歯茎から血が…知っておきたい歯周病をもたらす3種類の食べ物

パンを食べたり、カルシウムのサプリメントを飲んだりすると周病になる? 歯の治療を始めて40年になる歯科医師は、「食べることで歯周病になる人が多い」と語っています。

今回は、近年大きな問題となっている「歯周病」についてお話したいと思います。 かつて歯周病は「歯槽膿漏」と呼ばれていましたが、学生時代に「歯槽膿漏は病名ではなく、歯茎から膿が出ている状態」と習ったので、高齢者に多い病気だとばかり思っていました。しかも、歯槽膿漏に悩む人の数は今よりもさらに少なかったのです。しかし、近年では子どもたちにも歯石ができ始めており、食生活の欧米化に伴い、実際に口腔内の病気に悩む人が増えてきていると感じています。
 

歯周病はどのようにして起こるのでしょうか?

 

では、歯周病はどのようにして起こるのでしょうか。日本では古くから歯周病は細菌感染と考えられてきましたが、アメリカで違った見解が発表され、今ではそちらが主流になりつつあります。米国歯周病学会の会長は、2012年に「歯周病が細菌感染症であるという認識は覆された」と発表しました。

現在、歯周病の原因は、A.a.菌とP.g菌と考えられています。どちらの菌も多くが人の口の中に存在していますが、歯周病にならない人もいます。アメリカ歯周病学会では、「歯周病の発症には歯周組織の細胞環境が関係している」と考えています。

一方、日本の歯周病予防は、歯ブラシを使って歯周病の原因となる歯石を除去することが中心で、歯医者さんでは、歯ぐきの状態を確認し、結石を清掃し患者さんに正しい歯磨きを指導するのが一般的です。これでも歯周病が治らない場合は、抗生物質治療を行います。この治療法は、「歯周病は細菌の感染症」という認識から来ています。抗生物質は非常に即効性があり、すぐに症状が改善されることもありますが、一度中止すると歯周病が再発し、中止後に症状が悪化するケースも少なくありません。

抗生物質は歯周病菌を殺すだけでなく、腸内細菌も殺してしまうため、長期的に服用をした場合、全身の免疫力が著しく低下し、さまざまな病気の原因となります。歯周病菌は少なければ少ないほどいいのですが、すべての菌が悪いわけではなく、実は人間は日々多くの菌と共生をしています。

では、歯周病の本当の原因は何なのでしょうか? アメリカ歯周病学会では、考えられる要因として、炭水化物の過剰摂取、カルシウムの過剰摂取、マグネシウム不足などを挙げています。これらの仮定は、これまでの健康的な食事や生活の常識を覆すものでした。

参考までに、歯周病の原因と私が現在実践している食生活をご紹介します。
 

歯周病食 食べ過ぎに注意したい3種類の食品
 

1.炭水化物

アメリカ歯周病学会が研究結果を発表する前から、私は歯周病は虫歯と同じように生活習慣が関係していると考えていました。

食生活を調査したところ、歯周病患者さんの食生活は非常に特徴的で、炭水化物が好きな患者さんが圧倒的に多いことがわかりました。炭水化物を摂りすぎている人は、歯の周りに歯石がびっしりとついていて、見るとすぐにわかります。 毎日の歯磨きでこの歯石を除去すれば、健康を維持することができるかもしれませんが、毎日完璧に歯をきれいにするのは大変な労力と努力が必要になってきます。

では、どのくらいの量が実際には多すぎるのでしょうか?人間の体にとって炭水化物は、車でいうところのガソリンのようなものです。しかし、車が余ったガソリンをタンクに蓄えるのに対し、体は余った炭水化物を脂肪に変えて脂肪細胞に蓄えます。脂肪細胞は健康に様々な悪影響を及ぼしますが、その一つに歯周病があります。 

