カキツバタ (大紀元)

【花ごよみ】カキツバタ

漢語では「燕子花」と書く。「杜若」の表記もあるが、こちらはカキツバタとは別種の植物らしい。

その花が燕の飛ぶ姿に似ていることから、この漢字が当てられた。さもあろう。漢語による事物への命名は「実際に見たもの」が優先される。

唐突ながら「象」という象形文字は、古代の中国人がゾウを見ていたから生まれたに違いない。実際、かつての中国大陸には豊かな森があり、ゾウもトラもワニも、人が見えるところに生息していた。

つまり「飛ぶツバメを見た」という体験的事実があって、はじめて「燕子花」という名称が生まれるのである。では、昔の中国人が、どの時季のツバメを最も印象深く見たかというと、おそらく初夏に南から飛来したツバメであろう。

害虫を捕食するツバメは益鳥である。人間に身近であるからこそ、同じ頃に咲く花の名前にもなった。

その燕子花が、なぜ日本では「かきつばた」になるのか。

この花は、白い布にこすりつけて色付けする染料でもあった。ゆえに「書き付け花」と言われ、後のカキツバタになったという。日本語の「書く」は、手で掻くことに他ならない。

平安時代、染色は女性の仕事であった。『伊勢物語』第九段で、三河の八橋まで来た在原業平一行がこぞって泣いたのは、即興で詠んだ折句の歌が見事だったからではない。

そこで燕子花の群生を見たとたんに、一行の胸に湧き上がったのは都に残してきた妻や恋人への思いであった。男たちの涙は、その表れである。

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