岸田文雄首相は10日、シンガポールで開幕したアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で講演し、「自由で開かれたインド太平洋」構想の新展開や安全保障の強化など5つの柱からなる取り組みを進め、外交・安全保障面での日本の役割を強化していくと表明した。資料写真、会見する首相、5月、代表撮影(2022年 ロイター)

岸田首相、5本柱の「平和ビジョン」表明 外交・安保面の役割強化

[10日 ロイター] – 岸田文雄首相は10日、シンガポールで開幕したアジア安全保障会議シャングリラ会合)で講演し、「自由で開かれたインド太平洋」構想の新展開や安全保障の強化など5つの柱からなる取り組みを進め、外交・安全保障面での日本の役割を強化していくと表明した。

岸田首相は、ロシアによるウクライナ侵略、東シナ海での力を背景とした一方的な現状変更の試み、北朝鮮による核・ミサイル開発など、様々な問題行為の根本には国際関係における普遍的なルールへの信頼の揺ぎがあると指摘。現在、国際秩序の維持による平和と繁栄か、弱肉強食の世界への回帰か、選択を迫られていると訴えた。

その上で、日本、アジア、世界の危機に積極的に対応するため5本の柱からなる「平和のための岸田ビジョン」を提示。巡視艇供与や海上法執行能力の強化、サイバー・セキュリティ、デジタル、グリーン、経済安全保障といった分野でも協力を深める「平和のための『自由で開かれたインド太平洋』プラン」を来春までに示すと述べた。

日本の防衛力の抜本的強化や日米同盟・有志国との協力強化、「核兵器のない世界」に向けた現実的な取り組み、国連安全保障理事会の改革、経済安保など新分野での国際的な連携強化なども盛り込んだ。

このほか首相は、インド太平洋諸国に対して今後3年間で少なくとも約20億ドルの巡視船を含む海上安保設備の供与や海上輸送インフラの支援を行う方針を示した。また、自由で開かれた海洋秩序の実現に貢献するため、海上自衛隊の護衛艦「いずも」などを中心とした部隊を6月13日からインド太平洋方面に派遣、東南アジアや太平洋諸国を含む地域の国々と共同訓練などを行う、とした。

講演後、日中関係に関する質問に対し、岸田首相は、建設的で安定的な関係を築いていく努力を双方が行っていくことが重要だと述べ、その上で「中国とは隣国であるために様々な懸案が存在するが、軍事動向においても透明性を高めていくことによって説明責任を果たし、信頼関係を構築していくことも重要だ」と語った。

(杉山健太郎)

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