2021年10月イスラエルで開催されたエルサレム・ポストの年次会議でポンペオ元米国務長官が講演した(Photo by Amir Levy/Getty Images)

ポンペオ前国務長官、中共は対米スパイ工作に「中国人留学生を利用」

米国のポンペオ前国務長官は5日、保守系シンクタンクのハドソン研究所中国センターのユーチューブチャンネルに米中間の学生・学術交流に関する動画を公開。中国共産党が学術交流を利用して「在米中国人学生を脅迫し、また資金を投入して米国の教育機関への影響力を拡大し、研究成果を窃取している」と警告した。

ポンペオ氏は動画の冒頭で「中国共産党のファイアウォール(インターネット検閲システム)の向こう側にいる親愛なる中国の友人たちよ」と呼びかけ、「米国人と中国人は、時間・空間・言語・歴史上で隔たてられているが、多くの共通点があり、お互い学び合える」と語った。

毎年数万人に及ぶ中国人留学生が米国の大学や短期大学に入学し、在米外国人留学生のうち中国人留学生が多数を占めていることについて「素晴らしいことだ」と評した。

しかし、ポンペオ氏は「中国共産党はこうした学術交流を破壊している」と指摘。「米国に学びに来る学生を利用しようとしており、時折スパイを同行させている」とし、中国当局のスパイ工作に警戒感を示した。

さらに、「共産党統制下の学生団体を通じて、在米中国領事館が米国内にいる中国人留学生を脅迫、強要しているという報告を受けている」とした。

中国共産党とのつながりが指摘される留学生組織「中国学生学者連合会(CSSA)」が米国の大学内で中国政府にとって不都合な言論を封じ込めたり、反中的な主張をする中国人留学生・学者を監視したりするなど言論の自由を抑圧しているとして、米国内で問題視されている。同組織は、米国の大学100校以上に支部を置いているとみられている。

ポンペオ氏は動画の中で、海外ハイレベル人材招聘プログラム「千人計画」についても言及し、中国共産党が米国での影響力を買収するために資金を投入し、報告されていない数十億ドルの資金が秘密裏に米国の大学に流入していると述べた。

「太っ腹という話ではない。その大半がスパイ行為のためだ」とポンペオは指摘。

「千人計画」は、中国共産党中央組織部「中央人材工作協調チーム」が主導し、高度な技術情報の窃取を目的として米国から優秀な科学者や研究者を中国に招致している。ポンペオ氏は具体例として、自身の故郷カンザス州の大学教授やハーバード大学の元学科長を挙げた。

19年8月、カンザス大学のフランクリン・フェン・タオ工学教授が、福州大学で常勤職に就いていたことを米当局に開示しなかったとして詐欺罪で起訴された。また21年12月、「千人計画」に参加しながら収入を米当局に報告しなかったとして、虚偽申告などの罪に問われた米ハーバード大化学・化学生物学科の元学科長チャールズ・リーバー被告に有罪評決が下った。

「中国共産党の犠牲者の中には、真に教育を求め、学問の自由を体験するためにやってきた中国や台湾の学生もいる」とポンペオは語った。

ポンペオ氏は、「米国にとって太平洋を越えて権威主義が忍び寄るとは想定外だった」としたうえで、「このようなことは米国ではあってはいけない」と強調した。

「米国の高等教育は社会の至宝で、守っていかなければならない。詐欺や窃盗に注意しつつ言論の自由、開かれた研究、学術への探究心を支援する必要がある」とした。

ポンペオ氏は現在、米保守系シンクタンクのハドソン研究所中国センターの諮問委員会委員長を務めている。同センターはポンペオ氏が国務長官時代の中国政策首席顧問を務めた余茂春(マイルズ・ユー)氏がディレクターを務める。

ハドソン研究所中国センターは、9月13日から動画シリーズ『ポンペオ氏から中国の人々へのメッセージ』を発表。これまでに『中国共産党は中国国民を代表しない』と『米国の人種問題に関する中国共産党の虚偽』の動画2本が掲載されている。動画には中国語と英語の字幕がつけられている。

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