プレッシャー下での意思決定を支える生理学的メカニズム

2017年から2019年にかけてアメリカ海軍の艦艇で複数衝突事故が発生し、そのうちの1件で7人の水兵が死亡したことを受け、海軍首脳部は原因を調査しました。

海軍健康研究センターが2019年に発表した報告書は、「艦艇乗員の意思決定の問題が重要な要因の一つであった可能性がある」とし、「ストレスが関与していた可能性がある」と述べています。

「艦上での任務は、乗員の即応性に影響を与える独自でしばしば強いストレス要因を伴うため、艦上の水兵は高いレベルのストレスにさらされます。ストレスは時にはモチベーションになることもありますが、強いまたは長期的なストレスにさらされると、意思決定や作戦遂行能力に悪影響を及ぼすことがよく知られています」と報告書に記されています。

将来同様の事故を防ぐため、海軍健康研究センターは、水兵がストレスに効果的に対処し、プレッシャー下で集中力を維持し、困難で危険な状況に耐える能力を強化するための複数のプログラムを検証しました。その一つが、カリフォルニアに拠点を置くハートマス研究所と共同開発された「ストレス回復力トレーニングシステム」です。

プログラムの一環として、ある艦艇の92人の乗員に、それぞれ専用のiPadが支給されました。このiPadには、心臓活動をリアルタイムで表示するバイオフィードバックシステムを搭載した専用アプリがインストールされていました。アプリには、呼吸法や感情シフト技法など、教えられた技術をさまざまな困難なシナリオで練習できるシミュレーションが組み込まれていました。エクササイズの目標は、ストレスの感情を素早く再構成し、感謝や愛する人への思いやりなどの肯定的な感情に置き換えることでした。

プログラムの効果を評価するため、艦艇の乗員たちは一連の認知機能テストに参加しました。このテストは研究開始時と、アプリ使用開始から8週間後の計2回実施されました。テストでは、意思決定能力、情報処理速度、注意力、計画力を測定しました。

8週間後、最も大きな改善が見られたのは意思決定テストのスコアで、平均65%の向上を示しました。情報処理速度も向上しましたが、14%とやや控えめな改善でした。

これはどのようにして起こったのでしょうか? 答えは心臓活動の変化にあります。これはハートマス研究チームが長年研究してきたテーマです。1995年、同チームは感情と心臓活動の関係、およびその活動がその後どのように脳機能に影響を与えるかを調べる予備研究を行いました。

この研究では、人々が経験する感情と、心拍変動(HRV)と呼ばれる生理学的指標との間に相関があることがわかりました。HRVは、心拍の小さな変動、すなわち心拍と心拍の間隔の時間差を調べるものです。

かつては安定した心拍が健康の証とされていましたが、現在では高い変動性(高HRV)が、優れた生理的柔軟性を示すことが知られています。この柔軟性とは、心臓と神経系が、身体活動時の加速や休息時の減速など、変化する要求に効率的に適応できることを意味します。高HRVを持つ人は、身体的負荷、ストレス、環境変化によりよく対処できる傾向があります。

1995年の研究で、主任研究者のローリン・マクラティ氏と同僚らは、参加者に2つの対照的な感情状態に入るよう指示しました。怒りを覚えた出来事を思い出すことと、誰かに対する感謝の気持ちを呼び起こすことです。心臓の電気活動を分析した結果、顕著な違いが明らかになりました。怒ったときは低周波帯のみが増加し、感謝の気持ちを抱いたときは低周波と高周波の両方が増加しました。この違いが参加者のHRVに影響を与えました。
 

混沌から調和へ

1年後に研究所の研究者らが発表した別の研究では、HRVデータの分析をさらに深めました。この研究では、20人の被験者に、呼吸法と瞑想を用いて感謝、思いやり、愛などの肯定的な感情を生み出すよう依頼しました。研究者らは、エクササイズの前後数分間のHRVデータを調べました。

結果をグラフにプロットすると、劇的な変化が見られました。グラフは混沌とした状態から、はるかに滑らかで秩序だったパターンへと移行しました。このパターンは数年後に研究所の研究者らによって「調和」と定義され、感情が心拍リズムに与える肯定的な影響を反映しています。

「ストレス、フラストレーション、怒り、不安、心配を感じているとき、心拍リズムはギザギザで不規則になり、その信号が心臓から脳に送られます」と、ハートマスの主任研究者であるデボラ・ロズマン氏は『サイエンス・アンド・ノンデュアリティ』に投稿された講演で述べました。

「愛、本物の思いやり、慈悲、優しさ、感謝——心臓に結びつけるすべての性質を感じているとき、美しいサイン波、つまり下部に現れる調和したパターンが見られます。そして心の脳がそのパターンを頭の脳に送っています」

