【紀元曙光】2020年12月3日

中国明代に『笑府』という一書がある。
▼民間の笑い話である。その選者は手元の岩波文庫では明末の馮夢竜(ふうぼうりゅう)となっているが、各話の作者は実際のところはっきりしない。文学性はほとんどないが、当時の庶民の赤裸々な生活を知るには、どこのページを開いても街の喧騒が聞こえてくるようで興味深い。
▼『笑府』のなかに、日本の古典落語にもなった「まんじゅうこわい」がある。まんじゅうを怖がる奇妙な男をからかってやろうと思い、饅頭店の主人は、その怖がるものを山ほど持ってきた。ところが男は、まんじゅうを喜んで食べてしまった。腹が減っていて、演技をしたのだ。
▼基本的なストーリーは、最後に「お茶が一杯ほしい」というオチまで日本の落語と同じだが、元ネタの饅頭(マントウ)は、和菓子のような甘味物ではなく、中国では主食にあたる食物である。小欄の筆者も、はるか昔の留学時代に毎朝食べていた。実に懐かしい。
▼饅頭の話で終わりたいが、そうもいかない。少し前の11月24日から25日、中国の王毅外相が来日して、東シナ海の日本領である島嶼について「中国の領土だ」と一節ぶって帰っていった。日本の外務大臣の弱腰ぶりはさておき、日本語もうまい王毅さんの、あの異様な言動の背景は何であるか。
▼日本国民の反感をかうことは目に見えている。あれは中国国内向けの、必死の演技であろう。日本の領土であるからこそ、それを奪うために、中共は多数の工作船を入れてくる。そうした自己矛盾以前に、中共そのものが、もう長くない。まことに愚かな演技である。