不眠症にさようなら

何かと忙しい現代社会。身も心もストレスに晒され不眠症に悩む人が少なくありません。不眠には寝つきが悪いタイプや途中覚醒、再入眠困難などのタイプがあります。不眠症の人は一般的に疲労感が取れない場合が多いのです。

 不眠の原因はいろいろあります。多くの場合は精神的なストレスに関わります。その他に、カフェインやアルコールの過剰摂取、また身体の痛みや不快感なども不眠の原因になります。薬を常用する人もいますが、根本的な解決にはなりません。不眠の原因を見つけて、それを取り除くことが重要です。

(Thomas Lohnes/AFP/Getty Images)

漢方医学の診方

漢方医学では、不眠症は臓腑の陰陽のバランスが崩れることによって現れた症状だと考えてられています。陰陽のバランスの崩れには、いろいろなタイプがありますが、主に心臓・肝臓・腎臓・脾臓と関係があります。以下 実例を挙げて説明します。

症例1.

スーザンは40歳。寝つきが悪く、いつも夜中の2時に目覚め、再び寝つくのに時間がかかるタイプでした。彼女はそのほかにも偏頭痛や体中の痛み・胸焼け・月経前症候群などがあり、イライラ感や長期にわたる口の苦みなども訴えていました。漢方医学から診ると、彼女は肝気の鬱滞により生じた熱が心臓と肝臓に影響していました。彼女はおよそ30回の治療を受け、漢方を3か月ほど服用した後、ぐっすり眠れるようになりました。

症例2.

メリーは50歳。更年期を迎えた頃に不眠症になりました。腰痛があり、激しい動悸を感じる場合もあります。メリーは典型的な「腎陰不足・心火上炎」のパタ-ンであり、つまり腎の水が足りないから心の火を抑えきれず、その火が上へ燃え広がっていたのです。メリーには鍼治療を施して腎臓の陰を補い、心臓の熱を取り除きました。その結果、睡眠の質が良くなり精神状態も安定し、のぼせや寝汗もなくなりました。

症例3.

ジョンは35歳。仕事のストレスが多く、残業は深夜や週末に及ぶこともありました。仕事や家族に関する悩みを抱え、寝つきが悪く夜中に何度も目が覚めました。筋肉痛があり、太り気味でなかなか痩せられません。また顔色は悪く、いつも疲れ気味で頭がすっきりせず、動悸もありました。ジョンの症状から見れば、漢方医学の「心脾両虚」の証に属します。つまり脾臓の気が弱く、更に心臓の血が足りない病態です。私は彼に漢方薬の投与と共に鍼治療を施し、脾臓の気と心臓の血を養うことにしました。更に彼自身は食生活や労働環境の改善に心がけ、ともに努力した結果、睡眠状況はすっかり良くなりました。

 不眠症は、身体のバランスが崩れているというサインです。不眠症を解消するには、身体のバランスを取り戻し、根本から解決することが重要です。

(中医学博士・ヤンジンダン/ 翻訳編集・郭丹丹)