辛いものの過剰摂取は腸への負担を増やし、腸の機能低下を招く可能性があります。中医師によると、強い辛味の食事は腸のぜん動運動に影響を与えるだけでなく、腸の老化を早めることにもつながり、結果として女性の内分泌系にも影響し、閉経のリスクを高める可能性があるとされています。食習慣を見直し、辛いものの摂取を控えることは、腸の健康維持に役立つと考えられます。
祖伝中医学を受け継ぐ楊医師(Garry Yang)は、長年の臨床経験から、過度な辛味の刺激は腸の老化を早め、腸の機能を弱める可能性があり、その影響は消化器系だけにとどまらないことが多いと指摘しています。
辛いものは健康に良いのか?
「辛いものは健康に良い」という意見と、「中医では患者に辛いものを控えるよう勧めることが多い」という見方がありますが、楊医師は次のように述べています。「中医学の観点から言えば、辛味は確かに食欲や消化機能を刺激しますが、どんなものにも良い面と悪い面があります」
楊医師の観察では、辛いものを好む人ほど次第に刺激を強める傾向があり、「今日はこの程度の辛さ、数日後にはさらに強く」といったように、辛さのレベルが徐々に上がっていくといいます。
「これは一種の依存の問題です」と楊医師は率直に語ります。長期間にわたって繰り返し腸や胃を刺激すると、体は無限にそれに耐えられるわけではありません。
「例えば皮膚でも、若い女性が化粧品を使いすぎて刺激が多くなると、老化が早まることがあります」
同様に、腸の内壁も一種の「皮膚」といえ、過剰な刺激が続くと修復力が徐々に低下していきます。
臨床では、特に辛い食事が多い地域で、腸の早期老化がより顕著に見られるといいます。「湖南や四川の患者さんでは、腸の機能低下が非常に早く、40代ですでにかなり進んでいるケースが多いです」「腸のぜん動運動がすでに遅くなっていて、一般の人の半分程度のスピードになっていることもあります」
楊医師はこれを長期的な刺激の反動だと説明します。「刺激が繰り返されることで、最終的には腸の機能が弱まり、動く力自体がなくなってしまうのです」
一方で、比較的あっさりした食事が多い広東などでは、一般的に60歳前後から機能低下が始まる人が多いとされています。
なぜ一部の病気では辛いものを控えるのか?

臨床での治療について、楊医師は中医学における体質調整と辛味制限の関係をさらに説明しています。
患者の症状が「陰寒」や「湿寒」に属する場合には、「辛味で引き上げて活性化する」必要があるといいます。
一方で、症状自体が「上に向かう」「外に広がる」性質を持つ場合は、対応が異なります。
その理由について、楊医師は分かりやすくこう説明します。「例えば高血圧の場合、脈は上や外に向かう性質があります。薬はそれを内側へ引き戻す働きをしますが、同時に辛いものを摂ると、脈を外へ発散させてしまい、結果的に薬の作用を弱めてしまうのです」
このように、中医学で辛いものを控えるよう指導するのは一律ではなく、処方する薬との関係が深く関わっています。
腸のぜん動が遅くなると 排便だけの問題ではない
腸のぜん動運動が遅くなると、その影響はさまざまな面に広がります。
「ぜん動が遅いということは、消化能力が低下しているということです。栄養の吸収力も落ちます」と楊医師は指摘します。「食べたものが腸内に長く留まり、不要な老廃物も通常より数日長く腸にとどまります」その結果、本来は排出されるべき物質が再び吸収され、体に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、ぜん動が遅くなった腸は、次第に太くなる傾向も見られるといいます。「動きが遅く、食べ物がとどまった状態でさらに食事をすると、排出が追いつかず腸が拡張してしまいます。腸が太くなるのは良い状態ではありません」
また、長年の臨床経験の中で、糖尿病の患者には腸のぜん動が遅いケースが多く見られるとも述べています。
症例:辛いもの好きの女性に起きた閉経
楊医師は印象に残った症例を紹介しています。「四川出身の40代女性で、とにかく辛いものを多く食べ、辛くないと食事ができないほどでした」このような食習慣は家庭全体にも見られ、家族全員がほぼ毎食辛いものを欠かさない生活だったといいます。
この患者は40代で複数の不調を抱え、月経が止まり、乳腺にも問題が生じていました。複数の医療機関を受診したものの、大きな改善は見られませんでした。
診察の結果、彼女の小腸のぜん動速度は正常の半分程度に低下していました。消化吸収機能の低下に加え、体重を気にして食事量が少なかったこともあり、栄養不足の状態となり、40代で月経が止まり、乳房内の液体循環も滞ってしこりができていたと考えられます。
楊医師は中薬で腸のぜん動や消化吸収を整える一方、辛いものの摂取を徐々に減らすよう指導しました。
数か月後、患者の腸の機能は徐々に回復し、月経も再び見られるようになりました。
腸の老化は回復できるのか?
腸の機能が「完全に回復するか」という点について、楊医師は率直に「非常に難しい」と述べています。「この症例でも、辛いものを減らして腸を休ませ、薬でサポートすることで、7〜8割程度まで回復すれば良好で、9割まで回復すれば非常に理想的といえます」
食事面でのアドバイスはシンプルです。刺激を減らし、腸に休息を与えることです。
「できるだけ刺激の強いものを控え、食事は1日3回にして、間食はできるだけ避けましょう」
また、消化しやすい食品を選び、必要に応じて消化を助ける薬を取り入れることで、胃腸をサポートします。
さらに、広東式のスープやお粥は比較的穏やかで、多くの人に合いやすいといいます。「山芋、ユリ根、ハスの実などは、スープにしたりお茶として飲むのも良いでしょう」また、「多くの人は陰虚傾向にあるため、山芋や葛、タロイモなどを取り入れることも、体を潤す助けになる可能性があります」と補足しています。
刺激となる要因は辛味だけではありません。「お酒、喫煙、コーヒーなど、刺激の強いものはできるだけ減らすことが望ましいでしょう」無理なく段階的に減らしていくことが大切です。
『黄帝内経』には「食飲有節,起居有常,不妄作労。」(飲み食いはほどほどに、暮らしのリズムを整え、心身を無謀にすり減らさないこと)と記されています。
辛いものが好きな方も、まずは少し控えることから始めてみることで、腸と体に休息と回復の余地を与えられるかもしれません。
(翻訳編集 解問)
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