ランニングや球技、筋力トレーニングの後に痛みが出ても、単なる運動後の不調だと思う人は少なくありません。しかし、痛みが特定の場所に集中し、休んでも改善しない場合は、疲労骨折に注意が必要です。
骨が完全に折れていなくても骨折
台湾の亞東紀念病院の整形外科・外傷科医師、陳鈺泓氏は、エポックタイムズの取材に対し、一般的に骨折と聞くと、転倒や外部からの衝撃によって骨が折れることを思い浮かべる人が多いと話しています。しかし、疲労骨折はそれとは異なり、骨に長時間、繰り返し負荷がかかることで、徐々に小さなひびが蓄積して起こるものです。
同氏はさらに、骨は毎日修復を繰り返していますが、ランニングやジャンプなどによる繰り返しの衝撃が骨の修復速度を上回ると、小さなひびが徐々に蓄積し、最終的には骨が折れてしまう可能性があると説明しています。
下肢の骨に最も多く発生
陳氏によると、疲労骨折は脛骨(すねの骨)、中足骨(足の甲の骨)、大腿骨頸部(太ももの付け根に近い部分)に最も多く見られます。これらはいずれも、歩行やランニングの際に繰り返し衝撃を受ける部位です。
同氏は診察の際、ランニングを始めたばかりの人や、スポーツジムでスピンバイクを始めた人、チームで高強度のトレーニングを行った人などが、持続する痛みを訴えるケースによく遭遇するといいます。こうした痛みは、休んでもあまり改善しないことがあります。
3段階で現れる症状
疲労骨折の痛みは通常、けがをした部位に集中し、活動量が増えるほど強くなります。休むことで多少和らぐことはありますが、一般的な運動後の筋肉痛とは異なります。
ただし、疲労骨折は初期にはあまり痛みを感じないことが多く、見過ごされやすい傾向があります。症状は次のように現れます。
- 初期:運動中に鈍い痛みやだるさを感じますが、休むと多少改善します。
- 中期:局所を押すと痛みがはっきりと現れ、運動のパフォーマンスにも影響が出始めます。
- 後期:歩いたり、安静にしたりしているときにも痛みが生じ、腫れが現れることもあります。
陳氏は、多くの人が「まだ我慢できる」と考えて運動を続け、その結果、けがをさらに悪化させてしまうと注意を促しています。
X線検査では見つからないことも
上記のような痛みが続いている場合、X線検査で異常が見つからなくても、疲労骨折を完全に否定することはできません。陳氏によると、疲労骨折の初期には骨の変化がはっきりしないため、X線検査では確認できないことがあります。
臨床では、まず身体診察によって圧痛のある部位を特定し、そのうえで必要に応じてMRI(磁気共鳴画像法)や骨シンチグラフィーなどの検査を行い、詳しく判断します。
特に2つの部位は放置しないで
陳氏は、大腿骨頸部と脛骨前面の疲労骨折は、特に放置してはいけないと注意を促しています。
大腿骨頸部は血液の供給が比較的少ないため、適切な処置が遅れると完全骨折に進行したり、大腿骨頭壊死を引き起こしたりする可能性があります。また、脛骨の前面も繰り返し負荷がかかりやすく、完全骨折に進行する恐れがあります。
そのため、この2つの部位に持続的な痛みがある場合、特に休んでも改善しない場合は、すぐに運動を中止し、医療機関で検査を受ける必要があります。
どのような人がなりやすい?
