【医学古今】

妊娠中の鍼灸治療

妊娠中は胎児への影響を配慮し、多くの化学薬品の使用を控えることになります。しかしだからと言って、妊娠中に発生する様々な症状をただ我慢するだけでは、妊婦は大変苦しいでしょう。そういった時こそ、漢方や鍼灸等の治療法を活用すれば良いと思います。

鍼灸治療は非常に安全な方法です。鍼と灸の刺激だけで様々な症状を改善することができるため、服薬による副作用の心配が全くありません。

妊娠中の肩こり、頚腕症候群、つわり、腰痛、肋間神経痛、下肢浮腫、頭痛、倦怠感、逆子などの症例を今までに治療したことがありますが、いずれも良い効果が得られました。症状の緩和のみならず、妊娠中に継続して鍼灸治療を受けている方は安産の傾向も見られるのです。

妊娠中は「肝脾不足、気血両虚」の症状が出現しやすく、時に肝気鬱滞の状態も見られます。故に厥陰肝経と太陰脾経のツボを中心に取穴しますが、表裏関係がある少陽胆経と陽明胃経のツボを合わせる場合も少なくありません。ただ、下腹部のツボや合谷、三陰交などの子宮の収縮を促すツボは控えます。

(漢方医師・甄 立学)