伝統的な中国医学では、「湿」は風・寒・暑・湿・燥・火の「六淫邪気」の一つと考えられています。湿気はむくみを引き起こすだけでなく、高血圧・高血糖・高脂血症(いわゆる「三高」)や脂肪肝などの慢性疾患を招く可能性があります。
本記事では、湿気が体に及ぼす影響と、食事やツボ押しマッサージを活用して湿気を効果的に排出し、健康を維持する方法について紹介します。
湿気が「三高」を引き起こす恐れ
体の代謝や循環がうまく機能しないと、脂肪や老廃物が正常に処理・排出されず、水分代謝が乱れ、体内に湿気が溜まります。
湿気は痰へと変化しやすく、逆に痰が多いと湿気がさらに悪化し、悪循環を生み出します。中医学でいう「痰」とは、口から出る痰ではなく、体内に蓄積された粘り気のある老廃物のことを指します。例えば、血管内に過剰に蓄積した脂肪や、むくみなどがこれにあたります。
中医学では、痰は病気の大きな原因の一つとされています。軽度の痰は体のだるさや重さを引き起こし、重度になるとさまざまな慢性疾患につながる可能性があります。痰が上半身に溜まると、めまいや頭の重さを感じやすくなり、下半身に溜まると足のむくみを引き起こします。血液中に蓄積すると、脂質異常を招き、血液循環や代謝に影響を及ぼし、「三高」(高脂血症・高血圧・高血糖)を引き起こす恐れがあります。また、肝臓に溜まると脂肪肝になりやすくなります。
湿気が多い人は、この3種類の食べ物に注意
中医学の古典『黄帝内経』では、体に湿気が溜まる原因の一つとして「脾」の機能低下が挙げられています。中医学でいう「脾」は、脾臓だけでなく消化器全体を指し、「脾胃」と表現されることが多く、食べ物の消化・吸収・運搬を担っています。
脾胃の働きが低下すると、水分代謝が乱れ、むくみ、腹部の張り、軟便、消化不良などの症状が現れます。特に、冷たいもの・甘いもの・脂っこいものを多く摂ると、脾胃に負担をかけ、湿気が溜まりやすくなります。例えば、手足は細いのにお腹だけぽっこり出ていて、なかなか引き締まらない人は、冷たい食べ物の摂りすぎが原因かもしれません。
体の余分な水分を取り除く食事法
ハトムギは、余分な水分を排出するのに役立ちます。特に、夕方になると足がむくみやすい人には、ハトムギミルクを取り入れるのがおすすめです。ただし、効果的にむくみを解消するためには、常温または温かい状態で飲むことが大切です。
さらに、ハトムギには脂肪の蓄積を防ぐ働きもあります。研究によると、ハトムギは脂肪の蓄積を抑え、炎症を引き起こす物質の発現を減らすことで、高脂肪の食事による肥満を予防するとされています。ハトムギを摂取した実験では、腹部の脂肪や全身の脂肪量が減少したことが確認されています。
また、空心菜(エンサイ)、ヘチマ、冬瓜を食事に取り入れると、体内の湿気を排出し、むくみを解消しやすくなります。おすすめの料理として、空心菜の炒め物、ヘチマとアサリの炒め物、冬瓜スープの3品があります。これらの料理は、湿気を取り除き、体をすっきりさせるのに役立ちます。
湿気を取り除くツボマッサージ
足がしびれやすい、ふくらはぎが重だるい、靴下の跡がくっきり残る――こうした症状は、体に湿気が溜まっているサインです。
「足三里(あしさんり)」と「三陰交(さんいんこう)」というツボをマッサージすると、消化機能を整え、湿気の排出を促す効果が期待できます。動物実験では、これらのツボを刺激することで、胃腸の特定の機能に良い影響を与える可能性があると報告されています。
また、「三陰交」のマッサージは、女性の健康維持にも役立ち、むくみの解消や生理痛の緩和も期待できます。やり方は、三陰交を10秒間押してから離す、これを10回繰り返します。ややズーンとした響くような感覚があれば十分です。ただし、妊娠中の方は刺激しないよう注意してください。
中医学では、経絡(けいらく)とは体内のエネルギーの通り道であり、内臓と体の表面をつなぐ役割があると考えられています。経絡上には「ツボ(経穴)」が点在し、鍼やマッサージで適切に刺激することで、対応する臓器の働きを整えることができるとされています。
足湯で湿気を排出し、疲れを癒す
中医学では、足湯をすると足裏のツボが刺激され、消化機能が整い、体内の湿気を排出しやすくなると考えられています。また、足湯には睡眠の質を向上させる効果もあり、睡眠不足は肥満や代謝の乱れにつながる可能性があります。研究によると、就寝前に足を温めることで、高齢者の睡眠の質が向上することが確認されています。
足湯の目安は10分程度で、お湯の温度は約40℃が適切です。さらに、お湯に生姜を1枚入れると、手足の冷えや消化不良の改善が期待でき、一日の疲れをしっかりと癒すことができます。
注意点:足湯の後は、足をしっかり拭いて水分を取りましょう。また、扇風機やエアコンの風に直接当たると体が冷えてしまうため、注意が必要です。
(翻訳編集 華山律)
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