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「冬に弱い体」は夏に変える──陽虚・冷え体質の養生法

陽虚体質の人は寒さに弱く、手足が冷えやすい──火炉の火が弱まったような状態です。このような方は、冬になると特に手足が冷たくなり、夜はなかなか寝つけず、冷たい飲み物を飲むとすぐに下痢をし、気分まで沈みがちになります。免疫力も低下しやすくなります。

もし、あなたにも思い当たる節があるなら、自然界から陽気が最もあふれる「夏」のエネルギーを借りて、体内の陽気を補い、体質を整えるのが最も効果的な方法です。まさに今、この盛夏こそがチャンスです。
 

なぜ陽虚体質は「冷え」を感じやすいのか?

「陽虚」とは、わかりやすく言えば「体の熱エネルギーが不足している」状態のこと。中医学では、陽気は体内の「火炉」にたとえられ、体を温めたり、エネルギーの流れを推進したり、さまざまな生命活動を支える働きを担っています。

しかしこの「火」が弱まると、次のような症状が現れやすくなります。

  • 冬になると手足が冷え、風にも敏感に反応する
  • 夏でもエアコンでお腹が冷えて痛くなる
  • 冷たい食べ物ですぐに下痢を起こす
  • 胃腸が弱く食欲が出ない
  • トイレが近く、手足に力が入らず疲れやすい

舌の色が薄く白っぽく、ぽっちゃりしていて水分が溜まりやすい感覚がある
これらの問題は冬に悪化しやすいものですが、実は「原因」は冬ではなく、「体内の陽気不足」にあります。

体をさするイメージ図(Shutterstock)

 

なぜ夏は「陽気を補う」のに最適なのか?

1. 毛穴が開き、陽気が外へと巡り、吸収の通路が開かれる

冬は毛穴が閉じているため、食べ物や薬の効果が体内に浸透しにくいのに対し、夏は毛穴が開き、経絡がスムーズに流れ、気血も活発になります。つまり、外からの陽気が体内に栄養や効果を「押し込む力」を持っているということです。例えるなら、冬は窓も扉も閉まっているので、どんなに良いものでも家の中には入れませんが、夏はすべて開け放たれているため、良いものをスムーズに届けることができます。

2. 気血の巡りが活発で、薬膳・食材の効果が届きやすい

中医学では「気は血の将、血は気の母」とされ、気血の流れが良ければ栄養の運搬もスムーズになり、食養生や薬の効果もきちんと現れます。陽虚の人は、他の季節では陽気が弱いため、補ってもなかなか効果が出にくいのですが、夏の「外の陽気」の力を借りることで、摂取した栄養や薬効が体の必要な場所へ届きやすくなるのです。

3. 体の陽気を引き出し、気血の通りを良くする

夏の陽気は自然に上昇する性質があり、それにより体の奥に眠っていた陽気も外へと引き出されやすくなります。たとえば「足湯」「朝の背中日光浴」「生姜湯を飲む」などの養生法は、冬にやるとただの「保温」になりますが、夏にやると「陽を活かす」「気血を流す」手段となります。

4. 陽気が脾を助け、湿を排出しやすくなる

中医学で「脾は後天の基本、中陽の中枢」と呼ばれる重要な臓器です。普段は湿気で弱りがちな脾ですが、夏の外陽の力をうまく使えば、脾の陽気を活性化しやすくなります。つまり、冷たいものや脂っこいものを避ければ、夏の陽気が逆に脾陽を「後押し」してくれるので、寒湿を体外に排出することができ、脾の機能を健やかに保つ効果が期待できます。

例えば、同じ「生姜と山芋の粥」でも、夏と冬では違うのです。冬にこの粥を食べると体が温まりはするものの、すぐに冷めてしまいます。しかし夏に食べれば、体に軽く汗がにじみ出て、脾胃にたまった寒湿や熱毒が自然と排出されます。お腹が軽くなり、張りも取れ、顔色さえ明るくなるという実感が得られることも。これは、陽気の力を借りて経絡が開き、毛穴が開いているからこそ得られる効果で、秋冬には薬を使ってようやく発汗できるような働きが、夏には自然に発揮されるのです。

つまり、少しだけ温かい食事を心がけたり、体を温めるような行動をとるだけで、他の季節よりも吸収が良く、効果も早く現れる「倍速養生」が実現できるのです。夏にこのような「順陽」の調整をしておくことで、冬になっても寒さがそれほど苦にならず、足先の冷えも減り、「本当に体が温まった」実感が得られます。

