あなたはどこへ向かっているのか?そして、進む中であなたは気づいていますか?神経心理学者ロバート・ベイカー博士(Robert Backer, PhD)と一緒に、心と身体の健康、心理現象、文化的傾向の交差点を探求しましょう。
「手が汗ばんでいた」とジョンは振り返りました。「頭がふらふらして、落ち着かない—完全に行き詰っていました。ちょうど解雇されたばかりで、オフィスの外に座って、これからどうしたら良いのか考えていました。逃げ出したい気持ちもあり、また何もしたくない気持ちもありました。そして、事態が悪化する前に、今すぐにでも解決したいという気持ちもありました」
ジョンのように、20代で初めて大きな試練に直面した人々は、人生が予想外の出来事をもたらしたとき、不安と無気力がせめぎ合って支配しようとするのをよく感じます。次に何をするかがすべてを決定づけるのです。
「幸い、友達のアダムというストレートな奴に電話した」とジョンは言いました。「もっと良い仕事を見つけなきゃいけないみたいだね。そこから始めな。家賃を払う前に解決できるといいね」と彼は率直に言いました。それが僕に必要な後押しだったのです。
「その後数時間、求人サイトを検索して応募書類を送りました。夜までに現実的な選択ができました。あの慌ただしい午後は、予想もしなかった。しかし結局必要なキャリアチェンジにつながりました」
風に揺れる葉のように、私たちはよくある方向へまたは別の方向へ漂います。時にはチャンスに向かい、時には停滞に向かって。研究によると、不確実性をどのように認識するかが、行動を起こすか立ち止まるかを決定します。
不安と無気力が意思決定に与える影響
進むべき道がわからないとき、不快な状況はしばしば不安と無気力を引き起こします。不安とは過度な心配、潜在的な脅威に対する過剰な認識、そして不確実性への不快感を特徴とする状態です。無気力とは、行動の結果に対する不確かな信念と新しい可能性を探るよりも「現状維持」を好む傾向に伴う、動機の低下と目標指向行動の減少を特徴とします。
両方の感情が不確実性の感覚を含みながらも、最近「Biological Psychiatry」に掲載された研究によると、不確実な状況での不安と無気力は、根本的に異なる意思決定のパターンにつながることが明らかになっています。
研究者は1,001人の参加者に、勝つ色を当てるゲームをしてもらいました。プレイヤーは赤、青、緑に賭け、選択後、報酬が得られるかどうかが伝えられました。各色の確率は毎ラウンド変わり、プレイヤーは適応する必要がありました。
なぜこのようなゲームは人々を不安や無気力にさせてしまうのでしょうか。この研究の鍵はゲーム自体ではなくプレイヤーにあります。研究者は参加者にアンケートを行い、最も不安感や無気力感が強いプレイヤーの上位および下位25%を選びだしました。これにより不確実な時に認識のわずかな違いが意思決定にどれほど影響を与えるかが明らかになりました。
不安な参加者はゲームを予測不可能と見て、変化に追いつこうと頻繁に選択を切り替えました。無気力な参加者はゲームをランダムなものと見て、新しい選択肢を探るのをやめ、負けていても慣れた選択に固執しました。
この実験は現実の生活を反映しています。不安と無気力の間の瀬戸際には、知覚の分断があります。不安な人は環境を不確実と見ますが、それに対処しようとより多くのことを試みます。無気力な人は自分の行動が大きな違いをもたらさないと信じ、関わろうとしません。
本質的な違いは、主体性—私たちの行動が重要であるという信念にあります。
脳において、不安定さはそれが圧倒的なものでない限り、学習のきっかけとなる事がよくあります。
適切な量の不快感は、私たちの注意力と適応力を維持します。ノルアドレナリンやアセチルコリンなどの神経化学物質が協力して、多くの状況で集中と学習を助けます。したがって、不安を感じることを避けることは成長の機会を妨げる可能性があります。
しかし、過剰な不安は慢性的なストレスと過剰反応につながります。私たちは制御できないものを求めてエネルギーを無駄にしてしまうかもしれません。Biological Psychology報告の研究者は、不安との微妙な関係を発見し、ヤーーキーズ・ドッドソン曲線と呼ばれる原則を反映しています。ストレスはある程度有益ですが、その後は逆効果になります。不安のレベルが高まれば、不安が批判的思考を上回ります。
