立秋を過ぎても暑さが残り、胸がつかえて食欲が落ちやすい時期。今年は「肺が弱まりやすく、肝が強まりやすい」年回りといわれています。肺だけを補おうとしても効果は上がりにくく、「肝をやわらげ、脾を整え、そのうえで肺を養う」ことが養生の要です。
そんなときにぴったりなのが、茗荷と色鮮やかな夏野菜を焼き浸しにした一品。さっぱりとした清涼感で食欲を呼び覚まし、肝の働きを整え、胃腸をやさしく助け、肺に潤いを与えてくれます。
見た目も鮮やかで、食卓に涼を添えつつ、季節の養生にもかなう、初秋の食卓に欠かせない知恵の料理です。
五行の「金」が弱まる年、肺が虚しやすい
中医学では、今年の秋は「金の気が不足し、木火が強まる」年と考えられています。肺は五行で金に属し、肝は木に属します。本来なら金は木を抑える力を持ちますが、肺気が弱まるとその働きが発揮できず、逆に肝の勢いに押されてしまいます。さらにその影響で、肝が脾(土)を制し、結果として肝・脾・肺のバランスが乱れるのです。
この不調のあらわれとして、胸のつかえや息苦しさ、気分の不安定、食欲不振などが起こりやすくなります。
今年の養生で大切なのは、「肝をやわらげ、脾を安定させ、そのうえで肺を養うこと」。肝気がやわらげば脾胃が健やかに働き、脾が整えば肺気が生まれます。肺が充実してこそ、秋の乾燥にも対応できるのです。
食養生では、「五味は五臓に入る」という原理を活かすとよいとされます。
- 辛味は肺に入り、木を抑える力を助ける
- 酸味は肝に入り、肝の勢いをやわらげる
この二つのバランスの良い組み合わせが、今年の秋の養生に最適です。

日本の食材でおすすめなのが、茗荷と梅干しの組み合わせです。
- 茗荷は、辛涼でわずかに苦みをもち、肝の滞りをほぐし、熱を冷まし、気の流れを整えるはたらきがあります。
- 梅干しは酸味と塩味を兼ね、肝に働きかけて気を収め、食欲を高め、体に潤いを与えるとされます。
一方が気を発散させ、一方が引き締める。辛と酸が合わさることで、肝と脾のバランスを整え、肺気を助けるという理想的な食養生になるのです。
養生レシピ:茗荷と梅干しの彩り野菜焼き浸し
材料(2〜3人分)
- 茗荷……3個
- 梅干し……2個(種を取り除く)
- なす……1本
- ミニトマト……6〜8個
- アスパラガス……4本
- きのこ類……数個(しめじ・しいたけなど好みで)
- だし……200ml
- 醤油・みりん……各少々
作り方
- なすは一口大に切り、塩水に浸けてアクを抜く。その他の野菜も食べやすく切る。
- フライパンに少量の油を熱し、なすをこんがりするまで焼く。続いて茗荷、アスパラ、きのこを加えて炒め、最後にミニトマトをさっと炒め合わせる。
- 別の器で、だしに醤油・みりんを加えて調味し、梅干しを種を取って叩き、よく混ぜ合わせる。
- 熱いうちに野菜を浸し汁に漬け、30分ほど置く。常温でも冷蔵庫で冷やしても美味しい。
養生ポイント
- 茗荷:辛涼で肺に入り、肝の滞りをほぐし、熱をさまし、気の巡りをよくする
- 梅干し:酸味が肝に作用し、気を収めて柔らげ、食欲を高め、潤いを与える
- なす・きのこ:胃腸を助け、脾を健やかにし、気を補いながら乾燥を防ぐ
- ミニトマト・アスパラ:熱を冷まし、体に潤いを与え、肺や皮膚を健やかに保つ
全体として、「辛」と「酸」を合わせることで肝と脾のバランスを整え、健脾養肺へとつなげる一皿です。特に、初秋の残暑で食欲が落ちたり、胸がつかえて気分が不安定になりがちな人におすすめです。
彩り豊かで、さっぱりとした口当たりの「茗荷と梅干しの彩り野菜焼き浸し」は、日常の副菜としても取り入れやすい一品です。涼やかで食欲を引き出しながら、しっかりと季節に合わせた養生効果を持つ、まさに日本の食文化に息づく五行養生の知恵が詰まった料理といえるでしょう。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。