このような悩みを抱えたことがある人は少なくありません。毎日きちんと歯を磨き、デンタルフロスも使っているのに、それでも口臭を指摘されてしまうというケースです。多くの人は口腔や歯周の問題だと考えがちですが、中医学の観点では、口臭は単なる口の問題にとどまらず、体からのサインである場合があると考えられています。
口臭はどこから来るのか?
家伝の中医師である楊曉光医師によると、口臭は「胃熱」と関係していることが多いといいます。「中医学では、口臭の主な原因は胃熱と考えますが、もちろん他の原因もあります」
楊医師は次のように説明します。「胃熱になると、胃だけでなく、歯ぐきが荒れやすくなったり出血しやすくなったり、口腔粘膜や舌に潰瘍ができやすくなります。また、口の渇きや苦み、目の乾きなども見られます」これらの症状は一般的に「上火(体内の熱がこもった状態)」と呼ばれることがあります。
さらに、胃熱は口の症状だけでなく、「脈が速く強くなる」「たくさん食べても満足感が得られない」といった変化にもつながることがあります。
こうした症状から、糖尿病の前兆ではないかと心配する人もいます。楊医師は「糖尿病の初期には胃熱の状態が見られることが多いです。胃熱は糖尿病や高血圧へと進む可能性もあります。ただし、胃熱は体のさまざまな部分に影響しやすく、どこに不調が出るかは個人の弱い部分によります」と述べています。
なぜ胃熱が起こるのか?
楊医師によると、胃熱は多くの場合、腸の働きがスムーズでないことと関係しています。
通常、「健康な状態では胃は熱を帯びません。多くの子どもは口臭や胃熱がありませんが、体調を崩したときには口臭が出ることがあります」例えば、小児の食べ過ぎによる不調は、「胃熱であり、小腸の流れが滞っている状態」と説明されます。
小腸の動きが鈍くなり、食べ物がうまく下へ送られないと、体内に滞りやすくなります。便秘などで食べ物が長くとどまると、胃熱につながることがあります。「スムーズに流れていれば詰まらず、熱もこもりにくいのです」と楊医師は述べています。
「上火」なら冷たいものを食べるべき?
「上火」と聞くと、冷たい性質の食べ物を多くとればよいと考える人もいます。しかし楊医師は「それは適切とは言えません。胃熱は実際には腸の働きが弱く、冷えているために消化がうまくいかないことが原因で起こる場合があります」と説明します。
食べ物がうまく流れず胃にとどまると、「ゴミが溜まると中で熱がこもるのと同じように」熱が発生するという考え方です。
風邪をきっかけに起きた口臭
楊医師が診た若い患者の一例では、大学生の男性が風邪の後に口臭を感じるようになりました。「舌に異常が出て、常に満腹感が得られない状態でした」風邪が治っても口臭は続き、自分でも気になるほどでした。
脈を診たところ、腸の動きが通常より遅く、「触診で腸の滞りが感じられた」といいます。
原因について楊医師は、風邪のときの食生活が影響したと考えました。「風邪で消化機能が弱り、食欲も排便も低下します。その後、回復するとすぐに普段の食事に戻ってしまうのです」
この患者は体力を取り戻そうとして、回復直後に牛肉を多く摂っていました。しかし消化機能が十分に回復していない状態では、「牛肉は栄養価は高いものの消化に時間がかかるため、胃の中で停滞して発酵し、においの原因になる可能性があります」
「若い方だったので、比較的短期間の調整で改善が見られました」楊医師は「二神湯」を基本に、山楂や神曲、鶏内金を加えた処方で消化を助けました。約1週間半の服用で満腹感の問題が改善し、口臭も大きく軽減しました。
血行不良も胃熱や口臭の原因に
楊曉光医師は、口臭は単一の原因ではなく、体全体のバランスに関係すると考えています。肝や胆、脾など複数の臓腑が関与する可能性があります。
臨床では比較的よく見られる原因の一つとして、血流の滞りも挙げられます。「静脈の流れが滞り、動脈から静脈への循環がスムーズでない状態です」
胃の周囲には多くの動脈血が集まっていますが、「動脈の血は熱を帯びやすく、それがうまく静脈へ流れないと、胃に熱がこもると考えられます」
慢性胃疾患の患者が回復した例
楊医師は60代の女性患者も診ています。長年、胃の不調に悩まされており、「げっぷ、胃酸過多、口臭、飲み込みにくさ」などの症状がありました。
この患者は胃の入り口の開閉機能がうまく働かず、長期間にわたり複数の医療機関を受診していましたが、根本的な改善には至っていませんでした。
脈診の結果、胃潰瘍はないものの、出血やびらんを伴う慢性胃炎が比較的強い状態と判断されました。「放置すれば胃潰瘍に進行する可能性もあります」
治療では「半夏瀉心湯」を基本に調整し、血流を促す生薬を加えて循環の改善を図りました。「静脈の流れを整え、動脈の血がスムーズに流れるようにすることを目指しました」
患者は最初の処方を服用後に旅行へ出かけましたが、「旅行中にいろいろ食べても不調が出ず、とても楽だった」と話したそうです。
数回の調整を経て、症状は改善し、「とても喜ばれていました」と楊医師は述べています。
日常生活で胃熱を整えるには?
軽度の胃熱であれば、日常生活の中でも調整が可能とされています。
楊医師は「最もシンプルなのは水分補給です」と話します。中医学では胃の潤い(胃陰)を補うことも大切とされ、山芋などの食材が役立つとされています。「軽い症状であれば、家庭での食事による調整も可能です」ただし、症状が強い場合は専門医の判断を仰ぐことが望ましいとされています。
食事については、消化しやすいものを中心にすることがすすめられます。「一般的に野菜は消化しやすい食材です」肉類では魚、鶏肉、豚肉が比較的消化しやすく、牛肉や羊肉、揚げ物は消化に時間がかかる傾向があります。「山楂を少量取り入れることで消化を助けることも考えられます」
サンザシと大根の煮出し飲料で消化をサポート
簡単な食事療法として、楊医師は家庭で作れる飲み物を紹介しています。「サンザシと大根を煮出した飲み物に、少量のはちみつを加える方法です」甘酸っぱさとほんのりした塩味があり、消化を助ける働きが期待されています。「うまく作れば、とても飲みやすいです」
多くの人に適しているかについては、「基本的に大きな制限は少ないと考えられます」としています。
口臭が人間関係や自信に影響していると感じたときは、生活習慣や食事の見直しから始めてみるのも一つの方法です。必要に応じて専門医に相談し、原因を丁寧に探ることが大切です。
(翻訳編集 解問)
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