耳垢は、想像以上に耳を守る役割を果たしています。

耳垢は汚れではない? 耳を守る大切な働きと正しいケア

耳垢は粘り気があり、少し気持ちが悪いものです。見つけるとすぐに綿棒へ手を伸ばします。しかし医師は、この行動は逆効果だと言います。耳垢は衛生上の問題ではなく、耳に備わったセキュリティシステムなのです。

医学名をセルメンという耳垢は、単なる汚れの残り物ではありません。果たすべき役割があるのです。

「実際には、守るためにあるのです」と、テネシー州の頭頸部外科・耳鼻咽喉科医ジョン・シーバート医師はエポックタイムズに語りました。

耳垢についてあまり知られていないことの一つは、静菌性だということです。つまり細菌の繁殖を抑制する作用があると彼は言います。

耳垢は弱酸性で、外耳道の感染を防ぐ助けになります、とウォマック陸軍医療センターの耳鼻咽喉科医アンドリア・カルーソ中佐は、エポックタイムズへのメールで語りました。

耳垢のpHはおよそ5.0から7.0です。この酸性が細菌と真菌の感染を防ぎ、耳の内側の皮膚を健康に保ち、有益な微生物と有害な微生物の繊細な均衡を維持します。

さらに、耳垢は、汚れ、虫、その他耳に入ってはいけない異物など、耳の中にあってはならないものを遮断する役割も果たします。

では疑問が浮かぶかもしれません。耳垢にこれほど利益があるなら、耳掃除をする必要があるのでしょうか。

答えは、ほとんどの場合「いいえ」です。私たちの耳は自浄作用を持つようにできています。

「耳はオーブンのように、自己洗浄機能を持つべきだと、私はよく人に話します」とシーバート氏は言いました。

耳垢は外耳道の外側3分の1の皮膚にある腺から分泌され、そこで皮膚、ほこり、毛と混ざります。

外耳道の微細な毛と、話したり噛んだりするときの顎の自然な動きに合わさり、古い垢、皮膚、ごみを出口へゆっくり送ります。まるで、スイッチを入れる必要のないベルトコンベヤーのようです。

「耳垢は、本来は自然に排出されるはずです。しかし残念ながら、いつもそうなるわけではありません」と彼は言いました。

自動浄化が追いつかないこともあり、除去されるより早く耳垢が蓄積してしまうことがあります。大半の人は、耳を清潔に保つために特別な手助けを必要としません。しかし、耳垢の自浄作用に影響を与える要因がいくつかあります。
 

耳あかの種類と色

耳垢は人によって異なります。たまり方もさまざまだと、シーバート氏は言います。

「粘り気のある垢も、カリカリした垢も、噛みごたえのある垢もあります」と彼は言いました。

粘り気が大切で、厚く粘る垢は簡単には取れにくい、と付け加えました。

耳垢の種類も湿性と乾性があり、民族によって異なります。湿性はヨーロッパ系とアフリカ系に多く、一般的には乾性は東アジア出身の人に多くみられます。

耳あかの色も人によって異なり、より暗い色だと何かおかしいと思うことがあります。しかしシーバート氏は、そうではないと言います。色は診断の指標にはなりません。人によって異なり、誰もが少しずつ違うので、心配する必要はありません。
 

大きさも関係する

耳の大きさも関係しています。

外耳道が他の人よりずっと小さい人もおり、耳垢の種類と合わさって、耳が自らきれいになれるかどうか、また耳垢がたまりやすいかどうかに影響します。

外耳道が綿棒ほどの大きさであれば、耳垢をより深く押しこんでいるだけだろう、とシーバート氏は言います。一方、外耳道が少し大きく、耳掃除をしたいなら(大半の耳鼻咽喉科医は勧めない、と彼は言います)、耳の奥まで入れすぎて何かにぶつからないよう、極めて慎重にすることを勧めます。

「自分の周りに境界を作ってください。オレンジ色のコーンを自分の周りにおいて『耳掃除をしているから近づかないで』と伝えるのです」と彼は言いました。

他の人にしてもらうことは助けになることがあります。なぜならその人は自分より、何をしているかがよく理解できるからです。
 

避けるべきものと、必要なときに使うもの

綿棒は通常、人が意図するのとは正反対の効果をもたらす、とカルーソ氏は言います。綿棒は耳垢をより深く押し込み、取り除きにくくし、痛みを起こしやすくします。しかしどうしても耳掃除をしたいという衝動に駆られた場合のために、より安全な方法を紹介してくれました。「耳垢を柔らかくする点耳薬は近所の薬局で手に入ります。必要ならホホバ油などの油も、耳垢を取り除く助けになります」と彼女は言いました。