つまり、歯周病を予防するためには、体が使うだけの適量の炭水化物を摂ることが大切なのです。目安としては、炭水化物を含む食品を食べて30分後に歯石がついていたら、炭水化物の摂りすぎです。これは、米などの炭水化物が多糖類であり、唾液中のデンプンや細菌、酵素などによって単糖類に分解されるためです。余分な糖質は歯に入り込み、歯石を形成します。

炭水化物を多く含む食品を食べた後の歯の状態と、そうでない食品を食べた後の歯の状態を比べてみたり、歯間や歯の周りの歯石を爪楊枝で取ってみたりしてみましょう。

2.カルシウム

また、カルシウムの過剰摂取も歯周病の原因となります。 日本人は、カルシウムが不足しているため、積極的に摂取する必要があるので、逆にカルシウムを摂りすぎると歯周病になると聞いて驚かれる方も多いと思います。若い人たちにとって、カルシウムは非常に重要な役割を果たしています。しかし、骨が成長すると、体はそれほど多くのカルシウムを必要としなくなるので摂りすぎると逆効果です。

次に、体内でのカルシウムの役割について説明します。

カルシウムが体内に入ると、まず血流に入ります。しかし、血液中のカルシウムは一定のレベルに保たれているため、過剰なカルシウムは別の場所に運ばれ、組織や内臓で小さな岩のような固体を形成します。脳細胞の石灰化はアルツハイマー病の原因となり、目の水晶体の石灰化は白内障の原因となります。また、歯が石灰化することで結石が発生し、それを放置すると歯周病に発展することもあります。加齢に伴って起こる症状の多くは、カルシウムの過剰摂取が原因です。

3.塩

また、食塩からのナトリウム、果物や野菜からのカリウムをバランスよく摂取することも重要です。ナトリウムは細胞の中に入らないので、塩分の多い食品を食べても、その中に含まれるビタミンやミネラルは細胞に吸収されずに排泄されてしまいます。一方、カリウムは細胞内に入るため、ナトリウムとカリウムをバランスよく摂取する必要があります。

一般的にカリウムとナトリウムの比率は1:3.8が望ましいとされていますが、健康上の理由から1:0.1~1の比率が推奨されています。特に重度の歯周病の方は、塩分の摂取を控えることをお勧めします。
 

歯周病を改善する2種類の食品

 

マグネシウム

実は、カルシウムは自分では排泄できません。前述のように血管から体の他の部分に送り出されています。しかし、マグネシウムが体内に存在すると、それと一緒に排泄されてしまうことがあるので、積極的にマグネシウムを摂取することをおすすめします。マグネシウムを多く含む食品は、主に海藻類やナッツ類です。

オメガ3(n-3)系脂肪酸

亜麻仁油やシソ油に含まれるオメガ3系脂肪酸は、抗炎症作用があり、歯周病の予防や治療に効果があります。米国の20歳以上の成人9182人を対象とした調査では、オメガ3系脂肪酸の摂取量が多い人ほど、歯周病になりにくいことがわかりました。しかし、日本で販売されている油のほとんどはオメガ6系で、炎症作用が強く、過剰に摂取すると体に悪影響を及ぼす可能性があります。

ちなみに、グリーンバックの魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)も脂肪酸です。食生活の調査をしたところ、魚介類をよく食べる人は高血圧になりにくいことがわかりました。しかし、オメガ3系オイルは非常に酸化しやすいため、加熱しないだけでなく、温かい料理にかける場合でも、熱がこもらないように直後に食べるようにしましょう。また、購入時には不透明な遮光瓶を選ぶことも重要です。

以上が歯周病の原因と、私が患者さんにお勧めする食生活についてご紹介しました。歯周病を改善するには、本当にこれらの方法しかないのかと疑問に思う人もいるでしょう。もちろん、すでに歯に歯石がついている場合は、まずそれを除去し、その後、前述の食生活を継続することで、歯石がつくことが減ってくるでしょう。この2つが歯周病を改善・予防するので、まずは過剰な炭水化物とカルシウムを避けるようにしましょう。

(翻訳・志水慧美)