーヒーを味わった時間、誰かの問題解決を手伝えたことなど、どんな小さなことでも構いません。

また、その日の中で最も幸せだった瞬間を書いて箱に入れておくのもよいでしょう。つらい日にはそれを取り出し、その体験を思い出すことで、再び感謝の気持ちとつながることができます。

家族や友人と感謝の言葉を交わす

私たちの周りには、日々静かに支えてくれている人がいますが、その努力に気づかないことが多いものです。朝のコーヒーを入れてくれる配偶者、食料を切らさないようにしてくれる親、笑顔で元気づけてくれる子どもたちなどです。また、通勤でお世話になるバスの運転手や、街をきれいに保ってくれる清掃員の存在にも目を向けてみてください。

一度立ち止まり、心を込めて「ありがとう」と伝えてみましょう。

感謝の散歩をする

公園や自宅の周りを歩きながら、木々の色合い、自然の音、足元の感触に意識を向けてください。今この瞬間に意識を集中し、周囲の世界に感謝することを大切にしましょう。

自己肯定の言葉をかける

毎日、自分自身に「今日もよく頑張りました、ありがとう」と声をかけてください。この小さな習慣が自己価値感を高め、感謝の心を育てる助けとなります。

(翻訳編集 井田千景)

Ellen Wan
2007年から大紀元日本版に勤務しており、時事から健康分野まで幅広く携わっている。現在、記者として、新型コロナウイルスやコロナワクチン、コロナ後遺症、栄養学、慢性疾患、生活習慣病などを執筆。
英文大紀元が提供する医療・健康情報番組「健康1+1」の司会者を務める。海外で高い評価を受ける中国の医療・健康情報プラットフォームであるこの番組では、コロナウイルスの最新情報、予防と治療、科学研究と政策、がんや慢性疾患、心身の健康、免疫力、健康保険など、幅広いテーマを取り上げている。