長年にわたり、コレステロール検査はLDL(「悪玉」コレステロール)・HDL(「善玉」コレステロール)・中性脂肪という身近な数値に焦点を当ててきました。これらが「正常範囲」内であれば、多くの人は心臓リスクが低いと安心します。
しかし、予防心臓医学の第一人者であるセース・J・バウム医師によると、この安心感は時に誤解を招くことがあります。
英文大紀元の番組「Vital Signs」の最近の回で、バウム医師は、主に遺伝によって決まるコレステロール関連粒子「リポプロテイン(a)(Lp(a))」が、標準的な検査結果が正常に見える人でも、心臓発作・脳卒中・大動脈弁疾患のリスクを静かに高める可能性があると述べました。
「Lp(a)は、以前『運が悪かった』と片づけられていた多くの心臓病を説明します。それは運ではなく、私たちが測定していなかった生物学的な要因なのです」とバウム医師は言います。
リポプロテイン(a)とは?
リポプロテイン(a)はLDLコレステロールと構造が似ていますが、アポリポプロテイン(a)というタンパク質が加わっています。この追加成分により、この粒子は特に有害で、血管内でプラークの蓄積・炎症・異常な血栓形成を促進します。
LDLコレステロールが食事・運動・薬の影響を強く受けるのとは異なり、Lp(a)の値は主に遺伝によって決まります。一生を通じて比較的安定しており、生活習慣を変えても値はほとんど変わりません。
このため、バウム医師をはじめとする予防心臓医学の専門家は、Lp(a)を「遺伝的コレステロール」と呼ぶことがあります。遺伝性があり、通常の脂質検査では検出されにくい一方、臨床的には非常に強力なリスク因子です。
高Lp(a)はどのくらい一般的か?
高Lp(a)は珍しくありません。大規模な集団研究や専門家の見解によると、世界人口の20%以上(成人5人に1人程度)が、心血管リスクを高めるほどLp(a)値が高いと推定されています。アメリカだけでも約6,400万人の成人が該当します。
この割合は、一般診療で定期的にスクリーニングされる多くの疾患に匹敵するか、それを上回っています。しかし、ほとんどの人がLp(a)を測定したことがありません。
バウム医師は、この検査が見落とされていることが、若い年齢での心臓病発症や、健康的な生活習慣にもかかわらず心臓病になる理由を説明する一助になると言います。
「何年もコレステロールは正常だと言われてきた患者さんを診ることがあります。そして45歳で心臓発作を起こす。ようやくLp(a)を調べると、すべてが腑に落ちるのです」
正常なコレステロール値が必ずしも低リスクを意味するわけではない
バウム医師が繰り返し強調するのは、コレステロールの数値は全体的な文脈のなかで解釈すべきであり、単独で判断してはいけないということです。
Lp(a)はリスクを増幅させる因子として働きます。Lp(a)が高い状態に、他のリスク(軽度の高LDL・境界域の高血圧・インスリン抵抗性・喫煙など)が加わると、より危険な状態になります。動脈へのプラーク蓄積が加速するだけでなく、炎症が強まり、血栓もできやすくなります。LDL値が同じ2人でも、Lp(a)の値によって心血管リスクが大きく異なる可能性があります。
これにより、従来のリスク計算ツールが見落としを起こしやすい理由が説明できます。特に、若い年齢での心臓発作や脳卒中、強い心血管疾患の家族歴、生活習慣と不釣り合いな心臓病がある場合に顕著です。
バウム医師によれば、こうした状況でLp(a)を見落とすことは、予防医療における大きな盲点といえます。
ほとんどの人が受けたことのない検査——しかし受けるべき検査
Lp(a)は一生を通じてほとんど変化しないため、通常は生涯に1回の検査で十分です。この検査結果は、Lp(a)専用の治療薬が広く普及する前であっても、リスク評価や予防の方針を大きく変える可能性があります。
Lp(a)の検査結果は使用する単位によって異なりますが、多くの専門家は50mg/dL以上(検査法により約100〜125nmol/L)を臨床的に意味のある値とみなしています。
重要なのは、高Lp(a)は診断名ではないということです。心臓発作が避けられないことを意味するわけではありません。むしろ、心血管リスクの予防をより積極的・個別的に取り組むべきだというサインです。「Lp(a)は単独で作用するのではなく、他のすべてのリスクの上に積み重なります」とバウム医師は言います。
バウム医師はLp(a)を「三重の脅威」と表現します。プラーク形成を促進し、血液凝固を高め、血管の炎症を強めるからです。「炎症は明らかにプラークの進行と心臓発作に関与しています」とバウム医師は指摘し、Lp(a)がLDL単独を超えるリスクを持つ理由を説明しています。
それにもかかわらず、バウム医師は一般人口の約1%しかLp(a)検査を受けたことがないと推定しています。「ほとんどの医師が検査しない理由は、まだLp(a)を下げる承認された治療法がないからです。しかし、リスクを知らないことへの言い訳にはなりません」と彼は言います。
プラークは数十年かけて静かに蓄積します。「高コレステロールや高Lp(a)の患者の大多数は、身体診察では何も異常が見つかりません。通常、心臓発作や脳卒中が起きるまで何も現れないのです」
実践的な予防プラン
