アングル:笛吹けど踊らず、進まぬ中国の中小企業向け融資促進策

[24日 ロイター] – 中国政府は、過去何十年ぶりかの大幅な減速局面に入った経済を支えるため、中小企業向けに積極的に融資するよう銀行に促している。しかし銀行側は融資に消極的で、南部の工業地帯の輸出企業やメーカーなどは債務返済に青息吐息の状態だ。

複数のバンカーはロイターに対して、いくら政府からせかされても中小企業に融資する意欲は乏しいと話した。理由として(1)経済の先行き不透明感(2)米中貿易摩擦(3)当局が進めてきた金融システムのリスク圧縮の取り組みへの対応──を挙げている。

このため、中小が多い民間企業セクターへの貸出資金の流れは細り、需要減退の影響を和らげるために政府が打ち出した経済対策の効果が減殺されつつある。

中国のメーカーの一大拠点となっている広東省東莞市では、一部の中小企業が事業運営と資金繰りの難しさから海外への生産移転に動き始めた。機械類を入れる紙製包装箱を生産している広東力順源智能自動化有限公司のLi Jiajun最高財務責任者(CFO)は「最近われわれがミーティングでいつも一番話題にするのは、ベトナムに移るべきかどうかだ。多くの顧客は向こうに行ってしまった」と述べた。

同社は第2・四半期に4つの銀行のうち2つから取引を打ち切られ、得られる与信枠が1000万元(約1億5700万円)に半減してしまった。CFOによると、取引を解消した2行はいずれも中堅クラスで、1行は上半期の経済環境に基づく融資基準を厳格化したと説明し、もう1行からは不良債権増加で新規融資の承認を禁止されたと告げられた。

結果的に同社はおよそ2000万元相当の注文の処理が遅れ、40%の人員削減と株式売却による資金調達に踏み切らざるを得なくなった。「政府の掲げる政策は依然としてきちんと実行されていない部分がある。これまで私はそうした政策の大きな恩恵を享受していない」と実情を明らかにした。

<とばっちり>

中国では銀行業界で支配的な力を持つ政府系銀行からの法人向け融資は、その大半が国有企業セクターへの流れる構図が長らく続いてきた。だから中小企業の借り手は、影の銀行(シャドーバンク)と呼ばれるノンバンクに依存してきたのだが、頼みのノンバンクも金融リスク圧縮政策のあおりで圧迫されている。

政府系で同国第2位の規模を持つ中国建設銀行(CCB)<0939.HK><601939.SS>の東莞支店バイスプレジデント、Bao Jiehan氏はロイターに「(中小企業向け融資は)以前に比べて増えている。ただ借り入れを必要としている多くの企業にサービスできているというのは程遠い」と述べた。

ある銀行規制当局者は、税金を支払っている中国企業のうち銀行融資を受けているのはまだ26%にすぎず、銀行にとって新規融資の「多大な余地」が残されているとの見方を示した。

それでもバンカーや企業に取材すると、特に貿易摩擦の逆風にさらされている輸出企業の資金繰りは厳しい。銀行が融資審査を引き締め、より厳しいリスク管理態勢を導入しているからだ。

広東省に拠点を置き、アフリカにエアコンや自動車などを輸出するある企業の会長は、2017年に習近平国家主席がデレバレッジ(債務圧縮)を通じて金融リスクを抑えよと号令して以降、取引銀行の同社向け融資枠は徐々に減って半分程度の3000万元になってしまったと語る。

同社はこれまでより多くの融資を確保しようと努力してきたものの、銀行が過大な担保差し入れを求めたり、ノンバンクの多くが事業をたたんだため、うまくいっていない。会長は「デレバレッジは金融システムを対象としたものだが、われわれのような企業はそのとばっちりを受けている」と嘆いた。

東莞市のある企業は、1000万元の融資枠のほかにオフィスビルを担保に500万元の借り入れを目指している。ただ取引銀行は、ビルの評価額の50%しか融資してくれそうにない。これは貿易摩擦に苦しむ輸出企業に対して銀行がリスク管理を強化した結果だ。

同社の会長は地元銀行から融資枠を止められたときの言葉を振り返り、「一部の銀行はもはや貿易を手掛けている企業とは取引自体したがらない」と述べた。

(Shu Zhang記者)

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