米モデルナのコロナワクチン、有効率94.5% 近く緊急使用申請

[16日 ロイター] – バイオ医薬大手の米モデルナ<MRNA.O>は16日、新型コロナウイルス感染症ワクチンの後期臨床試験(治験)で94.5%の効果が確認されたとする暫定結果を発表した。

米製薬大手ファイザー<PFE.N>も先週、開発中のワクチンの有効率が90%を超えたと発表しており、安全性が確認され規制当局の承認が得られれば、米国では12月中にも2種類のワクチンの緊急使用が始まり、年内に最大6000万回分のワクチンが利用可能になる可能性が出てきた。来年には10億回分を超えるワクチンが米国内で供給される可能性がある。

モデルナが開発するワクチンは、ファイザーが独ビオンテック<BNTX.O>と共同で開発するワクチンと同様、メッセンジャーRNA(mRNA)技術に基づくもの。遺伝子を人工的に合成するため、短期間で大量のワクチンを製造できる利点がある。

モデルナは3万人の治験参加者の半数にワクチン、半数にプラセボ(偽薬)を接種。接種は28日間空けて2回行われた。その結果、全体で95人が新型ウイルス感染症を発症したが、ワクチンの接種を受けた治験参加者の中で発症したのは5人にとどまった。また、発症した95人のうち11人が重症になったが、この11人全員がプラセボの投与を受けていた。

エディンバラ大学の免疫学・感染症学教授、エレノア・ライリー氏は「効果的なワクチンの供給元が複数あれば、世界的な供給量が増えるだろう。運が良ければ2021年にもわれわれ全員が通常の生活に戻ることができる」と述べた。

米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は「ワクチンはトンネルの先にある光だ」とした上で、米国民に対し警戒を解かず、手洗いを継続し、人混みを避け、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)を保つよう求めた。

モデルナは来週あたりにも米当局に承認を申請する十分な安全性を巡るデータがそろうとしており、向こう数週間で緊急使用許可(EUA)を申請できる可能性があるとしている。

モデルナのホーグ社長は「EUAが得られれば、米政府の新型コロナワクチン開発促進策『ワープ・スピード作戦』を通じて数時間以内に出荷する用意があり、すぐに供給を開始できる」と指摘。21年には需要に応じて国内外の製造拠点に分けて5億─10億回分のワクチンを生産する方針を示した。

ワクチン生産を巡りモデルナと提携しているスイスの製薬会社ロンザ・グループ<LONN.S>はスイスと米国で年間4億回分のワクチン原料を製造することが可能と発表した。

新型ウイルス感染症ワクチンを巡っては輸送方法が懸念されているが、モデルナのワクチンは通常の冷蔵庫の庫内の温度である2─8度で30日間の保存が可能。マイナス20度では最大6カ月の保存が可能になる。ファイザーのワクチンはマイナス70度と、超低温での保存が必要。

「ワープ・スピード作戦」のワクチン担当責任者、マシュ―・ヘップバーン氏は、モデルナのワクチンについて、通常の冷蔵保存が可能なことから、遠隔地域などへ容易に配布できると指摘。「同ワクチンの安定性に関する試験は現在も継続しており、長期試験が完了すればさらなる安定化も期待でき、慎重ながら楽観的に考えている」と述べた。  

モデルナはまた、欧州など他の地域での承認に向けデータを使用すると発表。欧州の保健当局はこの日、モデルナのコロナワクチンについて、試験データを順次審査する「ローリングレビュー(逐次審査)」を開始したと明らかにした。

ロイターが入手した欧州連合(EU)の内部資料によると、EUはワクチン供給を巡り少なくとも7月からモデルナと協議している。

ある関係者は、EU側がワクチン数百万本を1本25ドル以下の価格で購入できるよう、モデルナと交渉を進めているとした。

モデルナからのコメントは得られていない。米政府は8月、1本15ドルで1億本のワクチンを購入する契約をモデルナと締結。それ以前に政府は開発資金として10億ドルをモデルナに提供しており、政府が支払う1本分のワクチン価格は総額で25ドルとなる。

英国のハンコック保健相は、モデルナのワクチン500万回分を確保したと表明。英国はこれまでにファイザーを含む6つの供給源から合計3億5000万回分のワクチンを確保している。

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、モデルナの発表を歓迎するとしながらも、まだ多くの疑問が残っているとし、慢心してはならないと指摘。「新型ウイルス感染症ワクチンを巡る勇気付けられるニュースが続いているが、WHOは楽観しながらも慎重な姿勢を崩していない。現時点では、特に欧州と米国での感染拡大を著しく懸念している」と述べた。

*内容を追加しました。

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