【芸術秘話】 マリー・アントワネットの不興を買った画家

1785年、ルーヴル美術館でサロンが開かれました。待合室にいるスウェーデンの画家、アドルフ・ウルリッヒ・ヴェルトミュラーは落ち着かずに歩き回っています。なぜなら、彼が描いた肖像画がこれから非常に重要な位置に展示されるからです。今回、ヴェルトミュラーが描いたのは他でもなく、何と当時のフランス女王、マリー・アントワネットだったのです!

絵の中のアントワネットは2人の子どもを連れて、小トリアノン宮殿の花園で散歩しています。この作品はスウェーデンの王への贈り物として特別に依頼されたものであるため、多くの芸術家や評論家、来客たちに注目されていました。画家がそわそわするのも無理ありません。女王はどのような反応を見せたのでしょうか?

幕が上げられた時、会場から笑い声が上がりました。なぜなら、あまりにも平凡な場面で、人物からも特に高貴さや威厳は感じられず、まるでアントワネットが子どもを連れて散歩しているごく普通の婦人のようだからです。

そして、肝心の女王の反応ですが、アントワネットはこの絵画を見た瞬間、「なんてことでしょう?!これが私とでもいうのですか?!」とその場で悲鳴を上げたのです。

 

ヴェルトミュラーの「アントワネット」は、凡庸な絵画とされています。(パブリックドメイン)

 

かわいそうな画家にとってこの反応はまるで冷や水をかけられたかのようで、悔しさとともに、どうしようもなさがヴェルトミュラーの心をおそいました。その後、ヴェルトミュラーは自信なさそうに多少修正しましたが、しかし、アントワネットは二度と見ようとせず、そのままスウェーデンに送りました。そして、哀れなヴェルトミュラーは何年も待って、ようやく報酬を手に入れたのです。

本来なら名誉と財産を同時に手に入れるはずでしたが、ヴェルトミュラーの夢は呆気なく散りました。その上、経済的な苦境に陥り、周りからも嘲笑されて、終いには大きな病にかかったのでした。

 

アドルフ・ウルリッヒ・ヴェルトミュラー『自画像』 1795-1800年頃 油彩 62 x 53 cm スウェーデン国立博物館、ストックホルム。 (パブリックドメイン)

 

(翻訳編集・天野秀)

史多華