アングル:ブレグジット「後戻り可能」、離脱条項起草者が明言

Guy Faulconbridge and Andrew MacAskill

[ロンドン 10日 ロイター] – メイ英首相は有権者を間違った方向に導くのをやめ、英国が欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)交渉の破棄を一方的に決断すれば、ブレグジットは回避可能になると認めるべきだと、リスボン条約第50条の起草に関わったジョン・カー元英駐EU大使は10日語った。

今年3月29日に同条約第50条を発動し、EUに離脱すると正式に通知したメイ首相は、ブレグジットを阻止しようとする議会内のいかなる試みも許さないと明言している。

50条を発動して、メイ首相は2年間の離脱プロセスを始動させた。これまでのところ、離脱交渉は好調とは言えない。賭けに出たメイ首相は6月、解散総選挙を実施したが、自身が率いる与党保守党は過半数を割り込んだ。

「離脱交渉が進む間、英国はまだEUの一員だ。和解は可能だ」と、1990年から95年まで英EU大使を務めたカー氏はロンドンで行ったスピーチで強調した。

「離脱プロセスのどの段階でも変更はできる」とし、リスボン条約第50条の法的義務は英国に誤って伝えられていたと同氏は指摘。「英国民は誤って導かれるべきではない、ということを知る権利がある」と述べた。

50条を発動した日、メイ首相は英議会で「後戻りすることはない」と述べ、10日には英国は2019年3月29日のグリニッジ標準時(GMT)午後11時にEUを離脱すると発表した。

2016年6月の国民投票では、有権者の51.9%がEUからの離脱を支持した一方、48.1%は残留を望んだ。

離脱派は、離脱プロセスを停止させることは民主主義に反すると主張。一方の残留派は、英国はどのような離脱交渉の結果に対しても最終的な判断を下す権利があるとしている。

もともとは離脱に反対する立場を取っていたメイ氏は、国民投票後の政治的混乱のさなかに首相に就任した。同氏は先月、英国は50条の発動を無効にしないと語った。

<後戻りしない>

 

だが国民投票が実施されてから、マクロン仏大統領やブレア元英首相、米著名投資家のジョージ・ソロス氏といったブレグジットに反対する人たちは、英国は考えを変え、同国経済にもたらすであろう壊滅的影響を避けることが可能だと提言している。

ブレグジットに関する各世論調査ではこれまでのところ、心変わりの兆しはほとんど見られない。メイ首相率いる保守党も野党労働党も、1973年に加盟したEUからの離脱を今では明確に支持している。

離脱派は新たに国民投票を実施したりブレグジットを阻止したりするいかなる試みも、世界第5位の経済大国である英国を急激に危機に陥らせることになると、繰り返し主張している。

「再び国民投票を行うことは、英国を未知の領域に向かわせ、われわれの民主主義にとても深刻な結果をもたらす可能性がある」と、先の国民投票で2つある離脱キャンペーン団体の1つの設立に関わったリチャード・タイス氏は指摘した。

しかし離脱プロセスは、英国の裁判所で数多くの訴訟に直面している。その多くはいまだ答えのない「50条を撤回することは可能か」という疑問に集中している。

256語からなるこの条項は、いったんプロセスが発動されたら無効にできるかについては規定していない。つまり、もし弁護士が明確化を求めた場合、それはEUの最高裁判所にあたる欧州司法裁判所(ECJ)の判断に委ねられることになる。

2002─03年にリスボン条約第50条を起草した欧州憲法制定会議の事務局長を務めたカー氏は、英国内における同条を巡る論争は不正確に解釈されており、メイ首相による50条発動の通知は無効にできることは明らかだと語った。

ブレグジットの合法性への関心は非常に高く、この問題に関するメイ首相の非公表の法律答申を公表するよう、著名な弁護士であるジェシカ・シモル氏が正式に求めている。

「英国は、2019年3月29日までいつでも離脱を取りやめることが基本的には可能だ」と、シモル氏は先月ロイターに語った。

「50条を無効にできるなら、政府が取引に失敗したり、取引結果がひどい内容だったり、あるいは国民が望まなかったりした場合、議会には必要とあれば国を救済する権限がある」

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

 

 11月10日、メイ英首相は有権者を間違った方向に導くのをやめ、英国がEUからの離脱(ブレグジット)交渉の破棄を一方的に決断すれば、ブレグジットは回避可能になると認めるべきだと、リスボン条約第50条の起草に関わったジョン・カー元英駐EU大使は語った。写真はブレグジットに抗議する人。ブリュッセルで10月撮影(2017年 ロイター/Francois Lenoir)

 

 11月10日、メイ英首相は有権者を間違った方向に導くのをやめ、英国がEUからの離脱(ブレグジット)交渉の破棄を一方的に決断すれば、ブレグジットは回避可能になると認めるべきだと、リスボン条約第50条の起草に関わったジョン・カー元英駐EU大使は語った。写真はブレグジットに抗議する人。ブリュッセルで10月撮影(2017年 ロイター/Francois Lenoir)
関連記事
中華民国の新政権就任式に向け、台湾日本関係協会の陳志任副秘書長は7日、外交部の定例記者会見で、20日に行われる頼清徳次期総統の就任式に、現時点では各党・会派から37名の日本国会議員が37人が出席する予定だと発表した。過去最多の人数について「日本側は新政権をとても重視している」と歓迎の意を示した。
5月6日、米国ホワイトハウスは、ロシアによる法輪功学習者の逮捕に対して、再び声を上げ、中共とロシアの関係の強化に懸念を表明した。 中国での法輪功学習者に対する迫害は、生きたままの臓器収奪を含めてすでに有名だが、先週、ロシア警察が突然4名の法輪功学習者を逮捕し、その中の46歳のナタリア・ミネンコワさんが2ヶ月間の拘留を受けたことが判明した。
ゴールデンウィーク中に外国人労働者の受け入れ拡大に向けた法改正の審議が進む。識者は「実質移民解禁ではないか」と危惧する。こうしたなか、いわゆる移民政策推進に一石を投じるオンライン署名が行われている。半年間で7500筆もの署名を集め、コメントも2300件を上回る。
現在、法廷はトランプ前大統領に対し、4月15日にニューヨークで始まった刑事裁判について沈黙しろと命じた。これに対して一部の弁護士は、この命令が違憲であり、言論の自由の侵害であるとしている。
5月6日、フランスのマクロン大統領と欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長はパリで中国共産党党首の習近平と会談し、貿易不均衡とウクライナ戦争に関する懸念を強く伝えた。