ボランティア教師のドイツ人、当局からのお咎めでブログ閉鎖か=中国

【大紀元日本7月2日】中国で最も貧しい地区の一つである広西省河池市東蘭県で10年間、無償で小学校の教師を務めてきたドイツ人のルアンク(Luanke)氏が最近、自身のブログを閉鎖した。貧しい子供たちへの献身的な活動がテレビで話題となり、中国の国民から「聖人」「現代版のベチューン(Bethune)」(※)と称されるほど有名となった彼が、突然ブログを閉鎖した理由は何だったのか。

ルアンク氏は1968年、ドイツのハンブルクで生まれた。転機が訪れたのは90年、3カ月にわたる中国旅行だった。彼は広西こそ自分の夢を叶える聖地であると考え、99年からボランティアで、共働きの両親を持つ子供たちが多く通う小学校の教師となった。

彼が授業で取り入れているのは、ドイツで開発されたシュタイナー教育(※)。この教育法の一番の特徴は、社会への適応能力の育成であり、シュタイナー教育を受けた学生は、社会での生活能力が優れていると言われている。ルアンク氏自身もこのシュタイナー教育を受けており、貧しくて生活環境の悪い中国の田舎でも、子供たちと楽しく暮らしている。

村の子供たちも、すっかりルアンク氏になついている。彼の体にぶらさがったり、顔に触れたり鼻を引っ張ったり、彼らはとても親密だ。ルアンク氏は、「自分のすべてを子供たちに捧げている。もし彼らから離されたら僕のすべてがなくなってしまう」と村の子供たちとの深い結びつきを語った。しかし、純粋な理想と夢を持って貧しい中国人の子供たちを黙々と支えてきたこの10年間は、彼にとって順風満帆だったわけではない。

97年、中国南寧の身体障害者の学校でドイツ語を教えていた時、「就業証明書」を持っていなかったとして公安局から3千元の罰金を科された。後に「就業証明書」の申請を提出したが受理されず、その時は帰国を余儀なくされた。99年に事務所を創立し、教育事業に従事する権利を獲得。しかし、06年に提出した中国国籍への加入申請は受理されなかった。それは、「国家1級機関で4年以上働いた者、もしくは中国に特別に貢献をした外国人が中国籍に加入することができる」という条件を満たしてないという理由だった。

テレビに出演してからは、ますます当局からの干渉を受けるようになった。地元の公安庁からは「教師の資格を有していない」とのお咎めを受け、ボランティア活動は「違法行為」と警告された。これは、「メディアで中国の教育問題や共働き家庭の子供の実態を持ち出さないでほしい」という当局からのメッセージだった。従わなければ、関連部門が彼の「違法行為」を追及し、最終的には国外追放があることも分かっていた。

彼は、「・・・社会の注目は、すでに私が受け入れられる範囲を超えている。私にとって、社会的な反応がもたらした結果や責任、圧力をすべて引き受けることはとても辛く苦しい。メディアの圧力を避けるためには、人々に私のことを知らせず、このブログを閉鎖するほかはない・・・」という言葉を残し、ブログを閉鎖した。

多くを語らない彼の身の上を案じる声がネットに集まり、中国政府によって彼は国外追放されたのだという説も浮上した。中国政府に対する批判がネットの掲示板に集中した。

ドイツにいる両親が仕送りする年間5千元(約6万5千円)の生活費のほとんどを、貧しい児童への援助や本の印刷費などに充て、自身の生活費はわずか100元あまり(約千5百円)というルアンク氏。無償で農作業や道の整備などを手伝う姿に、心を打たれた中国人も多い。

現地の人々と道を修理するルアンク氏(ネット写真)

なぜ、彼は中国で貧しい子供たちのために教師となることを許されないのか?だれが彼を許さないのか?彼のボランティア活動の報道により、中国西部地区の貧しい生活状況が暴露されたことがいけなかったのか?ルアンク氏の活動が中国社会へ投げかけた波紋は、大きかったようだ。

あるネットユーザーは掲示板で、「極めて封鎖された環境の中で、その平静を打ち破るあらゆる反対意見や異議は歓迎されない。ルアンク氏は、正にその異議者の一人である」と書き込んだ。

※Norman Bethune(ノーマン・べチューン、1890-1939):カナダ人の医師。中国の延安で医療活動に従事し、貧困撲滅を訴えた。

※シュタイナー教育:オーストリアのルドルフ・シュタイナーが考案した教育法。就学前は身体を育て、想像力を養う時期であるため、その時期には文字を習わせない、テレビを見せないなど独特の理念がある。

(翻訳編集・柳小明)
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