疲労骨折のリスクは、大きく分けて2つの要因から生じます。骨にかかる負荷が大きすぎることと、骨そのものの耐久力が低下していることです。年齢層によって、よく見られる原因も異なります。
1. 骨にかかる負荷が大きすぎる
陳氏によると、若い人の疲労骨折は、使い過ぎが主な原因となることが多いといいます。例えば、急にトレーニング量を増やすこと、繰り返し走ったり跳んだりすること、姿勢が悪いこと、運動用具や靴が合っていないことなどが、リスクを高める可能性があります。ランナー、ダンサー、軍隊の新兵、球技の選手などは、リスクが高いとされています。
運動量だけでなく、足そのものの構造や体重のかかり方も、リスクに影響する可能性があります。2024年に発表されたシステマティックレビューでは、32件の研究を総合的に分析した結果、ハイアーチ、足の過度な内反や外反、中足骨が長いことや角度が大きいことなどが、足にかかる力の分布を変え、中足骨の疲労骨折のリスクを高める可能性が示されました。
ただし、研究によって測定方法や結果に違いがあるため、今後さらに研究を重ねて確認する必要があります。
2. 骨の耐久力が低下している
中高年の疲労骨折は、骨量の低下と関係していることが多いとされています。骨粗しょう症、閉経後のホルモン変化、長期的な栄養不足などによって、これまで問題なく行えていた活動でも、骨の耐えられる負荷を超えてしまう可能性があります。
陳氏は、女性は月経周期にも注意するよう呼びかけています。月経が長期間にわたって不規則な場合、ホルモンバランスの乱れを反映している可能性があり、骨の健康に注意が必要であることを示すサインにもなります。
また、糖尿病のある人、長期間ステロイド薬を服用している人、体重が軽すぎる人、摂食障害のある人、ビタミンDやカルシウムの摂取が不足している人、喫煙者も、疲労骨折のリスクに注意が必要です。これらの要因は、骨の質や修復能力に影響を及ぼす可能性があります。
予防と回復のための方法
疲労骨折を予防するには、骨に急激に大きな負荷がかかるのを避けるとともに、バランスの取れた栄養を摂取して骨の健康を維持することが重要です。
1. 運動量を段階的に増やす
陳氏は、運動量を増やす際は少しずつ段階的に増やし、1週間あたりの増加率を10%以内に抑えることで、骨が負荷に適応する時間を確保することを勧めています。
2. 自分に合った運動靴を選ぶ
運動靴は、足にかかる衝撃に影響します。台南の正欣整形外科クリニック院長、蕭又寧氏は、エポックタイムズの取材に対し、靴底が薄すぎると、足や膝にかかる衝撃が大きくなり、クッション性も不足する可能性があると話しています。一方、靴底が硬すぎると歩き方に影響し、柔らかすぎると十分なサポートが得られないことがあります。
同氏は、ある程度の厚みと弾力性があり、自然に曲がって足のアーチを支えられる靴を選ぶことを勧めています。また、靴底の摩耗状態にも注意し、適切なタイミングで交換することが大切です。研究では、ランニングシューズは累計500~800km走ったら交換すべきだと指摘されています。
3. 骨に必要な栄養を十分に摂る
骨を維持し、修復するためにも、十分な栄養が必要です。陳氏は、カルシウムとビタミンDを十分に摂取することを勧めており、例えば、カルシウムを1日1000mg、ビタミンDを1日800~1000 IU摂取することを提案しています。
蕭氏は、日常の食事から骨の健康に役立つ栄養素を摂取することを勧めています。例えば、ホウレンソウやブロッコリーにはカルシウムとビタミンKが含まれており、骨の強度を維持し、修復するのに役立つとされています。サケにはビタミンDとオメガ3脂肪酸が含まれており、炎症を抑えたり、カルシウムの吸収を助けたりする可能性があります。
さらに、カルシウム、カリウム、ビタミンCを含む大根や、ビタミンC、ビタミンK、リコピンを含むトマトも、骨の健康維持に役立つとされています。
4. けがをした後は骨が修復する時間を十分に確保する
陳氏によると、疲労骨折の多くは手術を必要とせず、治療では骨にかかる負荷を軽減することが重要です。痛みが少し和らいだからといって、すぐに高強度の運動を再開してはいけません。
骨の修復には通常1~3カ月ほどかかります。その後、段階的に活動を再開し、リハビリテーションを通じて動作や筋力の配分を調整することで、再びけがをするリスクを減らすことができます。
研究でも、疲労骨折への対処が適切でない場合、運動パフォーマンスに影響したり、選手が競技に復帰できない期間が長引いたり、再発リスクが高まったりする可能性が指摘されています。
5. 痛みが続く場合は我慢しない
陳氏は、局所的な痛みが2週間以上続く場合は、我慢せずに医療機関で検査を受けるよう注意を促しています。
同氏は次のように話しています。「疲労骨折は『蓄積型』のけがです。早期に発見できれば、休むだけで回復する可能性がありますが、重症化するまで放置すると、手術が必要になったり、長期的な運動能力に影響が出たりすることもあります」
(翻訳編集 華山律)
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