このような秩序だった信号が脳に届くと、彼女は言います。それは脳全体の同期化に寄与し、脳が最高の能力で機能できるようになります。

研究所が2009年に発表した総説論文では、研究者らは脳のアルファ波を測定し、心拍との同期を観察したと説明しています。また、心拍が正弦波パターンで安定する特定の周波数も指摘しました。さらに、特定の感情状態における脳のアルファ波と心臓活動の相関を示す追加研究もあります。

マクラティ氏と彼の同僚たちは論文の中で、調和状態では、心臓が強力なリズミック発振器として、体内の他のシステムのリズムを引き込み、それらを心臓のリズムに同期させると主張しています。言い換えれば、心臓は呼吸、血圧、そして他の脳のリズムさえも自分の周波数に「引き寄せ」、体内のシステム全体に調和的な同期を生み出すということです。マクラティ氏は、これにより同期が脳を超えて広がり、他の身体システムにも影響を及ぼし、それらが秩序だった調和的なパターンへと収束することを示していると説明しました。

研究所はすぐに、海軍要員の場合のように、心臓活動の生理学的変化について即時フィードバックを得るバイオフィードバック手法が、感情状態と生理状態をシフトさせるのに役立つことを発見しました。肯定的な感情を高める技法を通じて、人は比較的効率的に「調和」に達することができます。
 

ストレス下のパフォーマンスの限界を超えて

調和状態には多くの利点があります。健康・生理学的観点からは、高血圧患者の血圧低下や慢性疼痛の緩和に寄与することが研究で示されています。精神的レベルでも同様の効果が観察されており、産後うつに苦しむ女性や外傷後ストレス障害を抱える患者の助けとなっています。

研究所の研究者らは、調和は体内の2つの主要な神経系の相互作用から生まれると説明しています。1つは交感神経系で、ストレス時に身体を活性化し、「闘争・逃走反応」を引き起こす役割を担います。もう1つは副交感神経系で、落ち着きと回復を促進します。

ロズマン氏は、調和状態では「交感神経系と副交感神経系が同調し、その力が一緒に働いている」と説明します。すなわち、怒りやフラストレーションなどの感情を感じているときは2つのシステムに協調性がなく、互いに逆方向に心拍数を動かそうとします。一方、思いやり、優しさ、慈悲、愛、感謝などの感情を抱いているときは、2つのシステムが協調し、バランスの取れた調和的な心拍リズムを生み出します。

研究所の研究者らは、リラクゼーションと調和には重要な違いがあると説明しています。リラクゼーション状態では、体は単に「ダウンシフト」し、神経系が落ち着き、心拍が均一になり、副交感神経系の活動(休息とリラクゼーションを担う)が強まります。体は深い休息、つまり「低エネルギー状態」にあります。

一方、調和状態では、心臓と脳が同期し、調和的に働きます。私たちは落ち着きと集中力を感じつつ、活力に満ちています。体は組織化された周波数で動作し、環境に対してより良くバランスの取れた反応が可能になります。

マクラティ氏と同僚らによる驚くべき研究では、コヒーレントな心臓活動と直感力の向上とのつながりさえも示されました。ハートマスの技法を習得し、調和状態に入れることができる26人の被験者が、45枚の画像(感情を強く喚起する15枚と落ち着かせる30枚)を2回に分けて提示される実験に参加しました。一方の回では調和状態を維持するよう指示され、もう一方では通常のベースライン状態を維持するように求められました。ラウンドの順序は各参加者ごとにランダムに割り当てられ、実験中は参加者の心臓活動が継続的に記録されました。

結果、感情を強く喚起する画像が表示される前に、参加者の心拍が有意に減速することがわかりました。一方、落ち着かせる画像の前には有意な減速は観察されませんでした。言い換えれば、心臓は直感的に反応しているように見えました。感情的に強い画像を予期して心拍を減速させ、体をこれから起こることに備えているかのようでした。落ち着かせる画像が表示される前には心拍は比較的安定しており、体が直感的に「感情的に準備する必要はない」と感じ取っていたからです。

参加者が調和状態にあるとき、この直感効果はさらに明確になりました。各画像セットの前に、参加者は心臓に意識を向け、感謝や思いやりなどの肯定的な感情を短時間維持しようとしました。一部の人々(特に女性)は、将来の感情刺激に対して有意な心拍減速を示し、調和状態が直感感度を高める可能性があることを示唆しました。

「心臓は心臓から脳へ、そして前頭葉まで異なる神経信号を送っており、コンピューターが画像をランダムに選ぶ前に脳が反応していました」とロズマン氏は言います。「私たちが発見したのは、心の調和に熟練した人々は……心臓の直感的なガイダンスにより強くつながっていたということです」 

(翻訳編集 日比野真吾)

テクニオン(イスラエル工科大学)で情報システム工学を専攻し、学位を取得。科学誌に掲載される研究データの分析に15年以上携わる。現在はイスラエルに拠点を置き、『エポック・マガジン』で科学担当記者を務めている。