一方、無気力はエネルギーを節約できます。しかし、機会を逃す代償を払います。もちろん、時には「一歩下がる」ことや「1日休む」ことが正しい行動であるかもしれません。すべてあなたの状況次第です。
「結果がランダムで私たちの制御を超えているように見える場合、探求にエネルギーを費やすことは無駄に思え、知っていることに集中することが合理的と見えます」と著者たちは書いています。
「このアプローチはエネルギーを節約するかもしれませんが、柔軟性の欠如は関与のサイクルを継続させ、無気力の症状が続く可能性があります」
何も変わらないと仮定すれば、状況を改善する方法を探すのをやめてしまいます。
知覚が回復力を強化する方法
心理学には、統制の所在(ローカス・オブ・コントロール)という概念があります。内的統制とは、あなたの行動が未来を形作ると信じることです。外的統制とは、出来事があなたの影響外にあると見ることです。困難に直面したとき、内的統制型の人は解決策を模索し続ける傾向があります。外的統制型の人は、努力が結果を変えないと信じて譲歩する傾向があります。
私たちの個人的なコントロール感覚を超えて、苦難に意味を見出すことは、人生を変える結果のもう一つの要因かもしれません。ホロコースト生存者で後の心理療法家ヴィクトール・フランクル(Viktor Frankl)氏は、『夜と霧』の中で、ナチスの強制収容所で、苦しみの中でも意味を見出した人の方が生き延びる可能性が高かったと書いています。なぜでしょうか?それは、目的意識が、最も暗い瞬間でも進み続ける強力な理由を与えてくれるからです。
不確実性を乗り越える:実践的な戦略
不確実性をどのように認識し、それに基づいてどのように反応するかの選択肢があることを学ぶことは、自己認識への第一歩です。次に進む道が不気味で不明確に見えるときに、これらの戦略を検討してみてください:
不安を感じるとき
- 変動性のゲージを再調整:不安な心は物事がどれだけ早く変化するか(変動性)を過大評価しがち。「この状況は私が感じるほど本当に不安定なのか?」と自問する練習をしてみてください。
- 不確実性への耐性を養う:不安を感じたときにすぐに確実性を求めず、不確実な状態を短期間受け入れて、徐々に快適さのレベルを高めることを試みてください。
- 対処カードを作成:不確実性に圧倒されたと感じたら、事前に計画を立てておきましょう。「予測できない結果に不安を感じたとき、すべての変化が即座の行動を必要としないことを自分に言い聞かせます」
- 長期的な情報統合を実践:新しい情報一つ一つに反応するのではなく、決定を下す前に時間をかけてデータを集めることを試みてください。
無気力を感じるとき
- コントロール感を高める:タスクを小さく、取り組みやすいステップに分解し、自分の行動と結果の間にある因果関係を実感できるようにしましょう。
- 自己効力感を育む:小さな成功を祝って、「自分の行動には意味がある」と実感を積み重ねていきましょう。
- 探索行動を徐々に増やす:結果が完全にランダムであるという認識に挑戦し、低リスクな状況で意図的に新しい方法を試してみましょう。
- 証拠ログを記録:行動が直接的にポジティブな結果につながった事例を記録し、出来事が主に偶然の結果であるという思い込みを打ち消しましょう。
すべての人に共通するアプローチ
- 感情を情報として使う:不安や無気力などの精神状態は単なる反応ではなく、役立つシグナルであることを忘れないでください。「この感情は私が必要としているものについて何を教えてくれているのだろう?」と自問してみましょう。
- 不確実性を捉え直す:不確実性を「脅威」(=不安)や「無意味さの証拠」(=無気力)としてではなく、「学びと成長のチャンス」として捉えてみましょう。
最後に:「次の正しい一歩を踏み出す」
道が見えにくくなったときは、自分に問いかけてみましょう:
- 今、私は脅威を過大評価していないだろうか?(=不安)
- 自分の力を過小評価していないだろうか?(=無気力)
- 今すぐできる「もっと知るための一歩」は何だろう?
すべての道筋を見通す必要はありません。
大切なのは「次の一歩」——それは、あなた自身が選び取ることができるのです。
(翻訳編集 日比野真吾)
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