欧州諸国、子どもへのコロナワクチン接種のリスクと利点を検証

[チューリヒ/パリ 25日 ロイター] – 欧州諸国は、子どもへの新型コロナウイルスワクチンの接種の是非やその時期について決めかねている。安全性を巡る懸念や供給面の問題、感染が深刻な地域に供給を回すべきとの声など、リスクと利点の検証を行っている。

16歳以上を対象とした欧州のワクチン接種は緩慢なスタートとなったが、足元では順調に進んでいる。子どもは重症化のリスクが比較的低いものの、他者にうつすリスクはあることから、接種対象に加えれば流行抑制につながる可能性がある。

それでも欧州各国の保健当局者の多くは、子どもの重症化リスクの低さと社会全体の利益について検討を続けていると話す。

ノルウェー公衆衛生当局の感染対策責任者はロイターに対し「子どもや若年者は成人と比べてワクチン接種で個人的に得られる恩恵は小さい」と述べた。一方で「集団免疫獲得のための接種という面もある」とし、「(感染)抑え込みのために子どもの接種を勧告すべきだろうか」と問いかけた。

欧州医薬品庁(EMA)は米ファイザーと独ビオンテックが共同開発したワクチンの12─15歳への接種について審査中で、米モデルナは6月にも対象拡大を申請する方針だ。

フランス政府の科学諮問委員会に近い筋がロイターに語ったところによると、同委員会では6月から16─18歳、9月からさらに年齢の低い子どもに接種する案など複数のシナリオを検討している。

一方、イタリアは7月にも子どもへの接種を開始する可能性があるが、医師や弁護士のグループが長期的な安全性を示すデータが不足しているとして保留を求めている。

米疾病対策センター(CDC)の諮問委員会は今月、ワクチン接種を受けた若者の間でまれに心筋炎を発症するケースが出ているとし、さらに調査が必要だとの認識を示している。

成人の13%が2回の接種を終えたドイツでは、6月半ばから12歳以上に接種すべきか議論が行われており、今後数週間中にも決定する見通しだ。

こうした中、世界保健機関(WHO)は欧米諸国に対し、子どもへの接種を遅らせて途上国にワクチンを寄付するよう求めている。

独ルートヴィヒ・マクシミリアン大学のゲオルグ・マルクマン教授は、子どもの重症化リスクが低いことに加え、インドなどで変異株が急拡大し、ワクチン供給があまりに少ないことを踏まえると、欧米諸国にはワクチンを寄付する道義的責任があると指摘した。

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