茶碗蒸し 骨を育てる冬の腎養生
骨粗しょう症と聞くと、多くの人はまず「カルシウムを補わなければ」と考えます。しかし、そもそもなぜ骨はもろくなり、弱くなっていくのでしょうか。
中医学では、骨の強さは単なる栄養素の問題ではなく、体に本来備わっている「骨をつくる力」がきちんと働いているかどうかが重要だと考えます。
『黄帝内経』には「腎は骨をつかさどり、髄を生む」と記されています。骨がしっかりしているかどうかは、骨髄が十分に満ちているかにかかっており、その骨髄を満たす力の源は腎の精気です。つまり、骨の根本は骨そのものではなく、「腎」にあるということです。
冬は、腎を養い骨を強くする最も大切な季節
五行では、冬は「水」に属し、腎と深く関わる季節です。天地が閉じ、万物が内に収まるこの時期は、体もまた精を蓄え、骨髄を養い、根本から回復するための大切な時間となります。
冬場に、胃腸に負担をかけない穏やかな方法で体を養えば、 他の季節よりも、栄養を「骨の力」として取り込みやすくなります。
茶碗蒸しは、まさに冬にふさわしい滋養の形です。きめ細かく、やさしく温かい食感で、よく噛まなくても食べられ、胃腸に負担をかけることなく、栄養をゆっくり体の奥まで届けてくれます。
体力の落ちた方やご高齢の方、消化力が弱い方にも特におすすめです。
骨を丈夫にするには、「腎」だけを補えばよいわけではない
中医学の養生は、決して一か所だけを強化する考え方ではなく、体全体の巡りを重視します。そこには「虚しているときは、その母を補う」という大切な原則があります。
腎は五行では「水」に属し、その母は「金」です。肺は「金」に属し、金は水を生みます。つまり、腎の精気が不足して骨髄が弱っているとき、腎そのものはすでに虚しているため、腎だけを直接補おうとしても、かえって体に負担をかけてしまうことが少なくありません。そのような場合は、まず肺を養い、肺から腎を支えるほうが、効果が出やすいのです。
さらに、肺の土台となるのが脾です。脾は「土」に属し、土は金を生みます。脾が元気であれば肺の働きが充実し、肺が充実すれば腎の水が養われ、腎の水が満ちてこそ骨髄が生まれ、骨は強くなります。
このように、本当に骨を丈夫にする食養生は、脾・肺・腎の三つを同時に整えることが欠かせません。その視点で見ると、茶碗蒸しの素晴らしさがよくわかります。
なぜ茶碗蒸しが骨を養うのか
- 卵:甘味で性質が穏やか、脾と腎に入り、精血を養って骨髄を生み出す土台となります。
- えび:温性で熱がこもらず、腎に入り精を補い、骨を生み出す力に勢いを与えます。
- 干ししいたけ:肺と脾を助け、栄養をしっかり吸収して気血に変え、肺と腎を養います。
- にんじん:脾と肺に入り、気血を補いながら潤いを与えます。
- 枝豆:脾と肝を整え、気を補って、体の巡りを支えるエネルギー源となります。
これらの食材は体の中で、脾が消化吸収を担い、脾が養われることで肺が充実し、肺が充実すると腎の水が生まれ、腎が骨をつかさどることで骨髄が育つ――という「骨を生む流れ」を自然に作り出します。
これは、体が本来もっている「自ら骨をつくる力」を、食養生によって呼び覚ます方法なのです。
レシピ:骨を養う滋養「茶碗蒸し」
材料(1~2人分)
- 卵……2個
- むきえび……6~8尾
- 枝豆(さやから出したもの)……ひとつかみ
- 干ししいたけ……1枚(戻して細かく刻む)
- にんじん……少量(みじん切り)
- 昆布またはかつおだし……約300ml
- 塩またはしょうゆ……少々
- ごま油……数滴(香りづけ)
作り方
- 卵を溶きほぐし、温めた出汁を加えてやさしく混ぜ、こしてなめらかにする。
- しいたけとにんじんを軽く下ゆでし、えびと枝豆と一緒に器に入れ、卵液を注ぐ。
- ふたをして、湯気の立った蒸し器で弱火12~15分、中心がやっと固まる程度まで蒸す。
茶碗蒸しは、一時的に滋養するためのものではなく、日々の体調を整えるために継続して取り入れるのに適しています。 骨密度の低下や腰・膝のだるさが気になる方、ご高齢の方、脂っこい滋養食が苦手な方、また冬に冷えやすく、疲れやすく、関節がこわばりやすい方にもおすすめです。