THE EPOCH TIMES

【評論】最終ターゲットは江沢民か 混迷する中国政局の今後 後半

2012年03月25日 21時32分
周永康氏と江沢民派は、なぜ薄煕来氏を守りきれなかったのか

 江沢民氏と周永康氏は、望んで薄煕来氏を見捨てたわけではなく、守りきれなかったのだ。今年までに、中国共産党の最高指導機関で、政策を討議・決定する中共中央政治局の9人の委員の中、6人は自ら重慶市に訪れて、薄煕来氏が大々的に宣伝している「唱紅打黒」「唱紅打黒(革命ソングを歌い、マフィア組織と汚職を取り締まる)」という政治運動への支持を示した。

 その6人とは、呉邦国、賈慶林、李長春、習近平、賀国強、周永康の各氏である。しかし、王立軍事件発生後に開催された最高指導部の重要会議「両会」では、薄煕来氏を懸命に支持するのは周永康氏しかいなかった。つまり、今の情勢と力関係の均衡は変化したのだ。最も主要な原因は、胡錦濤・軍事委員会主席が昨年末から始まった軍部への調整である。

 軍のトップ3人が相次いで公に(胡氏への)忠誠を表明した。これは胡錦濤・軍事委員会主席が、すでに軍の実権をしっかりと握ったことを意味するものであり、胡錦濤氏が執政してきたこの10年間において、一度もなかった状況だ。

 江沢民氏の健康状態が芳しくないのも原因の一つであろう。実を言うと、いわゆる江沢民派も、利益と権力で結ばれた勢力の集団である。個人の道徳的な魅力が乏しい中国の最高指導者は、利益と権力を餌に人を集めるしかない。江沢民氏は、すでに高齢で余命いくばくもない。周永康氏のような少数の腹心を除いて、ほかの面々たちは皆利益に左右されて行動する。重慶市の黄奇帆・市長は、わずか数日前まで「薄煕来氏と私は水魚の交わりである」と、その親密ぶりをアピールしていたのに、薄煕来氏が解任されるや否や、井戸に落ちた者に石を投げ込むように、薄氏の隠された裏側を証言するなどした。私が思うに、黄奇帆・市長の事例は、まさに江沢民派に属する面々の現状なのである。

 温家宝・首相の決心

 この薄煕来氏を解任する権力闘争において、温家宝・首相が非常に重要な役割を果たしたことを、私たちは目にした。そして温氏は、「両会」閉幕後の記者会見で、その決心も示した。

 外部には、こんな説がある。温家宝・首相は最優秀男優であり、パフォーマンスが上手いと揶揄する説である。温首相が度々政治改革を呼びかけ、公の場で熱い涙を流すのも、中共政権で穏健派の役目を演じているだけというのだ。その目的は国民を惑わして、中共が改革を行うという幻想を、人々に抱かせるためだと指摘されている。だが、私は全くこのような見解には同意しない。

 その理由は二つある。一つは、温家宝・首相の個人の気質が、中共の最高指導者の中では別類であるということである。彼の談話の多くには、中共幹部の特有の無駄話や決まり文句がない上、その表現には詩や書が豊かに含まれ、伝統文化の素養が配されている。そして多くの発言は、現代の普遍的価値と観念に適したものである。もう一つは、温家宝・首相はこれまで政治改革の必要性を繰り返し強調してきたのだが、実際にはその言葉のように実行に移せず、実現できなかったため、人々にパフォーマンスの上手い役者と誤解されたということである。

 しかし私は、違う角度から、異なる結論を見出せた。温首相の言動と、温首相が遭遇した事象から、中共体制の邪悪さと救いようのない体質が露呈されたということである。多くの人は中共と中共のメンバーを一体として論じている。中共が邪悪であれば、その全てのメンバーも悪人である、という見方である。この種の認識は間違っている。中共内部にある全ての人が悪い人ではないのだが、中共の邪悪な体質と環境が、善人を悪人に変えてしまうのだ。

 中共の最高指導部にも、良識を持つ善い人、民衆に奉仕しようとする人がいた。例えば、故・趙紫陽元総書記や、故・胡耀邦元総書記、また現職の温家宝・首相などである。しかし、中共の独裁体制下において、党の利益と民衆の利益は根本から対立しているため、結局、これらの善い人も悲運な結末を迎える。

 温家宝・首相の言動から私が見たのは、本来は国民のために事を成そうとする人でありながら、この体制下ではその願いを実現できない虚しさ、無力感、絶望なのである。それは、良識がまだ残されている人間が、中共体制下で人間性を圧殺される苦痛と必死の抵抗である。温家宝・首相が「両会」閉幕後の記者会見で交わした誓いと決心から見て、先述したような私の認識の裏づけは取れたと思う。温家宝・首相を批判して、彼を「最優秀男優」などと言う少数の人は、別の狙いがあるのであろう。

結論

  今回の中共内部の権力闘争をよく分析してみると、王立軍事件が引き金となって崩壊に向かっているように見えるのだが、実際には、もとよりそうなる必然性があったのである。今回の制御不能(王立軍の米領事館駆け込み)は、中共内部の対立が爆発した現れに他ならない。そして、崩壊に直面している中共の現状をもたらした原因は、江沢民・元総書記が作ったのだ。おしなべて、共産党独裁政権の維持には、最高権力を一身に握る究極的な独裁者が必要とされる。

 しかし江沢民・元総書記は、法輪功への弾圧を発動し、そして、その弾圧を継続するため、これまでになかった集団支配の中央権力体制を構築した。最高権力を一身に握る究極な独裁者がいない独裁政権は、短期的に統治を維持できたとしても、長くは続かない。その点から見ると、まさに江沢民・元総書記自身が、内側から、中国共産党を滅ぼしたことになる。

 したがって、今の権力闘争がどんなに激しくても、歴史的視点から見ると、最終的には必ず独裁政権の崩壊で幕を閉じるのだ。この権力闘争が導いた結果を客観的に見るならば、中共内部の様々な暗黒部分が暴露されることにより、民衆が中共政権の邪悪さを明確に認識できるとともに、その精神において、民衆が中共のコントロールから脱却するということである。

(3月26日、タイトル一部変更いたしました)

 (翻訳・叶子)


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