李尚福・国防相は先月北京で開かれた「中国アフリカ平和安全フォーラム」で演説して以来、動静が伝えられていない。写真は中国軍の極超音速滑空ミサイルの東風17( GREG BAKER/AFP via Getty Images)

米政府援助の先端技術、約300件が中国に 極超音速兵器の開発に利用か

米紙ワシントン・ポスト17日付は、米国で開発された300件を超える先進技術が3年にわたって中国側に販売され、最終的に中国の極超音速兵器やミサイル開発などに使用されたと報じた。

米国家安全保障を脅かす核心技術の海外流出の制御を強化しているにもかかわらず、米国の対中輸出規制の不足が浮き彫りになった。

ワシントン・ポスト取材班は、公開された契約書と中国政府の資料などを分析し、中国の軍事研究機関や民間企業で働く中国人科学者6人に取材をした。2019年以降、米企業約50社が数十の中国機関に、300件以上の米先端技術を販売していたことがわかった。これらの米技術が中国企業や軍事研究所の手に渡り、中国の極超音速ミサイル開発に使用されたという。

ある中国人科学者は「米国の技術が中国側の技術不足を補ってくれた。米国の優秀な技術は、中国の武器開発の進歩に欠かせないものだ。それがなければ特定の作業を行うことはできなかった」と話した。

極超音速技術を専門とする米コロラド大学国家安全保障イニシアチブセンターのイアン・ボイド(Iain Boyd)所長は同紙に対し、「米国の税金によって支援された極超音速技術が最終的に中国の手に渡ってしまった」と深刻な懸念を示した。

オバマ元政権下の商務省で輸出規制の責任者を務めたケビン・ウルフ(Kevin Wolf)元商務次官補によると、中国がミサイルやその他の大量破壊兵器に使用する可能性のある特定の技術やソフトウェアなどを輸出するには、米政府の許可を必要とするが、これら技術の一部は航空や宇宙研究などにも使用できる。「米企業はこの抜け道を利用して中国の中間業者に米技術を売ったが、最終的に中国軍の手に渡ってしまった」と指摘した。

ワシントン・ポストは、中国は米国の先進技術を入手したことで、同国のミサイル開発を少なくとも数年から10年以上早めたと指摘した。また、販売に関わった一部の米企業のなかには米国防総省から資金援助を受けていた企業も含まれており、米技術を購入した中国企業や軍事研究所の多くは米国の制裁リストに載っていたという。

米英豪3カ国の首脳は今年4月、安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の新たな取り組みとして、極超音速兵器の共同開発を宣言した。中国やロシアが先行する同兵器の開発競争で巻き返しを図る狙いだ。

極超音速ミサイルは、音速の5倍(マッハ5=時速約6千キロ)を超える速さで飛ぶミサイルで、米軍の迎撃ミサイルを回避でき、迎撃が極めて難しいことから、戦争のあり方を変える「ゲームチェンジャー」になるとも言われる。

(翻訳編集・李凌)

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