2022年5月2日、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されたファッションの祭典メットガラ(Met Gala)に登場したイーロン・マスク氏(Angela Weiss/AFP via Getty Images)

マスク氏、中国の検閲当局機関誌に寄稿 非難が殺到

米電気自動車(EV)大手テスライーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が中国検閲当局の機関誌に寄稿した問題で、「中国の言論検閲の正当性の強化につながりかねない」と懸念の声が上がっている。

中国のネット検閲当局である「国家インターネット情報弁公室(CAC)」の機関紙・中国網信は今月、「科学技術は素晴らしい未来を創造すると信じている」と題するマスク氏の寄稿文を掲載した。

寄稿文の中でマスク氏は、「中国はクリーンエネルギー分野でなくてはならない存在だ」「志を共にする多くの中国の仲間と一緒に人工知能、宇宙などを開発していきたい」と述べ、中国に好意的な姿勢を見せた。

「言論の自由」絶対主義者と検閲大国

世界一の富豪であるマスク氏は、「言論の自由の絶対主義者」と自称している。同氏はツイッターの検閲を批判し、同プラットフォームを440億ドル(約5兆6300億円)で買収すると申し出ていたが、同計画を先月撤回した。

「言論の自由をよく口にするマスク氏は、北京の検閲者とあまりにも親密になっている」と米国外交政策評議会のマイケル・ソボリク研究員は指摘した。

『やがて中国の崩壊がはじまる』の著者で、中国問題専門家でもあるゴードン・チャン氏も、「マスク氏は中国検閲当局の機関紙に寄稿すべきではない」と考えている。

「中国の検閲当局はマスク氏の文章を利用して、ネット検閲の正当性を高めたいと考えているのだろう」と同氏は指摘した。

マスク氏はこれまでにも自身のSNSで中国の政策を称賛する発言を繰り返すなどして、中国当局に歩み寄る言動をとってきた。

昨年、ネット自由擁護派が「民主主義国家のネット秩序にとって脅威」と見なす中国検閲当局主催の世界インターネット会議で、マスク氏はビデオ演説を行った。テスラは、米国が「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定している新疆ウイグル自治区に同社のショールームを開設した。

そんなマスク氏の友好的な態度に応えて、中国政府は外資による初の単独出資の自動車工場建設を認めるなど優遇措置を与えてきた。テスラにとって中国は無視できない最大の市場になった。

いっぽうで、中国当局は「車載カメラに対する懸念」などで、昨年には軍関連施設へのテスラ車の進入を禁止した。今年も、7月から少なくとも2カ月間は重要会議の開催地へのテスラ車の進入を禁止したとロイターは報じている。

(翻訳編集・李凌)

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