次は、具体的にどのような習慣が効果的かをご紹介します。
 

朝のやさしい陽光を利用して「陽気を補う」

太陽の光は、自然界で最も直接的かつ純粋な「陽気」の供給源です。朝日が昇り始めた頃や、夕方の柔らかな陽光が差す時間帯──つまり、軽く散歩するのに最適な時間帯に、帽子をかぶって外を少し歩くだけで、たった5〜10分でもやさしく体内に陽気を取り込むことができます。特に背中の中央を通る「督脈」は、全身の陽気を統括する重要な経絡で、この部分に陽光を浴びることで、体の芯から温かくなってくるのが感じられます。

(Shutterstock)

また、ベランダなどでゆったりとした通気性の良い服を着て、背中を陽の光に5分ほど当てるのも効果的です。できれば少し体を伸ばしたり、ゆるやかな動きを加えたりすることで、陽気の流れがさらにスムーズになり、体の深部までしっかりと暖まっていきます。これは単なる「日向ぼっこ」ではなく、体に陽気を取り入れる本格的な養生法なのです。

特に夏の朝は、1日のうちで最も陽気が盛んになる時間帯です。このタイミングに合わせて早起きし、軽く体を動かし、温かい食事や飲み物をとることで、陽気を自然に体へ取り込み、脾の陽気を目覚めさせ、一日を元気にスタートさせることができます。

注意:暑さに弱い人や、体力が極端に落ちている人は無理をせず、病気をお持ちの方は事前に医師にご相談ください。
 

早起きと朝の活動──陽気のリズムに合わせた生活を

陽虚体質の方が夜更かしをしたり、朝起きるのが遅かったりすると、陽気が一番活発に生まれる「ゴールデンタイム」を逃してしまいます。そこで、夏から少しずつでも早寝早起きの生活リズムを整えることが大切です。

毎晩23時までには就寝して、陽気の回復を十分に図り、朝は6時頃に起きて軽くストレッチや散歩、背中の日光浴などを取り入れましょう。その後、生姜湯や味噌汁などの温かい飲み物で「体に火を入れる」ことで、自然に陽気が立ち上がり、一日を通して活力を維持しやすくなります。

温かい飲み物で陽気を整えましょう(Shutterstock)

 

温かい食材で「胃を温め、陽気を補う」

日本の食文化は比較的あっさりしており、冷たい料理や生食が好まれる傾向がありますが、陽虚体質の方にとっては、こうした食事がかえって寒気を増やし、体を冷やす原因になってしまいます。とはいえ、日本の食材の中にも、陽虚の体質に合った食べ物はたくさんあります。ちょっとした工夫や調理法を意識するだけで、無理なく毎日の食卓に取り入れられます。

例えば、温かい味噌汁に生姜のスライスや刻みネギを加えるだけでも、胃を温め寒気を散らす効果があり、脾の陽気を刺激します。朝晩一杯の温かいスープは、まるで体に火を灯すような力強いサポートになります。

陽を補いたいときには、うなぎ・牛肉・鶏肉など、エネルギー価の高い良質なたんぱく質を積極的に摂りましょう。日本ならではの「うなぎの蒲焼き」「牛鍋」「親子丼」などは、味わい深く体を芯から温めてくれる料理。特に、腰が重だるい、冬に手足が冷えやすい方にはぴったりです。

うなぎの蒲焼き(Shutterstock)

山芋、かぼちゃ、れんこんなどの根菜は、脾を助けながら体の余分な湿気を取り除く働きもあります。山芋とかぼちゃを煮込んでとろけるような甘さに仕上げたり、れんこんとエノキを炒めるなどの料理は、優しくも力のある一皿になります。

日常的には、黒豆ご飯、なつめ入り甘酒、生姜黒糖ドリンクなどもおすすめです。これらは手軽に作れる上に、毎日少しずつ体の気と陽気をじんわりと温めてくれます。

冷たいそばや寿司が好きな方も、完全に我慢する必要はありません。大切なのは、「温性のある副食材」を添えることです。たとえば、冷たいつゆにごまペーストや七味を加えたり、寿司に温かい味噌汁や生姜スライスを合わせたりすることで、脾胃への冷えの負担を和らげることができます。
 

まとめ:季節に寄り添い、体は静かに変わる

陽虚体質は病気ではありませんが、放っておくと冬の寒さがますますこたえ、免疫力も下がりがちになります。しかし、私たちの暮らす日本には四季があります。夏という陽気が満ちる季節こそ、陽気を補う最良のタイミングです。
特別な薬を使う必要はありませんし、生活をすべて変える必要もありません。ほんの少し「陽気とつながる」意識を持つだけでよいのです。たとえば:

  • 朝の散歩でやさしい陽を浴びる
  • 足湯で体を温める
  • 温かいごはんをしっかり食べる
  • 早起きしてリズムを整える
  • 生ものや冷たい物を控える

これらを積み重ねることで、体は少しずつ変わっていきます。

この夏が、体質改善のきっかけとなり、手足が温まり、心身が元気を取り戻す第一歩となりますように。
 
 (翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。