よくある誤解として、高Lp(a)があると何もできないと思い込んでしまうことがあります。バウム医師はこれを強く否定します。「遺伝子は変えられませんが、他のすべてのリスクをどれだけ積極的に管理するかは、自分次第で変えられます。」
LDLをより低い目標値に抑える
Lp(a)が高い場合、バウム医師は標準的な推奨値よりも低いLDL・apoB値を目標にすることが多いといいます。Lp(a)が高い場合、軽度の高LDLでもより有害になる可能性があるため、「境界域」の値に対しても厳しく対処する必要があります。
リスク因子を複合的に捉える
血圧・コレステロール・血糖・生活習慣を個別に考えるのではなく、これらが互いに増幅し合うとバウム医師は述べています。 Lp(a)が高い場合:
- 軽度の高血圧でもリスクが高まる
- 喫煙の危険性がさらに増す
- 睡眠不足・運動不足・代謝異常がより深刻な影響を及ぼす
こうした複合的な視点が、個々のリスク因子が軽度に見える場合でも、より早期・集中的な対処を推奨する理由を説明しています。
画像検査によるリスクの可視化
バウム医師は、冠動脈カルシウム(CAC)スコア検査の価値を強調しました。これは冠動脈(心筋に血液を供給する動脈)内の石灰化プラークを検出・測定するCT検査です。
リスクを間接的に推定する血液検査とは異なり、CAC検査は動脈硬化の直接的な証拠を画像で示します。スコアが高いほど、プラークの蓄積が多く、将来の心臓発作や脳卒中リスクが高くなります。
Lp(a)が高く、それ以外のリスクが不確かな人には、CAC検査が遺伝的リスクがすでに実際の動脈硬化に進んでいるかどうかを判断する助けになります。スコアが陽性であればプラークが形成され始めていることを示し、より早期・積極的な予防の根拠となります。スコアがゼロの場合、検査時点で検出可能な石灰化プラークがないことを示します。特に若い患者では、より個別化されたアプローチが可能になります。
CAC検査は血液検査に代わるものではありませんが、リスクが不確かな場合に判断の明確さを加え、数値だけでなく個人に合わせた予防を可能にします。
家族の健康状態をチェックしましょう
Lp(a)は遺伝するため、バウム医師は「カスケードスクリーニング(一人が高値とわかったら近親者も検査する)」を強く推奨しています。「家族のなかで最も若い人が最初に心臓発作を起こすことが多いのです」
兄弟・両親・子供を含む家族全体の検査は、早期発見と予防の向上につながります。
先進的な治療の選択肢
過去に心臓発作や脳卒中があり、Lp(a)が非常に高い患者には、専門施設でのリポプロテインアフェレーシスが選択肢になる場合があります。
リポプロテインアフェレーシスとは、動脈硬化を促進するリポプロテイン(LDLコレステロールやLp(a)など)を血液から除去する血液浄化療法です。現在、アメリカでは約50の施設で利用可能です。
「2週間に1回、こうした粒子を血液から直接除去することで、次の心臓発作や脳卒中のリスクを下げることが期待できます」
現在、いくつかのLp(a)低下薬が後期の臨床試験段階にあり、一部はLp(a)値を80〜90%低下させることが示されています。
バウム医師は数年以内にFDA(米国食品医薬品局)承認の治療法が登場すると予想していますが、最終的な価値は検査値ではなく実際の治療成績で決まると述べています。
バウム医師のトップ3の推奨
典型的な心臓病から原因不明の心臓病まで、何十年も治療してきたバウム医師は、有効な予防は恐怖からではなく、正しい知識・積極的な関与・早期の行動から始まると言います。以下の3つは、誰でも実践できる具体的なステップで、心血管リスクをより深く理解し、減らすためのものです。
1. 自分自身のために声を上げる
「心血管予防で最も重要なのは、真剣に向き合い、自分のために声を上げることです」
それは、疑問を持ち、家族歴を把握し、適切な検査を求めることから始まります。とくに、何か腑に落ちないことがあるときに。Lp(a)やapoBが高いかどうかを知ることで、通常のコレステロール検査では見逃されるリスクを明らかにできます。
2. 信頼できる医師と連携する
信頼できる医師がいても、心血管リスクについて積極的に話し合うことは大切です。バウム医師は、特に若い年齢での心臓病の家族歴や原因不明の心臓発作がある場合、Lp(a)やapoBの検査について医師に尋ねることを勧めています。
LDL値が似た患者でも、遺伝的リスク・画像検査結果・全体的な状態によって、治療の積極度が大きく異なることがあります。
3. 家族と話す
遺伝的リスクが関与する場合、1回の検査が家族全体を守るきっかけになります。Lp(a)は遺伝するため、1人に高値が見つかると、兄弟・両親・子供での早期発見と予防につながることが多いです。
Lp(a)は、生活習慣に問題がないように見える人がなぜ心臓病になるのかを説明する助けになります。一般的で遺伝性があり、標準検査では見えにくいにもかかわらず、もはや無視できないリスク因子です。
1回の血液検査で隠れたリスクを明らかにし、数十年先の予防を形作ることができます。
「測定しないものは管理できません」とバウム医師は言います。「Lp(a)は、私たちがこれまで見逃してきた最も重要なリスク因子のひとつです」
(翻訳編集 日比野真吾)
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