焦点:米エクソン、貿易摩擦よそに中国向けLNGに大きな賭け

[ヒューストン/シンガポール 17日 ロイター] – 米中貿易摩擦が激化し、大半の米国企業は制裁関税の影響を避けようと中国以外の地域の事業に目を向けつつある。しかし石油大手エクソンモービル<XOM.N>は、同国で天然ガス需要が急拡大するとの見通しに賭け、液化天然ガス(LNG)を増産して同国内に初の貯蔵施設を建設し、販売先開拓に乗り出そうとしている。

エクソンの戦略は2段階に分かれる。関係者は、まずはパプアニューギニアやモザンビークなどで生産拡大態勢を築き、次いで初の輸入・貯蔵の拠点を中国に設けて需要を喚起する、と説明した。

同社のある幹部は、こうした取り組みによって「何十年にもわたって大量のLNGの着実な販路を確保できる」と指摘。最優先事項の1つは、中国で同社の「顧客リスト」を作成できるようにすることだという。

この幹部は「中国の天然ガス需要は本当に急増しており、輸入は足元で年10%のペースで伸びている。政府のガス化計画や、石油化学セクターを含む製造業の需要が急ピッチで膨らんでいることが理由だ」と話す。

エクソンが何年もかけて策定したLNG戦略は、さらなるメリットももたらした。パプアニューギニアとモザンビークの大規模LNGプロジェクトは、中国が米国への対抗措置として発動した輸入LNGへの10%の追加関税の対象外となり、貿易摩擦の影響を免れるからだ。

専門家によると、中国がこれらのプロジェクトを制裁関税の対象から外したのは、以前に戦略的とみなした投資はそれが外資であっても引き続き容認する姿勢の表れだという。

結果的にエクソンのパプアニューギニアとモザンビークのLNGは、中国の追加関税が課される米国のライバルに対してコスト面で優位に立てる。

中国向けLNG事業推進は、ダレン・ウッズ最高経営責任者(CEO)が手掛ける収益テコ入れ策の一環として決定された。

先月の中国国営メディアの報道によれば、ウッズ氏は李克強首相と何度か面会したもよう。エクソンは、広東省におけるLNGターミナルと大規模な化学プロジェクトについて地元当局の承認を得たことも明らかにしている。

ウッズ氏は昨年のCEO就任以来、エクソンがより積極的にリスクを背負う姿勢を打ち出してきた。

折しも中国は来年、世界最大のLNG輸入国になり、昨年3810万トンだった輸入量は2020年までに7割増える、というのがSIAエナジーの試算だ。

エクソンは公式にはLNG輸入ターミナルのパートナーを発表していないが、広東粤電集団がウェブサイトでこのプロジェクトに参加する方針を示している。

中国は昨年、大気汚染対策として発電や家庭用暖房の燃料を石炭から天然ガスに切り替える計画を始動させ、14年から昨年までの市況低迷に苦しんでいたLNG業界に新たな活力をもたらした。

今年に入ってからはLNG価格が上昇していることもあり、投資を拡大している大手生産者はエクソンに限らない。例えばロイヤル・ダッチ・シェル<RDSa.AS>は今月、主に中国に輸出する狙いでカナダのLNG開発プロジェクトにゴーサインを出した。

エクソンなどの生産者は、LNG市場で買い手が長期契約からスポット契約に軌道修正している流れにも対応しようとしている。こうした変化は、中国の輸入業者がより柔軟な契約を要求していることなどに起因する。そのため生産者側は新たな取引を模索したり、スポット販売を促進する上で輸入ターミナルにより大きな役割を任せざるを得なくなっている。

(Gary McWilliams、Henning Gloystein記者)

 10月17日、米石油大手エクソンモービルは、中国で天然ガス需要が急拡大するとの見通しに賭け、液化天然ガス(LNG)を増産して同国内に初の貯蔵施設を建設し、販売先開拓に乗り出そうとしている。写真は、パプアニューギニアにある同社施設。3月撮影。同社提供(2018年 ロイター)
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