中国海軍の船舶が4月10日、台湾に最も近い平潭島の北東で演習を行うと当局が発表した地域まで移動している(Photo by GREG BAKER/AFP via Getty Images)

中国政府系メディア、対台湾ミサイル攻撃の動画を公開 ほとんど命中せず「嘲笑の的」に

中国政府系メディアはこのほど、台湾とその周辺海域をミサイル攻撃するアニメーションをツイッターで公開したが、好戦的で脅迫の意味合いを含むものとして、各国の専門家から非難されている。また、動画ではミサイルのほとんどが海に命中したことから、「海洋生物を殺している」と揶揄される場面もあった。

中国軍は10日、台湾海峡での3日間の軍事演習を終えた。台湾の蔡英文総統と米国のマッカーシー下院議長との会談に反発した形だ。演習2日目には政府系の中国中央テレビ(CCTV)が台湾を「精密攻撃」するアニメーションを放映。これを同じく政府系の環球時報がツイートすると、他の中国政府系メディアや外交官らが転載した。

外国に対する挑発的な発言で有名な環球時報の元編集長・胡錫進氏は「台湾独立派を支持する人々は、中国人民解放軍東部戦区が公開したこの軍事演習アニメーションを見るべきだ。台湾独立は戦争を意味する」と強気の姿勢を見せた。

これに対し台湾軍は沈着冷静に対処し、防空システムを起動させ、起こりうる衝突に備えた。台湾総統府報道官のコラス・ヨタカ氏は「70機あまりの中国戦闘機と11隻の軍艦が私たちを囲んでいる。守りを固め決して信念を諦めない」と応じた。

台北市近郊に展開する台湾軍の対空砲(台湾国防部提供)

1940年代の国共内戦以降、台湾は一度も中国共産党の支配を受けることなく今日に至っている。国内統治の正当性を主張したい共産党指導部はかねてより台湾侵攻を画策してきたが、数度の衝突ではいずれも台湾軍に撃退されている。

中国共産党は未だ台湾「統一」のために武力行使を厭わないと言明している。米国の情報機関は、共産党が2027年までに台湾侵攻の準備を整えるだろうと推測しているが、確定的な計画はないと分析している。

中国軍の発射したミサイルのほとんどが海に落ちたことがわかる(スクリーンショット)

外交専門誌フォーリン・ポリシーの編集者であるアイザック・ストーン・フィッシュ氏は「北京当局はこの週末、演習と模擬的な攻撃、戦闘機の飛行によって台湾海峡の緊張を高めた」と述べ、「同地域を注視する必要がある」と付け加えた。

グローバル台湾研究所創設者の叶介庭氏は、中国がアニメーションを公開したことによって、北京当局が事態のエスカレーションを煽る側であることが明らかになったと指摘。「平和的な超大国」を自称する国が台湾の指導者の米国訪問にめくじらを立てていると述べた。

いっぽう、多くのネットユーザーは、アニメーションのなかで中国本土から発射されたミサイルの多くが台湾本土の目標に命中せず海に落下していることに気づき、「中国軍のミサイルのほとんどは海洋生物を殺すために使われた」「魚を爆撃しているのではないか」と揶揄した。

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