中国の警察のSNS公式アカウントに「交通警察は『役立たず』だ(交警都是哈錘子)」とコメントしたネットユーザーが、警察に10日拘束され、本人が「公開謝罪」する動画までネットに公開された。画像は、本人が公開謝罪する様子。(SNSよりスクリーンショット)

ますます強まる中共の言論統制 「交通警察は役立たず」で拘束10日、公開謝罪まで

中国共産党による、中国国民への言論統制はエスカレートする一方だ。

中国の警察の中国版TikTok「抖音」での公式アカウントの投稿に対して、「交通警察は『役立たず』だ(交警都是哈錘子)」とコメントした男性のネットユーザーがいた。その一言で、このユーザーは警察に10日間拘束され、カメラの前で公開謝罪をさせられた。

一言コメントで「10日間の拘束」

この「哈錘子」とは地方の方言だが、生殖器の隠語をふくむものであり、男性への罵語としては非常に下品で、口汚い部類に入る。

おそらく本人は、あまり深くは考えなかったのであろう。ただ、それを一言コメント欄に書いたところ、なんとこの男性は警察に逮捕され、10日間拘束されてしまった。

さらに「対不起、我錯了(すみません、私が悪うございました)」と、カメラの前で本人が謝罪させられる動画までネットに公開された。

陝西省警察は12日、「警察節(警察の記念日)の日に、警察の公式アカウントの投稿に悪質なコメントを残した男性を10日間拘留し、公開謝罪させた」と発表した。

「公開謝罪」の動画は、涇陽縣拘留所(現地の留置場)の看板を掲げる建物の前で撮られた。番号がついた囚人服姿の男性が、カメラの前で自身の「罪状告白書」を読み上げている。

この「事件」が報じられると、ネット上では熱い議論が交わされることになった。「警察をちょっと罵っただけで、なんで10日も拘束され、公開謝罪させられるのか!」といった非難が殺到した。

寄せられるコメントのなかには「警察は(もとは)非常に立派な職業だった。それが、どうしてこんなに多くの人から罵られる職業になったのか。そっちを反省したらどうだ」という、昨今の警察のあまりのひどさに批判を向けたものもある。

さらには「もし罵言を吐いたのが警察官だったら、どうだろう。同じように拘留されるのか?」などと、警察の対応に反発する声も少なくない。

ネット世論の圧力を受けたためか、その後、陝西省警察は関連動画を削除している。

 

(陝西省警察が公開した「公開謝罪」の様子。カメラの前で自身の「罪状告白書」を読み上げていた)

 

不動産の不況を伝えたら「虚偽情報」だって?

この事件のちょうど1週間前、中共公安部や西安ネット警察は「陝西省西安市の公安局のネット安全部門は、ネット上のデマに対する取り締まりを強化する」ことを宣言するとともに、すでに処罰した6つの案件についても、取り締まり対象の「具体例」として発表した。

これらの「具体例」のなかには、ネットユーザーの「発言」まで処罰の対象となった事例もある。今の中国では、ネット上の言論までが「犯罪扱い」されるのだ。

例えば「バイクを買ったばかりなのに(当局が)バイク使用を禁じた」や「高速道路の料金所を降りようとしたら、交通警察のパトカーに追尾され、車が大破した。その時、交通警察は『私が全責任を負う』と言ったよ」など。

これがなぜ規制対象になるのか首をかしげるばかりだが、つまり「警察がこう言ったよ」と発信しただけで、警察はその相手を「取り締まり対象」にできるというのだ。

ほかには、「中共ウイルス(新型コロナ)ワクチンに関連する動画」や、不動産市場の不況を伝える内容などが「虚偽情報」の例として挙げられている。これらも、関係者に対して行政処罰が下された実例であるらしい。

「逮捕は恣意的」他省にいても、追いかけてくる

ネットユーザーがコメントで言及した内容が、発信者の居住する省でなかったとしても、警察側は省境を跨いで発信者を特定し、逮捕や処罰に及ぶ。

仮にそれが、どう考えても罪にはならない軽微な内容であったり、あるいはユーザーのコメントが正鵠を得た「正しい指摘」であったりしても、当局の恣意的な判断によって「言論統制の対象」にされてしまうのだ。

そうして「どれだけ数多く検挙したか」によって、中国共産党という悪魔的組織のなかで各地の警察は「評価」されるのである。

昨年2月、山西省の市民である龐雁冰さんは「山東省公安の交通警察部門に存在する違反行為の疑惑」に関する文章をネットに公開した後、山東省の警察によって「騒乱挑発罪(尋釁滋事罪)」の罪名により、まさしく省境をまたいで逮捕された。

同じく昨年2月、山東省に住む賈さんは「江蘇省徐州市の城管(都市管理部門)が、住民の家の入り口に貼った春聯(旧正月を祝う対句)を破いた」ことをネットに投稿した。すると賈さんは、他省である徐州の警察によって「自宅のドアをノックされる」などの嫌がらせを受けた。

昨年11月、吉林省長春市の公安局の交通警察分隊は、ドローンを使用した犯罪撮影を行うと公表した。そこで、中国の著名なフリージャーナリスト・鄧飛氏は、公安局の関連情報を転載し「もう少しで年越しだ。長春の交通警察は、ドローンを使って違法に撮影しているぞ」とコメントした。その後、鄧氏は警察によって同コメントの削除を求められた。

今年1月3日、広東省東莞市に住むネットユーザー「胡老獅(本名は胡能棵)」は、河南省の警察から省を跨いて逮捕された。

罪名は「恐喝などの罪」だという。逮捕の理由は、「胡老獅」が何度もネット上に、自身の故郷である河南省信陽市固始県での環境汚染の実態を投稿したことだ。「胡老獅」の逮捕については(環境汚染を暴露された)現地政府からの報復だ、とする世論が根強い。

中共の国家インターネット情報弁公室(通称:国家網信辦)はこのほど、SNSでのいわゆる「極端な情緒を扇動する」言論を対象に、1か月にわたる全国範囲の特別取り締まり強化を行っている。

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