スポイトの過酸化水素も、余分な耳垢を安全に除去し、感染予防の助けになる、と彼女は言います。

市販の洗浄液やリンスも耳垢を取り出せることがあり、うまく働けば問題ではありません。耳はまた垢を作るからです、とシーバート氏は言います。問題が起きるのは、耳垢と洗浄液が耳の中に閉じ込められ、湿り気と混ざり合うときです。閉じ込められた湿気と、保護の役割を果たす耳垢が失われることが重なり、細菌の増殖を許してしまうからです。

「それによって重い感染症を引き起こし、大人でさえかなり重篤な状態に陥ることがあります」と彼は言いました。

湖や海で泳ぐときの汚れた水も感染に寄与し得ますが、ヘアドライヤーの弱で耳を乾かすと、真菌と細菌の増殖を防げます、とカルーソ氏は言います。

眠る向きさえも、耳あかのたまり方に影響します。

「耳垢は、下にして眠る側の耳に、より詰まりやすいことが分かっています」とシーバート氏は言いました。

物理的な圧と枕との接触により熱と湿気が封じ込められ、外耳道が圧迫されることで、耳垢が固まり、耳の自動浄化を妨げます。

補聴器、イヤホン、大きな音から耳を守る耳栓も、耳垢をより深く押し込みます。こうした器具を定期的に使い、聞こえの問題や他の耳の不調があるなら、外耳道が詰まっていないか医師に診てもらってください。
 

耳垢と診断の可能性

耳を清潔に保つだけでなく、特に癌の診断において診断能力を持つことが科学者によって明らかになりつつあります。

2019年の研究で、ブラジルの研究者は癌のある人とない人の耳垢を比べ、二つの群を区別できる生物学的マーカー27を特定しました。調べた対象者においては、正確度は100%でした。1000以上のサンプルの分析をする追跡調査では、この方法が癌のあらゆる段階を検出し、良性腫瘍と悪性腫瘍を区別し、さらには癌が寛解した時期を特定できることが示唆されました。
 

医師を受診すべきとき

いつ医師の診察を受けるべきか迷っているなら、耳の詰まり感や圧迫感が改善しないなら、かかりつけ医に見てもらうと良いでしょう、とシーバート氏は言います。問題があれば、耳鼻咽喉科へ紹介してもらえるでしょう。

耳の詰まりと圧迫感の原因は多く、外耳道の閉塞、液体の蓄積、副鼻腔の詰まり、高度の変化、中耳や内耳の炎症などがあります。カルーソ氏によれば、医師が調べるべき他の症状としては、治まらない強い耳の痛みと、原因不明の強い耳鳴りや難聴です。どちらも緊急事態となる可能性があります。突然の難聴は、突発性感音難聴によって引き起こされることがあります。これは、治療が可能な期間が数日から2週間ほどと非常に短い状態であり、対応が遅れると永久的な難聴につながる可能性があるため、迅速な治療が不可欠です。

「幸いなことに、経口ステロイド治療は、早急に開始すれば効果を発揮することがあります」と彼女は言いました。

感音難聴の治療には、炎症を抑えるための即時の副腎皮質ステロイド療法が含まれますが、損傷を回復させるのを最大限に高めるには、およそ2週間以内に治療を開始する必要があります。
 

最後に

耳垢は厄介なものに思えるかもしれませんが、重要な役割を果たしており、ほとんどの場合、私たちの干渉なしにその働きを任せるべきです。基本的に、耳が正常に機能していれば、耳垢は自然に除去されます。ただし耳の自力だけでは解決できない問題が発生するときもあり、そのときは耳鼻咽喉科を訪ねてください。専門医は何が起きているかを診断し、耳の洗浄が必要なら、安全に行うための道具と専門知識を持っています。

 

(翻訳編集 日比野真吾)

鍼灸医師であり、過去10年にわたって複数の出版物で健康について幅広く執筆。現在は大紀元の記者として、東洋医学、栄養学、外傷、生活習慣医学を担当。