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米国 中共に対し台湾への武力行使を行わぬよう厳重に警告

2025/05/08
更新: 2025/05/08

米中対立が激化し、台湾海峡の緊張が急増する中、アメリカは、台湾防衛を最優先に位置づけ、中国共産党(中共)の武力行使に対して強い警告を発した。最新の軍事展開、国際社会への影響、そして台湾情勢の今後について詳述する。

2024年5月2日、アメリカ軍インド太平洋司令官サミュエル・パパロ大将は、アリゾナ州マケイン研究所で開催されたセドナフォーラムに登壇し、「現有戦力であれば、仮に今戦争が起きてもアメリカが勝利する」と明言した。この発言は中共に対する明確な抑止メッセージであり、台湾への軍事的冒険を思いとどまらせる意図を持つという。

アメリカ 台湾防衛を最優先に 中共に警告

台湾の国家シンクタンク「国防安全研究院」に所属する鍾志東(しょうしとう)博士は、パパロ大将の発言が、アメリカの対中戦略において、台湾防衛が核心的な位置を占めている証拠であると分析する。博士は、「中国に対して、武力行使を控えるよう警告を発し、抑止することが最も重要である」と述べた。

アメリカ中央情報局(CIA)は、2023年初頭に入手した情報をもとに、中共党首習近平が中共軍に対して、2027年までに台湾侵攻の準備を完了させるよう命じたと認識し、ただし、これは2027年に必ず侵攻することを意味しないという。アメリカ政府はこの期限を重視し、台湾海峡問題を最優先課題として位置づけた。

2025年3月、アメリカ国防長官ピート・ヘグセス氏は、中共の台湾侵攻を抑止しつつアメリカ本土防衛を強化する方針を明記した覚書を発表した。鍾(しょう)博士は、この覚書がアメリカ現政権による台湾情勢への深刻な認識を示していると指摘した。

パパロ大将は、アメリカ軍が水中作戦、宇宙領域、対宇宙兵器において、中共軍を上回る優位性を有していると強調したが、一方、中共は軍艦や潜水艦の建造速度においてアメリカを凌駕している。

中共は1年あたり2隻の潜水艦と6隻の作戦艦艇を建造しているのに対し、アメリカは1.4隻の潜水艦と1.8隻の作戦艦艇に過ぎず、こうした状況に対応するため、トランプ大統領は、アメリカの海洋力再興と造船業の復活を目指す大統領令に署名した。

鍾博士は、中共が台湾攻撃に踏み切る際、主力となるのは、海軍と空軍の作戦であるとみている。パパロ大将の発言は、アメリカが制海権・制空権の優位性を確信していることを物語り、トランプ政権下では、艦艇建造も加速しており、「中国の艦艇数の優位性は持続しない。量的優越に依存する戦略は、中共軍にとって深刻な課題となる」との見解を示した。

米軍の介入により中共の勝算低下

アメリカ・セント・トーマス大学の葉耀元(ようきげん)教授は、中共の艦艇数がアメリカを上回っていても、その質において大きく劣っていると指摘する。「中国の艦艇は、数で勝る可能性はあるが、制圧力、空母打撃群の能力、装備、実戦経験ではアメリカに遠く及ばない。現時点で中国の空母は、戦闘機搭載に制限があり、世代差は2世代に及ぶ」と述べた。

中共が、台湾に対して軍事行動を起こす場合、その勝敗は、米軍の介入によって大きく左右され、鍾博士は、中共が軍事行動を決断する前に、必ず戦前の勝算を検討し、勝利が見込めると判断したときにのみ動くと見て、『超限戦』の著者である喬良(きょうりょう)氏も、台湾侵攻における最大の障害は、米軍の介入であると分析している。

葉教授は、過去数年間に実施されたウォーゲーム(兵棋演習)の結果を踏まえ、「もし今、台湾海峡で戦争が発生し、アメリカが介入すれば、ほとんどのシナリオでアメリカが勝利する」と断言した。アメリカも損害を被るものの、中国の空軍および海軍は麻痺状態に陥り、中国が戦争に勝利する可能性は極めて低いと述べた。

独裁政権の多くは、内政の危機に際して、対外戦争によって支配の正当性を強化してきた。葉教授は、中共が台湾に対して武力を行使するのは、深刻な経済危機や習近平の党内での孤立など「戦っても死ぬ、戦わなくても死ぬ」状況に追い詰められた場合であると分析した。

台湾本島の全面占領に至らずとも、中共が金門、馬祖、澎湖といった離島や、東沙諸島、太平島など南シナ海の島嶼への攻撃、さらには台湾本島への封鎖やミサイル攻撃といった限定的な軍事行動を選択する可能性も指摘されているが、各々の行動には、異なるリスクと代償が伴う。

中共による台湾攻撃がもたらす国際的影響

中共が台湾に軍事行動を仕掛けた場合、台湾海峡の問題は完全に国際化し、国際社会全体を巻き込む事態に発展する。鍾博士は、この状況がウクライナ戦争を上回る国際的影響を及ぼし、台湾の対中認識を根本から断ち切り、台湾独立の支持を一層高めるだろうと予測する。

仮に中共の台湾侵攻が失敗に終わった場合、習近平の指導的立場および中共の統治体制そのものが深刻な挑戦に直面し、葉教授も、中共が敗北すれば、「習近平や中共の幹部の誰かが必ず責任を問われる」と警告する。

トランプ政権の対中政策と中共の国力低下

アメリカの対中経済政策は、中共の総合国力に打撃を与え、2024年5月4日のインタビューで、トランプ大統領は、中共が関税の撤廃を求めた件について「拒否する。なぜその必要があるのか」と強硬な姿勢を貫いた。米中間の関税率は145%対125%という歴史的な水準で膠着し、トランプ氏は、「貿易関係が断たれても構わない」と断言した。

鍾博士は、関税戦争によって、アメリカおよび西側諸国の対中依存度が減少し、中共の影響力が後退したと指摘する。この経済的打撃は、中国全体の国力低下につながり、対外拡張能力の制限にも直結するという。

一方、葉教授は、関税戦争の悪影響が、中国国内にも波及しており、中共が冒険的・急進的な政策に走る可能性を示唆した。中共は、こうした強硬姿勢によって、国内世論を結集し、アメリカの経済制裁を突破する構えを見せた。

以上のように、アメリカは、中共に対して、台湾への武力行使を強く戒め、軍事・経済両面における抑止力を強化中であり、台湾海峡をめぐる情勢は、今後も国際社会の注視を集め続けるに違いない。

易如
程雯