春を見つけた娘 

【大紀元日本6月26日】久しぶりに、女流画家である友人と会った。近々個展を開く彼女はアトリエにこもりっきりだったが、彼女は自分の作品の中でどれか一つ、気に入った絵を選んでほしいと言った。私は絵の専門知識など全くなかったが、彼女の作品の中に描かれていた人物像に興味を覚えた。

ひとつひとつの作品を眺めていると、ある作品に目が止まった。絵の中には、顔に深いしわが刻まれ、物寂しく虚ろな眼差しをした一人の老人が樹の下に座っている。「この絵は...」と言いかけると友人は、「ああ、それはなの。3年前にここを訪ねて来た時に、適当に描いたものなのよ。それよりも、他の新作を見てちょうだい」と言いながら、「父」の絵を引き抜いて、選ばれなかった沢山の絵の中に投げ入れた。

私は「父」の絵が投げ捨てられたのを見てハッとした。彼女は幼い時に母親を失い、父親が男手一つで彼女を育て、画家になりたいという夢が実現するよう大学まで行かせてくれた話を、以前彼女から聞いたことがあったからだ。現在、成功を収めた彼女はいとも簡単に「父」を忘れ去ろうとしている・・・私は急に寂しい思いに駆られた。

帰りがけに、彼女はどうしても作品に対する私の感想を聞きたいと言った。私は「父」の絵を拾いあげ、「私ならこの絵を選ぶわ。理由は、この人物があなたのお父さんだから。あなたは画家として描いたのではなく、一人のとして、娘の純粋な気持ちで描いたものだからよ」と彼女に答えた。

3ヶ月後、彼女から絵画展の招待状が届いた。広い会場の中に、「父」の絵が私の目に映った。絵の向こうから、彼女が父親を支えて現れた。私のところに近づくと、「父と一緒に住もうと思って、田舎から連れてきたの。だからこれからは、もう少し父の絵を描こうと思っているの」と彼女は言った。そのそばで、彼女の父は慈しむように娘を見つめ、優しく微笑んだ。

会場を後にする私を見送りながら彼女は言った。「ここ数年間、私は目先の利益にとらわれ、激しい競争の中で自分の安定した地位を築く事に没頭してしまい、沢山の美しいものを忘れてしまっていたわ」

「あなたのお蔭で、真冬に埋もれていた自分が、春を見つけることができた。本当にありがとう」と感謝の言葉を述べた。

私は、「お礼は私にではなくて、お父さんにしてあげて」と答えた。

(翻訳編集・豊山)